<幕間劇 Ⅱ>
魔王ドロズニンは焦っていた。
自分の隠していた本拠地であるイズールまで、あろう事かその町の町長ではなく、魔王としての自分を捜索した連中がやって来たからだった。
(なぜだ!なぜあいつらはここがわかったのだ?)
確かに以前、数年前にその事を嗅ぎつけた者たちはいたが、その連中はドロズニン自らが全て始末をしていた。
デニケンは自分の正体とこの場所を知っているが、それを漏らすようなミスはしないだろうし、万一そんな時の場合のために、監視をつけているのだ。
しかし自分の隠し部屋へ到着し、屋敷の各所へ仕掛けてあった各種監視ジャベックやそのタロスから情報を得て、その監視役が裏切った事を知ったドロズニンは激怒した。
(シブレルの馬鹿者め!)
しかしある程度状況がわかって、ドロズニンは安心した。
そう、奴らをこの部屋までこさせれば良いのだ。
この部屋には様々な仕掛けがあり、高性能な戦闘ジャベックもある。
奴らをここまでおびき寄せれば一網打尽だ。
確かに今回進入して来た連中の中にはノーザンシティのユーリウスをや正義の使者として名高い男爵仮面などがいるようだ。
しかし自分やこの部屋に待機している高レベル戦闘ジャベック数体にはとても敵うまい!
そもそもここまで来るまでに様々な防衛設備がある。
奴らがここまで来れたら大した物だ!
そう考えたドロズニンはほくそ笑んで侵入者たちを待つことにした。
だがその間にも自分の監視ジャベックや様々な罠、そして防衛ジャベックは次々に潰され、相手は信じがたいほどの勢いで迫ってくる。
その侵入者たちの判断力、慎重さ、行動力にドロズニンは驚いていた。
(ぬう・・ここまでとは・・少々こいつらを甘く見すぎたか?
この連中を撃退したら、もっと防衛施設を強化しなければ・・・)
そう自分の玉座で考えていると、突然その横の台の上にある水晶玉が光り始める。
それを見たドロズニンは驚いた!
「なっ!馬鹿な!なぜ今・・・!」
驚くドロズニンを無視して、その光る水晶玉からおごそかな男の声が聞こえてくる。
「どうしたのかね?ドロズニン君?」
その水晶玉の呼びかけにドロズニンは驚いて答える。
「総裁閣下!」
しかし驚き焦るドロズニンに対して、水晶玉からは落ち着いた声が聞こえる。
「ずいぶんと混乱しているようだが?」
「いえ、そのような事は・・・」
「そうか?自分の秘密の根拠地の中まで敵に進入されたというのに、中々余裕ではないか?
それは頼もしいな」
「なっ!」
驚くドロズニンを無視し、その声は淡々と話を続ける。
「私が知らないとでも思ったのかね?
ドロズニン君?
私が君の事で知らない事など何もないのだよ?」
その言葉に冷や汗をかいたドロズニンだったが、何とか表情はいつものように装って見せて、勤めて冷静を装って答える。
「いえ、進入されたとはいえ、まだ奴らは私の事や、ここの事を何も知っている訳ではございません!
速やかに返り討ちにするだけの事です!
さすれば我々の「大計画」はいささかの遅延もなく遂行される事でしょう!」
「うむ、それは安心した。
是非そうしてくれたまえ。
君には期待しているのだからな。
そのために君をその地区の魔王としたのだからな」
「はっ!お任せください」
魔王ドロズニンがそう言うと、相手からの通信は切れ、光り輝いていた水晶玉は再び元に戻った。
(まずい・・・総裁にこの事が漏れていたとは・・・)
そう考えた魔王ドロズニンは侵入者たちを全力で排除する事に集中し始めたのだった。
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