第4話 保証会社 3

 保証会社が開店したはよかったのだが、まぁなんせ手続きがめんどい。




 あくまでウチの場合であるが、お客さんがまず来店してお金を借りに来た場合、申込用紙を書いてもらってる最中に裏で俺が審査をする。断る場合や保証人が必要な場合はそこで告知する。っとまぁ、ここまでは今までと一緒なのだが、融資する段になってからがめんどいのである。




 融資する場合、保証会社への申込用紙を書いてもらう事となる。まぁこれだけでもめんどくさいのだが、書いてもらうとそれを保証会社にFAXする。それを送り終えると保証会社から折り返しの電話がある。お客さん本人と話をして、保証会社に加入する旨の確認をする。そして承認が下りると承認番号を貰う。




 っとまぁやる事が増えるのである。まだそこからが面倒極まりないのである。そこからお客さんには保証料を払い込みに行ってもらわなければならない。貸したお金から払うってダメなのか?と思ってしまうのだが、弁護士曰く、それでもいいのだが、もし過払い請求された時、払い込んだ保証料を貸したお金から差し引く、もしくは払うとなると、利息分に充当される可能性があるとの事。あくまで保証料を払う行為をお客さんが自分でやって貰わなければならないらしい。これは出資法を越えた、俗に言うグレーゾーン金利で営んでいる業者に当てはまる。出資法内でやってる業者には適用されない。




 もっともお金が無い人間がお金を借りに来るのであって、払い込む保証料を持ってない人間の方が圧倒的に多かった。手持ちのあるお客さんはいいのだが、持ってないお客さんには俺が個人的に貸すという形を取った。お客さんに1~数万円を貸し、それを振り込みに行ってもらう。もっともそのまま逃げる可能性もあるのだが、これから借りる金額の事を考えたら、逃げて寸借詐欺で捕まる方を選ぶやつはおらんだろう。




 振り込みが終わると振り込んだ明細を見て、融資を実行する。が、ここでも数枚の保証会社関連や個人情報保護の書類を書いてもらわなければならない。そしてウチの書類。ここからはいつもの作業だ。そしてお金を渡すと、その中から俺に返してもらう。もちろん俺が個人的に貸したお金は、当たり前だが無利子である。




 ここまでが一連の流れである。お客さんはこれからお金を借りてバラ色の人生(?)が待ってるのだからいいのだが、こちらの手間としては倍に増えた感じである。まぁ最悪取りっぱぐれのないようにするには、手間暇を惜しんでる場合ではない。




 それから二ヶ月ほどはその作業に従事した。全てのお客さんを保証会社に放り込まなければならないのである。しかもウチだけでも300人からの顧客がいるので、その作業たるや、まさに戦争である。お客さんが来店してくれたらその場で話をして、書き換えや増額などをして手続きを済ました。




 問題は集金のお客さんである。集金のお客さんだけでも50人を越える。そのお客さん1人1人に連絡を取り、説明をしなければならないのである。そして渋ってる客には、増額などをエサにして誘い出すのである。しかし中には、




「今は仕事が忙しい。」




「今は必要ないから、もうちょっと頑張ってみる。」




 などという客もいる。そういった客にはさすがにこちらも強引にするわけにもいかず、ただひたすら機会を待つのである。が、それもまたトラブルの原因にもなったりする。




 増額をチラつかせて来てもらおうとこちらは思っていたのだが、そこで客側が断ったりした場合、前述したように待つしかない。しかしその機会が訪れた時に客側は、増額する気満々で来るのである。こちらとしてはその時限りと思っていても、客側はそうは考えない。以前の約束が継続中と勝手に解釈する。もちろんこちらが声を掛けた時は、




「今はキャンペーン中なんで、増額のご相談も乗れると思いますよ。でも枠には限りがあるので、先々ではどうなるかわかりません。」




 と断りは入れている。まぁ特に枠などは無いのだが、こちらが先々で断りやすいようにもしてるのである。が、客側はそうは考えない。人間とはまぁなんと都合の良い解釈をしてしまう生き物なのだろうと若干呆れてしまう。自分に都合のいい事しか記憶に残してないからなぁ。




 全員を保証会社に加入させる為、俺と西島さんは怒涛の日々を送っていた。終日書き換え増額と、片っ端から片付けては行ってたのだが、それでも来店してくれない客には家まで押しかけていって借りて貰った。とにかく全員を新しい契約にし直さなければならなかったのである。特に危険な客に対しては、手取り無しでもやらなければならなかったのである。


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