第10話 小さな勇者はマイペース
レオの笑顔が見られると浮かれて、迂闊なことをしでかすなんて。
自分を情けなく、感じました。
ちょっと下唇を強く噛み締めちゃったかしら……。
口の中に血の味が広がって、何とも腹立たしいこと。
その時、繋いでいたレオの手にちょっと力が込められて、少し戸惑っていたかと思うと抱き締められていました。
力加減が分からないのか、探るように優しく、やんわりと包み込むような抱き方でレオの優しさと心遣いが伝わってきます。
「リーナ。大丈夫だよ。あれが”おんせん”なんだよね?」
「あ……え、ええ」
一瞬、呆けてしまいました。
また、胸の奥の方で感じる不思議な気持ち。
鼓動が早くなっていく一方で顔の温度も急上昇した気がするわ。
あなたはそうは感じないのよね?
あ、あら? 意外……。
彼の頬が少しだけ、色付いている気がする。
気のせい?
「レオ……」
「リーナ……」
互いに感じる鼓動の音が早くなってるわ。
レオの顔が近づいてきて……。
これはもしかして、キスではなくて!?
「血が出てるよ?」
「へ?」
そうよね。
うん、分かってましたわ。
レオは純粋で無垢な子ですもの。
ただ、わたしが下唇を噛み締めたのを心配してくれただけ、以上!
「どうしたの? リーナ、落ち込んでない?」
「何でもないですわ……」
早とちりをする自分を戒めるべきですわ。
あぁ、身体が重い。
辛いですわ。
「分かった。リーナは疲れたんだね」
「え? あの?」
「おんぶでいいかな?」
「ん?」
繋いでいた手を解くとレオは腰を屈めて、背中を指しました。
それは無理ではなくて?
別れた時よりもちょっとだけ、背が伸びたみたいですけど、それでもまだ小さいのよね。
体勢的に無理があると思いますの。
「チビだから、無理だと思ってない?」
「そ、そんなこと思ってないけど?」
「怪しいなあ。今、目を逸らしたし」
変なところは鋭いんだから。
わたしが悪いのは分かってますの。
初対面の時に「ごきげんよう。小さな勇者さん」と呼び掛けてしまったんですもの。
「じゃあ、横抱きならいいよね」
「ち、ちょっとレオ君!?」
目を逸らして見ていなかったわたしは悪くないですわ。
気が付いたら、彼の腕の中に抱かれていて、慌てて彼の首に手を回しました。
危ないですわ。
意外と安定感なくて、揺れましてよ!?
でも、まさか、レオにお姫様抱っこをされるなんて、思っていなかったから、嬉しいわ♪
レオの顔がすぐ近くにあって、意識しちゃうので鼓動も激しすぎて苦しいですけど。
もう息をしているのも苦しくなるほどに胸がドキドキしているわ。
「大丈夫だって。力には自信があるから」
「そ、それは分かってるけどぉ! もうちょっとゆっくりぃ!?」
「大丈夫だよ!」
「わらしぃがぁ、らいじょうぶでにゃぁいからぁぁぁ」
レオが思い切り、駆け始めたのでちっともロマンチックなお姫様抱っこではなかったことは確かですわ。
大好きな彼の腕に抱かれて、ドキドキしていたのがいつの間にか、別のドキドキに変わりましてよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます