0142 ガルドとラピーダ

 ついに完成した護衛ジャベックを前にして、エレノアが俺に説明をする。


「御主人様、例の物が完成しました」

「僕の護衛用ジャベック?」

「はい、いずれ御主人様の護衛にはアイザックを作るつもりですが、当面の護衛として考えていたジャベックです」

「じゃあ、みんなの前でお披露目をしようよ」

「はい」


こうしてついに俺の護衛用ジャベック、「ガルド」と「ラピーダ」が完成した。

家の者の前に2体のジャベックが並べられる。


「皆さん、これが今度新しく作った御主人様の護衛用ジャベックです。

こちらはガルド、そちらはラピーダです」


エレノアの説明で、二人が全員に挨拶をする。


「ガルドです」

「ラピーダです」


ガルドはいかにも屈強そうなオールバックの黒髪の男性型で、ラピーダの方は薄茶色の逆立った髪で、精悍な感じの男だ。


「ガルドは力と魔法重視、ラピーダは速さ重視です」

「なるほど」

「二人ともレベルは300で、これなら当座は御主人様の護衛として役立つでしょう」


レベル300で当座なのか?

まあ、たしかに今や俺のレベルも300に迫る勢いだから、レベル300ではついて来れなくなる日も来るかも知れないが・・・

二体のジャベックを見て、アルフレッドたちが感心する。


「中々二人とも強そうですな」

「ええ、そうですね」

「私もそう思います」

「しかしレベル300か・・・中々強そうだね?」

「ええ、現時点でなら、おそらく御主人様やミルキィよりも強いと思います」

「そうだろうねぇ」

「ええ」


改めてマジマジと二体を見た俺がつぶやく。


「でもレベル300もあれば、護衛だけじゃなくて、他にも色々と使えると思うけど?」

「ええ、もちろんです。

当座の護衛は勤めますが、予定しているアイザックが完成したら、家の警戒や玄関の見張りなど、仕事はいくらでもあります。

エルフィールほどではありませんが、一応汎用ジャベックとして作りましたから日常会話も含めて大抵の事は可能です。

エルフィール同様、おそらく一目ではジャベックとわからないでしょう」


う~む、レベル300の門番って、勿体無い気もするが・・・今後作る予定のアイザックがそれほど凄いという事か?


「まあ、まずは装備を整えて訓練に行ってみようか」

「そうですね」


ともあれ、俺たちは早速新しい二人を連れて迷宮へと行く事となった。

まずはいつものキャンベル武器屋に行く。

そこで装備を整える。

二人ともジャベックなので、当然装備の希望はない。

俺とエレノアで適当に決める。

ガルドは鋼の剣に鋼の鎧と盾という一般的な装備、ラピーダは鉄の槍と皮の鎧と額当てという速さ重視の装備だ。

それとラピーダは投擲用の投げナイフを4本装備させた。


装備が終わると、いよいよ迷宮に向かった。

5人で南西の迷宮で訓練だ。



浅い層から順番に二人の訓練をする事にした。


「ちょうど良いですから、ここでエルフィールも出して一緒に訓練をさせましょう」

「わかった、起動エルフィール」


俺は周囲に人がいない事を確認してエルフィールを起動させる。

初めてエルフィールを見たミルキィが驚く。


「これは?」

「そうか、ミルキィは見るのは初めてだったね?

これはエルフィールと言って、僕の専用護衛ジャベックだよ。

 レベル500の万能ジャベックで戦闘以外でも何でも出来るんだ」

「レベル500?

この人もジャベック・・・なのですか?」

「うん、でもこのエルフィールの存在は秘密だから他の人に言っちゃだめだよ。

知っているのはうちの人間の他は、シルビアさんとエトワールさんだけだから」

「はい、承知しました。

それにしてもとてもジャベックとは思えませんね?」


驚くミルキィにエルフィールが挨拶をする。


「エルフィールでございます。

よろしくお願いします」

「はい、ミルキィです。

よろしく」

「エルフィール。

彼女は僕の奴隷のミルキィだよ。

そしてそっちの二人は君の仲間のガルドとラピーダだ。

君たち三人の中ではエルフィールが指揮権は一番上だから三人とも覚えておいてね。

ガルドとラピーダも、僕とエレノアがいない時には、エルフィールやミルキィの命令を聞くように」


俺の言葉にエルフィールがうなずく。


「はい、かしこまりました」


ガルドとラピーダも返事をする。


「はい、我ら2名もエルフィール様とミルキィ様の命令に従います」

「いつでも御命令ください」

「うん、では全員で迷宮で訓練と行こう」

「はっ」


6人体制となった俺たちは迷宮で訓練を始める。

エルフィールには以前のように、フードを被せてそのまま迷宮で魔物を倒して訓練をする。

そしてガルドとラピーダにも、かつてのエルフィール同様、迷宮である程度の戦闘訓練を経験させて、戦闘学習をさせた。

2・3日も経つと、エレノアも満足した様子で、集中訓練は終了した。


「さし当たってはこの程度でよろしいでしょう。

エルフィールと違って、この二人は常時、出ている訳ですから、これからいくらでも鍛えられますからね」

「そうだね」

「ではエルフィールは再びしまっておきましょう」

「そうだね、そういえば、シルビアさんとエトワールさんにもこの二人を見せておこうよ」

「かしこまりました」


俺たちはエルフィールを収納すると、魔法協会に行って、シルビアさんとエトワールさんに会う。


「こんにちは!シルビアさん、エトワールさん」

「あら、シノブさん、また仲間が増えたの?」

「ずいぶんと強そうな人たちね?」

「これはエレノアが僕の護衛用に作ったジャベックで、ガルドとラピーダと言います。

今は迷宮で訓練中なので、御二人にお披露目にきたんです」

「ああ、例の護衛用に作るってエレノアさんが言っていたジャベックね?」

「ええ、そうです。

 二人ともレベルは300で、ガルドは格闘と魔法全般で、ラピーダは速さ重視のジャベックです」


その性能に二人が呆れたように話す。


「レベル300ね・・・

あの「彼女」には及ばないとはいえ、相変わらずエレノアさんの作るジャベックは凄いわね」

「まったくね。

ああ、そういえばシノブさん、ジャベックと言えば、いよいよ今度の自由日から例のお祭りが始まるのよ!」

「例のって、あのエトワールさんが出るゴーレム大会ですか?」

「ええ、そうよ。

 私も選手として出場するから応援に来てね?」

「はい、もちろんです」

「それにしてもエレノアさんやシノブさんも参加すれば良いのに?

 エレノアさんなんか、参加すればどの部門でも入賞は間違いないし、優勝だって狙えると思うわ」

「いや、僕は初めての事なので、見る方に専念させてもらいますよ」

「私も遠慮して、大会を拝見させていただきます」

「そう?残念ね。

もっとも二人が出たら私の優勝はおろか、準優勝まで危なくなるから、確かに今回は遠慮してもらって正解かもね」


そのエトワールさんの言葉にシルビアさんもうなずいて答える。


「まあ、確かにあなたの参加する芸術部門はともかく、戦闘部門にこの二人が参加したら、問答無用で、優勝、準優勝になりそうね」

「そうなんですか?」

「ええ、二人の戦闘タロスは見た事がないけれど、こんなジャベックや、あの娘を作れるエレノアさんなら、戦闘タロスも相当強いだろうし、その弟子のシノブさんのタロスもかなり強いのは想像がつくわ」

「そうね」


そうなのか?

しかしエレノアが戦闘部門で優勝確実なのはわかる。

何と言っても国一つを一人で守った事があるほどの実績を持っているのだ。

だが、自分のタロスをエレノアのタロス以外と比較した事がない俺には今一つピンと来ない。

それ以外で戦った事があるのは、グレイモンのタロスだけだ。

もっとも考えてみればグレイモンは正規の魔道士なのだ。

それに圧勝したからには確かに俺のタロスはそこそこ強いのだろう。

今回の大会はともかく、次回は出てみるのも面白いかもしれない。

俺は二人へのお披露目が終わると、家に帰る前にふと思いついて組合へと向う事にした。

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