0144 準青銅等級《セミ・ブロンズクラス》
闘技場に着くと、グレゴールさんが何やら指示を出してこちらに問いかける。
「それでは傀儡の騎士を出しますが、よろしいですかな?」
「はい、どうぞ」
グレゴールさんの問いにガルドが重々しく答える。
合図と共に傀儡の騎士が闘技場に出てきて戦闘タロスを出す。
ガルドは重々しく進み、相手の魔法を盾で受けながら、順番にタロスたちを薙ぎ払って行くと、最後にあっさりと傀儡の騎士を倒す。
まるで相手がゴブリンのように、恐ろしいほどの正攻法で相手を倒した。
これでガルドの
次はラピーダの番だ。
「では、もう一回」
合図と共に再び傀儡の騎士が闘技場に出てくる。
開始と同時にラピーダは最初の場所から一瞬いなくなったかと思うと、次の瞬間には元の位置に戻っていた。
「終わりましたね」
「うん」
「ええ」
エレノアの言葉に俺とミルキィが同意する。
次の瞬間、傀儡の騎士がバラバラに崩れ落ちたかと思うと四散する。
相手がタロスを出す間もなく、ラピーダが目にも留まらないほどの速さで敵を攻撃したのだった。
これで二人の
あまりにも早く終わったので、あっけなさ過ぎるほどだ。
二人があまりにもあっさりと傀儡の騎士を倒したので、グレゴールさんが感心する。
「ふむ、流石ですな」
「ありがとうございます」
「これでもちろん2体とも
シノブさん、もう少しやらせていただけませんか?」
「え?どういう事ですか?」
「いや、正直、私もこれほどの戦闘ジャベックを見たのは初めてですので、どれほどまでいけるか見てみたいのですよ。
仕事半分、個人的興味半分ですがね。
もちろん、これ以降の費用はこちらで持ちますので」
どうやらグレゴールさんも今のでは物足りなかったらしい。
うちのジャベックの能力をもう少し見たいようだ。
「なるほど、こちらは構いませんよ」
「ありがたい、では三級から順番にやらせていただいてよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」
「ではそちらのガルド君からどうぞ」
「はい」
ガルドは出てきたトロルを剣の一撃であっさりと倒す。
トロルほどの体力を持ち魔物を一撃とは、さすがはレベル300のジャベックだ。
「次はラピーダ君、どうぞ」
「承知」
ラピーダがミルキィのようにトロルを槍で切り刻む。
そこにはトロルの細切れが出来上がり四散する。
ラピーダの勝利だ。
「では次はマーダードールです」
二人とも出てきたマーダードールをまたもや一撃で倒す。
この辺はまだまだ楽勝だ。
「流石ですね?
次はいよいよ一級のキマイラです」
心なしかグレゴールさんも興奮してきて嬉しそうに話す。
ついに一級試験のキマイラが出てくる。
ガルドはまたもや正面から一撃で切り倒し、ラピーダはミルキィと同じように尾を切った後で、順番に3つの頭を切り落としてキマイラを倒す。
考えてみれば、まだ二人ともここまで魔物を倒すのに、魔法を一切使っていない。
二人があまりにも簡単にキマイラを倒したので、グレゴールさんが感心する。
「むう・・・流石ですな、キマイラまでを、こうもあっさりと倒すとは・・・
ではグリフォンを行ってみますか?」
「ええ、問題ないですよ」
俺は訓練の時に二人にグリフォンを倒させているので余裕だ。
グリフォンが出てくるが、やはり二人ともあっさりと倒すので、グレゴールさんは改めて感心する。
「なるほど・・・グリフォンまでをこれほどあっさりと倒すとは・・・
素晴らしいジャベックですね?」
グレゴールさんの言葉に俺とエレノアが礼を述べる。
「ありがとうございます」
「恐れ入ります」
「もう少し試してみたいのですが、残念ながらここまでですな。
何しろここには現在これ以上強い魔物はおりませんのでね。
しかし、これは組合長としても考えさせられる問題ですなぁ・・・」
「え?どういう事ですか?」
「いえ、これほど高性能なジャベックを全て「
それはそうかも知れないが、ジャベックでは高度な判断は出来ない。
上級者や中級者となれば、戦闘以外でも複雑な判断が必要だ。
それはジャベックには不可能な事だろう。
「しかし高度な判断が出来ないジャベックを上級者扱いと言うのも変だと思うのですが?」
「おっしゃる通りです。
しかしこれはいずれ何らかの解決をしたい所ですね。
何はともあれ、今日の所は私のわがままにお付き合いいただき、ありがとうございました」
「いいえ、どういたしまして」
「お礼と言っては何ですが、次回のあなた方の昇級試験は無料にさせていただきますよ」
「ありがとうございます」
別に試験代に困っている訳ではないが、無料にしてくれるのはありがたい。
俺は素直にグレゴールさんに礼を言った。
等級試験が終わって受付に戻ると、すでに二人の登録証が出来上がっていた。
試験を受ける前に「受かるに決まっているのだから先に作っておくように」と言って、グレゴールさんが指示を出しておいてくれたらしい。
テレーゼが首から下げていた物と同じ、銅板で上半分には水晶が輝いている。
そしてそのすぐ下には300という数字が表示されておる。
うん、大抵の人間はこれを見たら驚くだろうな。
下半分はガルドは緑の線で、ラピーダは黄色い線だ。
どっちでも良かったのだが、何となくガルドは戦魔士で、ラピーダは魔戦士にしてみたのだ。
その下の数字は当然二人とも0だ。
これからこの数字がいくつまで行くのか、ちょっと楽しみだ。
俺が登録証を受け取って、ガルドとラピーダの首にかけてやる。
俺より背の高い二人はかがんで俺から登録証を首へと受け取る。
「うん、二人とも中々似合っていて格好いいぞ!」
「ありがとうございます」
「感謝いたします」
二人とも見た目が屈強な戦士なので、登録証がよく似合う。
うん、やはりこの方が見栄えが良くて格好いいな!
登録して良かった!
グレイモンには良い事を教わった。
今度あったら忘れずに礼を言っておこう。
俺の気分は良くなり、グレゴールさんが悩む課題を残しながらも、ガルドとラピーダの
ただ俺は、自分やグレイモンの他にこういった人たちがいるか気になったので、ロッテさんに聞いてみた。
「ジャベックを登録している人って、他にいますか?」
「ええ、数は少ないですが、何人かはいらっしゃいますよ。
確か先ほども見かけましたよ。
いつも通りならおそらくプロフェッショナルにいるはずです。
女性型ジャベックを何体か登録している方で、サイラスさんとおっしゃる方です」
「いきなり話しかけても大丈夫でしょうか?」
「ええ、気さくな方ですから大丈夫だと思いますよ」
「そうですか?
ではちょっとその人を探して話してみる事にします」
俺は同じジャベックを登録した者として、ちょっと気になるので、その人を探してみる事にした。
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