0523 ドロズニン討伐

 通路は長く続き、そこには様々な罠が仕掛けられていた。

火炎装置、凍結装置、電撃装置、毒ガス、戦闘タロスの大群、落とし穴、吊り天井などなど・・・

まさにどこかの悪の秘密基地状態だ!

しかし俺たちは用心深くタロスを先行させて、その罠をことごとく破りながら進んだ。


そしてついにそれらしい部屋へ辿り着いた!

天井も高く、広い大きな部屋だ。

そこには玉座らしき物があり、一人の老人が座っている。

その男の座っている横にある台にはバレーボールほどの大きさの水晶が置かれ、左右には屈強そうな騎士らしき者が2体ずつ計4体いる。

俺は連れてきたシブレルに問いかける。


「おい!あいつが魔王で間違いないのか?」

「ああ、そうだ」


シブレルがそう答えると、そばにいたデフォードもうなずいて答える。


「ああ、大将、あいつが魔王ドロズニンだ!間違いねぇ!」


そのデフォードの言葉に俺は一歩前に進むと、大きな声で目の前の老人に問いただす。


「お前が魔王か?」


俺の問いにその男が答える。


「その通り!わしが魔王ドロズニンだ!

よくぞ数々の罠を潜り抜けここまでこれたな?」


どうもこいつが本当に魔王のようだ。

俺はこの男と周囲の騎士を鑑定してみる。


平人 男性 122歳 レベル371


ジャベック レベル280

ジャベック レベル280

ジャベック レベル255

ジャベック レベル255


ふむ、こいつのレベルは高いし、護衛らしきジャベックも今までの奴らとは段違いのレベルだ!

確かにこいつが魔王で間違いないだろう。

俺がそう考えていると男爵仮面が進み出てドロズニンに問いかける。


「では貴様が我が友ナスカ・ゴロブを殺したのか?!」


その男爵仮面の質問に相手は声高らかに答える。


「その通りよ!奴はわしの正体に気づいたのでな!

わしをただのこの町の町長だと思っていれば良かったものを、無謀にも探りを入れに来たのでな!

それでわし自らがわざわざ出向いて殺してやったのよ!

はっはっはっは・・・!」


その笑い声を聞いて男爵仮面が両拳りょうこぶしをワナワナと震わせると、全身から声を振り絞るように叫ぶ。


「ぬう・・・忘れもせぬその笑い声!

あの時に聞いた笑い声に間違いない!

貴様が我が友を・・・!」


そしてシャルルも一歩進み出ると澄んだ声で問いただす。


「私の父シモンを殺したのもデニケンではなく、あなたなのか!」


その問いにドロズニンは大きくうなずきながら答える。


「ほう?お前はシモンの息子か?

 その通りだ!小童こわっぱ

 デニケンの奴はシモンを奴隷に落とし、その後で色々と利用しようと考えていたらしいが、あ奴もわしの正体に気づいたのでな・・・

 面倒なのでわしが始末してやったわ!」


なるほど、そういう事だったのか?

俺はデニケンがシモンさんを殺した事に違和感を抱いていた。

デニケンにはシモンさんを殺害する動機が薄かったからだ。

だが、これでわかった!

全てはこいつの仕業だったのだ!

ここでシブレルが大声で騒ぎ始める。


「ドロズニン様!シモンは生きております!

ここにこうして・・・」


しかし魔王がシャルルのそばにいるシモンさんを見て鼻先で笑う。


「この愚か者め!

シモンは間違いなくこのわしの手で始末して、わしが自ら死を確認しておるわ!

そのような人形にだまされおって!

だから重要な者を始末する時は、わし自らで確認しなければならないのだ!

ナスカ・ゴロブ然り!シモン・クロンハイムも然り!」

「え?え?

それは一体・・?」


驚くシブレルには目もくれず、ドロズニンが俺たちに笑いながら話しかける。


「しかしわしの部下の馬鹿な裏切りのせいとは言え、ここまで来れた事はほめてやろう!

さすがは伝説のゴーレム魔道士と正義の使者男爵仮面、そしてその仲間たちといった所か?

しかも中にはまだ年端もいかない者たちも混ざっているようだな?

年齢から言ってシモンの息子の知り合いといった所か?

一体どういう者を相手にするのかも知らずに、ここまで来てしまった自分の愚かさと運の無さを嘆くが良い!

そしてけなげにも父や友の仇をうちに来た事も感心したぞ?

だがお前たちがいくら束になってかかって来たとしても、わしとこのジャベックたちにかかれば一捻りよ!」


俺がさらに進み出て答える。


「さあ?それはどうかな?

お前はきっと計算違いをしているぞ?」


その俺に対して魔王は不機嫌そうに答える。


「どこの小僧か知らないが大きな口をたたくな?

 その代償を受け取るがいい!」


そう言って魔王は呪文を唱え始める!

そして自らに魔法障壁を施すと、さらに攻撃呪文を唱え始める。

魔法障壁が張れた所を見ると、どうやらバッカンさんのマギア・レジーニも、拮抗するレベルの魔王には通じないようだ!


「エレノア!出来れば奴を殺さずに捕まえたい!

何とかできるか?」

「難しいですがやってみましょう!

