第7話 お約束が待つ朝

「んっ~」


 差し込む明るい光で意識が覚醒していく。

 自然の動きとともに人も動く。

 素敵ですわ~。


「んんん?」


 フニャとした感触を足に感じました。


 わたしは何て格好で寝ているのでしょう。

 自分でも愕然としましたわ。


 レオに思い切り、抱き着いているだけでなく、足を絡めていました。

 わたしはこんなに寝相が悪かったかしら?

 確かにレオは温かくて、抱き心地が良かったですけど。


 でも、足が当たっているフニャンなものは一体?

 しかも何か、熱を感じるのですけど……。

 温かいというよりは熱いですわ。


「なんですの?」


 レオはまだ寝ているようで反応がありませんから、上半身を起こして確認することにしましたの。

 百聞は一見に如かずですわ~。


「ふにゃぁあああ」

「な、なに!? どうしたの、リーナ?」

「レ、レオがかわいくない……」


 わたしの足にぴたっとついていたのはレオのレオでした。

 この表現は間違ってませんわよね?

 レオのレオですもの。


 昨日はあんなに小っちゃくて、かわいかったのに……。

 大きくなっていて、何だかグロテスクですわ。

 かわいくないですわ~!

 それがわたしの足に……足にぃ……!?


「酷いや。リーナ。そういうリーナのだって」

「わ、わたしの!? 見ましたの?」

「み、見てないよ!? 見えちゃっただけで。あっ」


 今更、気が付きましたけど、わたし……。

 何も着てませんわ。

 あぁ、意識が……。


「リーナ! 大丈夫?」


 レオの心配する声は遥か遠くに聞こえます。

 どうやら、意識が急に途絶えたようですわ~。




「うぅ~ん……」


 あまり、気持ちのいい目覚めではありません。

 意識を失っただけですものね。

 それもショックで? 怒りで?

 それとも恥ずかしさかしら?

 全部が混じっていた気がしますわ。


「レオはこういうところが本当に勇者様なのよね」


 わたしの身体は小さなベッドの真ん中に動いていますし、シーツもきれいにかかっています。

 レオは目を瞑りながら、なるべく体を見ないようにやってくれたのかしら?

 その姿を想像するだけでもかわいいわ!


 何か、大事なことを忘れている気がしますけど、気のせいよね?




 わたしが朝起きるのが遅かったから、朝食は既に用意されていました。

 このようなことではいけない気がしますの。


 お料理の一つや二つくらいはしないといけません。

 いけませんけど……お料理なんて、したことないですわ!


「このスープも美味しいわ」

「僕が作ったんだ」


 ちょっと得意気な顔がかわいいですけど、作ったのはレオなの!?

 これはまずいのではないかしら……。

 レオは旦那様になるんですもの。


 わたしがお料理を作って、「美味しいね」「あなたを思って作ったの」というのが理想ですわ!

 絵本にも書いてありましたもの。


 どうにかしないといけませんけれど、どうにかなりますわよね?

 わたし、何でも出来ますもの。

 たぶん。

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