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体が触れて、離れて。
不可抗力に託けた幼く意地汚い僕に余裕なんてあるわけなくて。
「それでね、このライブの時のこの人が凄く良くて!!」
映画が始まるまでの時間、彼女は嬉しそうに話していた。聞いていた。だけど飲み込めはしない。
映画は大学生の出会いから別れまで、それは華やかに寂しいものだった。
映画が終わって感想を言い合う、よくある流れ。彼女は少し自分とは違っていたけど、僕は彼女に合わせて話す。
いつもと同じように
ペンキを借りて塗り替えて
帰りは行きとは違う駅から帰ることにした。空は大きな埃に包まれているようで、残酷で、綺麗だった。
「これアルバムに似てる」
彼女の好きなバンドは華奢で、どこか儚い。彼女そのものと言っていいほどに似合っていた。歩いて駅に行き、電車を待った。
山々に囲まれた平地では珍しい、大粒の雪。
「電車きたよ、いこっか」
伝えて先に乗っていく。華奢な彼女の額縁にさえ思えた。
厚化粧 宮本希 @ibb415
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