皆さん!出来れば私と御主人様以外はジャベックを相手にして、魔王は私と御主人様に任せてください。

そしてあのジャベックを倒したら防御に徹してください」

「心得た!」

「わかりました!」


俺とエレノアが魔王を相手にして、残りの面々は敵の戦闘ジャベックを相手にする事となった。

俺たちの会話を聞いた魔王ドロズニンは不機嫌そうに笑って答える。


「ふっ・・・わしを捕まえるだと?

わしも随分と舐められたものよの?」

「そうでもないさ!」

「食らえ!小僧!」


そう言って放ってくる魔王の火炎魔法を、俺は防御しながら剣で攻撃をする。

しかし相手もさるもの、魔法防御で俺の剣は相手には届かない。


「やるじゃないか!」

「ふ・・お前のような小僧に感心されるとはな、わしも落ちたものよのぅ・・」


そこへエレノアが飛び出す!


「では私ならどうです?」

「はっ、いくらエルフとて、わしの相手に・・なにっ!」


薄笑いを浮かべる魔王にエレノアの電撃魔法が襲い掛かる。

その電撃はバリバリバリ!と魔王に当たり、すんでの所で魔王はその電撃を魔法障壁で防御したが、その余りの威力に張り巡らせていた魔法障壁も消失する。


「これは・・・」

「あら?もう少し強めの方が良かったようですね?

 加減が難しいです」

「馬鹿な!」


驚き慌てて再度魔法防御を張る魔王に対してエレノアの第2撃が襲い掛かる!


「うぎゃ~!」


そのエレノアの攻撃は今度は魔王の魔法防御を打ち破り、その肉体に被害を与えて魔王は息も絶え絶えの状態になる。


「こんな・・・」


すかさず魔王は魔法結晶を使用すると、それはパアッと光り輝き、体力を回復したようだ。

さらにもう一度魔法防御を張り巡らす。


「全く・・・これは驚いたわい・・・

確かに油断は出来ぬようだな?

しかし同じ手が効くとは思わぬ事だ」


そうつぶやく魔王にエレノアの第3撃が加えられる。


「うぎゃ~っ!」

「ええ、私も同じ攻撃はしませんよ?

油断すると黒焦げですからね?」


どうやらエレノアは先ほどよりも攻撃の度合いを高めたようだ。


「おのれ・・!」


魔王は再び魔法結晶を使うと体力を回復した。


「魔王を舐めるな~!」


俺たちと魔王の戦いは熾烈を極めた!

男爵仮面やユーリウスさんたちは魔王直衛のジャベックたちを相手に戦い、すでに残りは1体となっていた。


何度目かの魔王の回復後、自分の護衛が残り一体しか残っていないのを見ると、さすがにドロズニンは焦っていた。


「全くわしがこれほどてこずるとはな・・・

一体お前たちは何者なのだ?

特にそこの小僧とエルフ・・・貴様らは・・・?」


ここで初めて魔王は俺たちを鑑定したようだった。


「なっ!レベル403に695だとぉ!馬鹿な!

そんな事が・・・!」


愕然とする魔王に俺はニヤリと笑って話しかける。


「ようやく気づいたのか?

俺とお前では俺の方がやや上、そしてこのエレノアはお前よりも遥かに格上って事さ!」

「馬鹿な!こんな事が・・・!」


俺たちのレベルを知った魔王が放心状態でいると、それまで玉座の横の台に置いてあった水晶玉が突然すうっと浮かび上がった!

そしてその水晶玉は光輝いたかと思うと、突然魔王ドロズニンの背中に向けて激しい電撃を放ったのだった!


バリバリバリ!


エレノアの電撃をも上回るようなそれは、ドロズニンの魔法障壁を打ち破り、魔王の背中を黒焦げにした!

ドロズニンは驚いて水晶玉の方を向くと、驚きの表情で呟く。


「そ・・んな・・・」


驚きの表情をする魔王ドロズニンに、水晶玉からもう一度電撃が繰り出される。


バリバリバリ!


もはや魔法障壁もなくなり、もろにその電撃を受けた魔王は一言も発せずに黒焦げとなり、無言のままその場に倒れる。

さらにその水晶玉はシブレルに向けてもう一度電撃を発する!


「おがっ!」


俺たちをここまで案内してきたシブレルは謎の水晶玉によりその命を終えた。


そして二人を抹殺した水晶玉はその場でわずかに光り輝きながら静かに浮いている。

それはまるでこちらの様子を伺っているようだった。


「何だ!あれは!」


今までこの水晶玉は間違いなく戦いにも加わらずに魔王の玉座の横の台に置かれていただけだった!

しかしドロズニンの護衛ジャベックたちも残り後一体と戦いも終盤になって来た今、突然この戦いに参戦したのだ!

俺はその水晶玉の鑑定をして驚いた!


ジャベック レベル380 

使用可能魔法 上位雷撃、上位火炎、上位凍結、浮遊、航空、比例魔法攻撃・・・


愕然とした俺は全員に向かって叫ぶ!


「あ、あれは単なる水晶玉じゃない!

水晶玉の形をしたジャベックだ!

しかもレベルは380の戦闘ジャベックだ!

みんな!気をつけろ!

あの水晶玉はドロズニンよりもレベルは上だ!」

「なんだって!」

「そんな!」


驚く俺たちの目の前で、ドロズニンを黒焦げにした水晶玉は不気味に宙に浮かんでいた。


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