0524 謎の水晶玉
その水晶玉はそのままフワリと浮かぶと、今度は俺たちを攻撃し始めた。
バリバリと広範囲上位雷撃を放って、俺たちに電撃を浴びせる!
「うおっ!」
「きゃあ!」
「なんと!」
しかし俺たちは全員が対魔法防御をしているので、上位電撃魔法でもそれほど効果はない。
その水晶玉は上位電撃があまり効果がないと見て取ると、今度は何やら別の大きな呪文を唱え始めたようだ。
「まずい!もっと大きな呪文が来るぞ!」
「ええ!皆さん、下がってください!」
俺とエレノアがそう言いながら魔法防御幕を張って、全員がその内側に避難するが、もっとも前面に押し出ていた男爵仮面がわずかに遅れる。
そこへ水晶玉からの電撃が来る!
バリバリバリ!
「男爵仮面っ!」
逃げ遅れた男爵仮面を激しい電撃が襲う!
いくら帯電装備をしていても、これほどの電撃を食らったら命に関わる!
しかし、そこへ間髪の差で飛び込んだ者がいる!
ジャスティスだった!
「ジャスティス!」
自分の主人を守るために身を挺したジャスティスだったが、さしもの強化ミスリルで作られたレベル200もの体も圧倒的な電撃呪文の前では抵抗仕切れなかった!
しばしの間、電撃に耐えたジャスティスだったが、ついに爆散する!
「ジャスティースッ!」
呪文の影響が終わると、すかさず男爵仮面が水晶玉に攻撃を加える。
「おのれっ!いざ参る!」
男爵仮面がそう叫ぶと、男爵仮面が両拳につけたナックルダスターが光る!
怒りをこめた男爵仮面が水晶玉を殴りつけると、水晶玉は壁に突き飛ばされるが、さすがにまだ健在のようだ。
しかしさすがにあれだけの大呪文を放っただけあって、即座に次の攻撃には移れないようだ。
そこへ俺がシャルルとアンジュに向かって叫ぶ!
「みんな下がって!シャルル!アンジュ!いくぞ!」
「わかった!」
「はい!」
俺の意図を察したシャルルとアンジュがすかさずに魔法攻撃を加える。
「「「
俺とシャルル、アンジュの三重攻撃は謎の水晶玉ジャベックに当たると、さしもの高レベルジャベックもついに破壊される。
勢いあまった青い火球はそのまま部屋の壁に激突し、壁を焦がし溶岩と化す!
謎の水晶玉は倒したものの、このままではこちらまで溶岩で溶けてしまう!
しかしエレノアが落ち着いて溶岩へ向かって呪文を放つ。
「クヴァル・グランダ・グラツィーオ!」
エレノアの氷結呪文により、溶岩は凍結されてそこで冷えて固まる。
「ふ~助かったよ、エレノア」
「いいえ、御主人様たちこそお疲れ様でした」
「うむ、さすがは賢者級3人の火炎呪文ニャ」
バロンの言葉にシャルルも不思議そうに話す。
「しかし・・・今のは何だったんだろうか?」
「魔王が作ったジャベックだったのでしょうか?」
ユーリウスさんの言葉に俺が答える。
「いえ、ドロズニンのレベルは371でした。
それに対して今の水晶型ジャベックはレベル380を超えていました。
自分よりレベルの高いジャベックを作るのは不可能なはずです」
エレノアも俺の言葉にうなずいて答える。
「ええ、それに何よりもあのジャベックはドロズニンを攻撃しました。
自分が作ったジャベックが製作者を攻撃するとは考えられません」
「一体どういう事なのでしょうか?」
そのアンジュの疑問に俺が答える。
「一番可能性が高いのは魔王ドロズニンは黒幕ではなく、こいつの上に命令をしていた誰かがいたという事だろう。
そしてそいつはドロズニンよりもレベルが上なのは確実という事だ」
「ではシモン氏やナスカ氏を殺害したのも、その黒幕なのでしょうか?」
そのアンジュの疑問に今度は男爵仮面が答える。
