第14話 中山 9
俺は友人に注意を促す為に電話を掛けた。
「理由をハッキリとは言えんけど、あの【ジャスティス】って店には近づくな。たぶんあの日の女はマスターの差し金と思っとけ。それから寝た女とまた会おうなんて思うなよ。連絡も取るな。お前が思ってる以上にヤバい状況だという事を認識しとけ。一応注意はしたからな。さっさと嫁さん迎えに行け。もし向こうが何か言ってきたら、考えさせてくれと言って時間を稼げ。その上で俺に連絡しろ。わかったな!」
お、おぅと自信無さげに言う友人に心もとないと思いながらも、一応言ったから後は知らんと思い、さっさと電話を切った。
一方中山は月曜日だけ集金にならずに、翌日の火曜日からはまた集金になりだした。少々安堵したものの、全然危険水域に達してる状態なので、警戒は怠らないようにしていたのだが。そんな矢先、西島さんと俺の予想通りに友人から連絡が入った。
「あの寝た女の子からしつこいくらい電話が掛かってきてるんだけど、一体何があったん?」
あーやっぱりねと思いつつも仕事終わりに時間を作って、友人と会って話する事にした。正直めんどくせぇ。会うまでに知り合いの飲み屋関係に噂話を聞いて回った。なるほどねという話がいくつか聞けたので、これはこれで収穫だったわ。そして友人に会う時間となり、待ち合わせの喫茶店で落ち合い話をする事となった。
「いったいどうなってんの?ずっと掛かってくるんやけど。」
まだこの友人は事の重大さはわかったないようだ。もっともまともに事情を話してないので、わかるはずもないのだろうけど。事ここに至っては隠す事も出来んし、一通り話をしてわかってもらうしかないんだけど。危機感煽って、話をさせんようにするのが一番かな?
「あの【ジャスティス】のマスターは少々ヤバい。いろいろヤバい事があるんだけど。まずお金。あいつは借金まみれだ。たぶん女を通じてお前から金引っ張るか保証人になってもらうか頼んでくるやろな。んであの女。おそらくだが、お前と寝た女は店にツケがあるんやろ。それを返せんから売春まがいの事を強要されてるんちゃうかな?お前と寝た後、金要求しなかったか?」
友人のあっ・・・というような顔を見た俺は、図星かよと肩を落とした。
「たぶん連絡取れたら売春だの、女房にチクるだの言って、自分の言う通りに動くコマにしたいんやろな。まぁあの店の噂はえぇ事が出てこんかった。周辺の話を聞いても、女の子をツケで身動き取れんようにして、お風呂屋さんに沈めるとか、お前と同じように女の子をくっつけて、後でいろいろ言ったりするとかな。実際あいつはヤミ金でいろいろ借りてるらしいから。そんなのに捕まったら骨までしゃぶられるぞ。」
「俺捕まるのか・・・?」
俺は大きなため息を一つして、呆れた顔をした。今後の為にも少々お灸をすえとくか・・・。
「そりゃわからん。まぁ何かあった時は事情を聞かれる事はあると思うがな。まぁ隠してマスターの言いなりになって何百万も金を引っ張られるか、警察に事情話して情状酌量を狙うかはお前が決めろ。自業自得だから、どうなっても諦めろ。事情はわかったか?だから金輪際、あいつらと付き合うなよ。ったく、お前がいらん事するから、俺の仕事が増えたやんけ。もうこれ以上は言わんから、自分でちっと考えろ。」
わかったとうな垂れてる友人には悪いが、スケベーは治らんなと捨て台詞を吐いて、俺は喫茶店を出た。その後西島さんにも連絡を入れた。
「お疲れ様です。やはり中山が動き始めました。俺の友人に接触する為、女を使ってるみたいです。無視しろとは言ってるんですけどね。後はどうなろうと知らんす。」
「お疲れさん。まぁお前としてはツラい立場だのぉ。中山がなりふり構わずやりだしたとしたら、末期だねぇ。まぁ保証会社にも入ってるし、そこまで多額でもないからいいんだけどね。嫁の実家が動いてくれりゃ、もう一回くらい整理があってもいいんだけどな。」
とりあえず中山の動向を注視していく事に決まったが、注視したとこで先手を打たれるのはわかってるからなぁ。後の先を取るようにはしてきたが、この件に関してはどうにかなるような感じがしねぇ。第三者つくか終わるかまで持ってくれればいいが。もはや願望としか言えない事しか頭に思い浮かばなかった。
その後も断続的に友人から連絡が入って来てるが、自分のやった事がいかにバカらしかったかが身に染みたのか、中山サイドとの接触を持たなかった。一方中山はというとたまに店頭へ持ってくる事があったが、なぜか友人に連絡を取りたいと俺に言ってきた。
「店長と一緒に来た友人さんなんだけど、話があってちょっと連絡取りたいのよね。」
「へぇ~。どんな話?連絡は取れるけど、なんかあったん?」
と俺はトボけてみた。中山はなんとかして連絡取りたいみたいだが、
「今連絡取れないと大変な事になりかねないから、店長の方から連絡取って一回店に出てきてくれと言ってくれないかな?それと増額してくれない?なんなら書き換えだけでもいいから。」
「へぇ~。アイツ、なんかやらかしたの?何やったん?それと増額云々は審査しないとダメだから、30分くらいしたら電話してきて。」
ちょっとイラついてる様子の中山を尻目に、俺は裏に引っ込んだ・・・。
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