第15話 中山 10

 イラついてる中山の様子を見るに、相当切羽詰まってる感じがした。その事を本店の西島さんに伝えると、




「うーん、こりゃ相当だな。一回調べ上げた方がいいかもなぁ。お前の方でも調べれるならやっといて。信用情報や問い合わせで俺も情報を集めとく。それとお前の友人には何があっても会うなって言っとけ。こんな事に巻き込まれたら、お前も目覚め悪いやろ。」




「まぁ友人は自業自得なトコもあるんで何とも思わんですけど、出来る事なら関わって欲しくないですね。とりあえず調べときます。」




 俺は電話を切って、携帯を取り出し別な人間に電話を掛けた。それから何人かに電話を掛けて、ある程度の情報を掻き集めたのである。その間に中山から電話が掛かってきたが、第三者の保証人が必要と突っぱねたのだが、




「どうしてなん?店の繁盛具合も見てるやん。絶対払っていくし迷惑も掛けんから、なんとかしてくれん?」




 なんか当たり前の事しか言ってこない中山に、俺は辟易としてしまった。金借りたら返済するのは当たり前だし、迷惑掛けんのも当たり前。まぁ金借りる時に返済は出来んし迷惑も掛けるって言うヤツはおらんわな。溜息しか出ない俺は中山に、




「審査の結果だから俺は何も言えんよ。コンピューターが出した結果だから。そういった結果が出るってのは中山さん自身が一番わかってるんやないかな?俺は審査の内容まではわからんから。」




 物も言わず電話をガチャ切りした中山に腹は立ったが、まぁ末期の人間なんてこんなもんだろと思い、気を取り直して西島さんに電話を入れた。




「お疲れ様です。中山ですが、ちょーっとマズいですね。自分が把握した限りですが、ヤミでまぁまぁ借りてます。トイチ(十日で一割の利息)からトサン(十日で三割の利息)まで様々ですが、10件程度で150万ほど。月の利息だけでも50万は必要なんじゃないすかね。それと家賃を半年分ほど滞納してます。管理会社から今月末に支払わなかったら出ていってもらうというような話になってるみたいです。今月はもう20日過ぎましたので、この月末がXデーのような気もします。」




「おう、お疲れ。こいつたぶんダメだわ。日払いだけで600万越えとるわ。俺らの目に見えんトコもあるだろうから、たぶん一日7~8万くらい払ってるんちゃうかな。お前の言うように、月末まで営業して稼ぐだけ稼いだらって事になりそうだな。これだけ借りてるのもなかなか最近では見かけんわ。さて、どうにもならんけどどうしたもんかのぉ・・・。」



 途方に暮れる2人だが、まぁ何かリアクションしてからじゃないとなかなか動きづらいのも事実。後手に回るのは仕方がない。




 俺ら2人が考えるXデーに一日、また一日と近付いていく。その間も中山は俺の友人に連絡を取ろうと、あの手この手を使ってくると連絡が入ってくる。中山の店で常連になるキッカケを作った会社の先輩とやらにも、中山から連絡があったとの報告を受けた。まさになりふり構わずってとこだね。そしてその頃になると中山は集金にならなくなってきた。こりゃそろそろかと半分諦めにも似た感情が俺の中にあった。どうしようもないけど、どうにかしたい。そんな考えを嘲笑うかのように運命の日Xデーは訪れた。




 その日は月曜日だった。翌日が月末だったのだが、その日中山は何の連絡もしてこなかった。まず集金に行っていた女の子から連絡が入った。




「中山やけど、お金置いてないで。他のトコも見てみたけど、全部入ってないね。どうする?」




「わかったー。こっちで連絡取ってみるから、トバして次に行ってー。」




 俺はすぐに中山に連絡を入れた。鳴るのだが取らない。何回か掛けているうちに話中になった。こりゃどこも入ってないから電話掛けてるんやなと思い、嫁にターゲットを切り替えた。嫁もまぁ予想通りというかなんというか、鳴れども取らぬ。話し中になり、そのうち電源が切れた。こりゃ確定だなと思い、西島さんに電話を入れた。




「おう、お疲れさん。こいつもうアカンやろ?とりあえず仕事終わってからしか動けんしな。俺も1人だしお前も1人だし。男手が会社空ける訳にもいかんからなぁ。」




「わかりました。とりま会社閉めてから店の方行ってみます。その上でちょっと時間掛かりますが、家の方に行ってみようかと思います。まぁどこも今から動くと思いますんで、だいぶ後発になりますけど。」




 とりあえず17時までは待ってみるが、待っている間にもジャンジャンと問い合わせの電話が入ってきた。どこもこれから動くという感じで話をしてきた。こんな時男手1人だともどかしい。社長呼んで行きたいとこだが、なかなかそうもいかんのである。だって社長は土日釣りに行って、よく釣れるから延長して釣りしてる。日曜日の夜にデッカイ石鯛を釣り上げた写メを送って来て、明日も釣ってくるぅという文面も添えられてた。なんてタイミング悪いねん。




 そしてその日の業務が終わったのは19時過ぎ。俺は書類を持って中山の店へ向かうのであった・・・。







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