「いや、少なくともナスカを殺害したのはドロズニンのはずだ。
何よりも私はあのナスカを殺した奴の笑い声をはっきりと覚えている。
あの笑い声は確かに魔王ドロズニンの物だった。
それは間違いない」
「つまり僕や男爵仮面は一応仇は取った・・・という事かな?」
そのシャルルの疑問にエレノアが答える。
「そうですね。
犠牲はありましたが・・・」
そう言ってエレノアは男爵仮面を無言で見る。
「うむ、ジャスティスには無念であったが、いた仕方がない・・・
私もナスカの仇を取ると決めて旅に出た時から、自分の命も含めて何らかの犠牲は覚悟していた。
少なくともナスカの仇は取ったのだ。
それでよしとしよう」
「うむ、しかし魔王が誰かの指示で動いていた可能性は高いニャ。
以前にもまして今後も警戒が必要ニャ」
「そうだな・・・」
バロンの言葉に男爵仮面がそう言ってうなずくと、一同もうなずく。
そこでシャルルが自分のそばにいたシモンさんに話しかける。
「シャッテン、一応、これで片はついた。
元に戻っていいよ」
「かしこまりました。シャルル様」
そう言ってシモンさんだった人物が金髪から黒髪の人物へと変化する。
そしていつものようにフードを被って顔を隠す。
「いや、シャッテン、もう君も顔を隠す必要は無い。
これからは堂々と顔を見せて生活をしてくれ。
君も今まで御苦労様」
「かしこまりました、シャルル様の御役に立てたのであれば光栄です」
そう、実はデニケンやシブレルたちがシモンさんだと思い込んでいた人物はシャルルの創ったアイザックのシャッテンだった。
シャルルはデニケン攻略において自分の父親が鍵になるのではないかと考えて、エレノアやバッカンさんに言って自分の父親であるシモンさんにそっくりなアイザックを製作したのだった。
だから誰かシモン氏を知っている人物に見られた場合の事を考えて、フードを被せて隠密状態にさせていたのだった。
そしてこちらの思惑通りにデニケンとシブレルは動揺し、シャッテンの事をシモンさんが生きていたと勘違いしボロを出した。
しかし魔王ドロズニンはその事に騙されず、シャッテンの事を「人形」と言っていた。
自分が確実にシモンさんを殺して確認をしたとも言っていたので、シモンさんを殺害したのは魔王ドロズニンに間違いは無いだろう。
つまりシャルルと男爵仮面は変則的ではあるが、父と親友の仇は取ったのだ。
今日は本当に目まぐるしい一日だった。
理事会でシャルルの親の仇だと思っていたデニケンを突然目の前で殺され、その後で黒幕だと思っていた魔王まで謎の水晶玉に殺されてしまったのだ。
一応一連の話のけりはついたものの、納得はいかない結果となった。
しかしいつまでもここで考えてもいられない。
俺は全員を促した。
「これ以上はここにいても仕方が無い。
まずはノーザンシティへ戻って理事会へ報告しましょう」
俺の言葉にユーリウスさんとエレノアもうなずく。
「そうですね。
私もノーベル理事長に事の顛末をお話しませんと・・・」
「ええ、そうしましょう」
俺たち一行はドロズニンの部下たちがいた部屋へ戻ると、その部屋を念のために捜索して、そこにある資料などを調べるために全て持ち帰る事にした。
そして屋敷の入り口で待っていたシルビア、エトワールさん、ポリーナに一応魔王を倒した経過を話すと、その異常な状況に3人も驚いた。
そして捕縛した3人のドロズニンの部下をそのままノーザンシティへ連行すると、話を聞く事とした。
但し、イズールの町の人にある程度の状況を話す必要があるので、
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