0111 ミルキィの装備
屋敷に戻ると、まずはアルフレッドとキンバリーにミルキィの紹介をする。
「それじゃ改めて紹介だ。
二人とも、彼女は新しく僕の奴隷になったミルキィだよ。
ミルキィ、彼は家令のアルフレッド、彼女は家政婦長のキンバリーだよ」
「獣人で狼族のミルキィと申します。
年齢は17です。
よろしくお願いいたします」
「よろしく、ミルキィ」
「よろしくね、ミルキィ」
二人も快く、ミルキィを迎える。
ミルキィもやさしそうな二人を見て一安心したようだ。
そんなミルキィに俺が話しかける。
「そしてエレノアは奴隷だけど、秘書監と言って、僕の教育係と護衛を兼ねている。
発令権もこの家で一番上だよ」
「改めてよろしくね。ミルキィ」
「はい、よろしくお願いします」
「そしてここにいるのが猫妖精で、ケット・シーのペロン。
うちの食客なんだ」
「よろしくですニャ」
「はい、よろしくお願いします」
全員の紹介と挨拶が終わると、再び俺が説明をする。
「ミルキィにはエレノアと同じで、基本的には僕の身の回りの世話と、迷宮での仲間をしてもらう。
時間がある時はキンバリーの手伝いもしてもらおう。
それでいいね?」
「はい、お任せください」
「では、まずこの家の構造を覚えてもらおうか」
「はい」
俺はエレノアと一緒に、ミルキィを家の中を一通り案内する。
まずは食堂や厨房を見せて、俺の部屋や、風呂やトイレの説明をする。
そして誰かが泊まりに来た際の、普通の客室も見せる。
ミルキィは、やはり他の家にはない、様々な仕組みに色々と驚いたようだ。
そして最後に一つの部屋に案内する。
俺の部屋の向かいの部屋だ。
「そして、ここがミルキィの部屋だよ」
「はい、わかりました」
そう言って俺が部屋の中を開けて説明をする。
12畳ほどの広さの部屋で、ベッドやテーブル、椅子などの家具は一通り揃っている。
もちろん、トイレと風呂も付いている。
「まあ、大体家具は揃っているけど、何か欲しい物があれば言ってね?」
「あの・・・ここは先ほど説明していただいた客室と、同じに見えるのですが?」
「ん?元は客室として使っていたみたいだからね。
今でも使おうと思えば、客室にも使えるし」
「ここで一時的に過ごして、後日どこかの奴隷部屋へ行くのですか?」
「え?いや、ここはずっとミルキィの部屋だよ?」
「そんな!ここは先ほど拝見した客室と、さほど変わりはないように見えますが、そのような部屋を奴隷の私の部屋に?」
そりゃまあ、この部屋も客室みたいな物だしね?
そんなに変わりはないだろう。
しかし、それで別に問題はないはずだが?
「ああ、確かに客室と似ているけど、別に問題はないだろう?」
「問題だなんて!
それで、その・・・私はここでお客様をお待ちすればよろしいのでしょうか?」
「え?お客様って?」
俺はミルキィが言っている意味がわからず聞いてみた。
「こちらの部屋で、お客様のお相手をすればよろしいのではないのですか?
その・・・夜の・・・」
どうやらミルキィは、ここで娼婦として働かせられると勘違いしたようだ。
俺は慌ててそれを否定する。
「え?違う!違う!
ここはミルキィだけの部屋だよ!
お客なんて来ないよ?」
「え?ではここは娼婦部屋ではないのですか?」
驚いて質問するミルキィにエレノアがやさしく説明する。
「ミルキィ、ここはあなた個人の部屋で、この部屋はあなたの好きにして良いのですよ。
お相手しなければならないお客など、ここには来ません。
あなたがお相手するのは、時たまあなたに抱きついて甘えに来る御主人様くらいです」
あ、やっぱりそれは確定なんですか?エレノア先生?
いや、確かに否定は出来ないんですが、まだ何も知らないこの娘にいきなりそこまで言ってもよろしいもんなのでしょうか?
しかしミルキィはその事は気にならないようだ。
むしろ別の事が気になるらしい。
「そうなのですか?
しかし奴隷にこんな部屋を与えるなんて有り得ませんが・・・」
「御主人様は色々と普通の人とは違うのです。
奴隷の扱いもその一つです。
それも段々なれてきますから。
ただ、それに甘えて奴隷の領分を忘れた行動をする事だけはしないようにしていただければ十分です。
よろしいですね?」
「はい、わかりました」
ある程度ミルキィが納得した所で俺が提案する。
「うん、そういう訳だから、この部屋はミルキィが好きに使って良いからね」
「はい、ありがとうございます」
「では、まずは装備品でも買いに行くか?」
俺の意見にエレノアも賛成する。
「そうですね」
しかしミルキィは戸惑い気味だ。
「え?よろしいのですか?」
「ああ、ミルキィにはこれから迷宮でも活躍してもらわないとならないからね。
素手で戦えない事もないだろうけど、やっぱり武器があった方が楽だろう?」
「それはそうですが・・・」
将来はともかく、現時点でのこの家の稼ぎは主に迷宮探索での稼ぎだ。
エレノアの購入時に財産の半分使ってしまい、この屋敷の改装にもかなりの金額がかかったとはいえ、神様からもらった財産は、まだかなり残っている。
それで当分、財政的に困る事はないだろうが、稼いでおくには越したことはない。
何しろこの世界に来て、まだ半年も経たないのに、早くも俺は億単位で財産を使ってしまったのだ。
もちろんそれを無駄遣いとは思ってはいないが、これからも何があるかはわからない。
そのためにも新戦力で迷宮を探索して稼ぐのは必要だ。
それに俺自体のレベルも、もっと上げておきたい。
今でも一般的に言えば十分なレベルだが、エレノアに比べればまだまだ。
何かがあった時に、どんな事でも対応できるように、後悔しないためにも、レベルは可能な限り上げておきたい。
俺たちは街に出て武器屋に到着する。
ここは「キャンベル武器店」と言って、名前は武器屋だが、防具や他の物も多少は売っている、かなり大きな総合的な武器防具屋だ。
ロナバールは大きな迷宮が2つもあるから、迷宮探索者が多い街なので、武器防具屋もたくさんある。
俺はエレノアとあちこちを見て回った結果、少なくとも初心者が装備を整えるなら、ここが良いと、かねてから思っていた。
ここは初級から中級までの物を幅広く扱っていて、値段も良心的で、主人の愛想も良い。
俺はミルキィに聞いてみた。
「ミルキィはどういう装備が良いかな?」
「すみません、正直、よくわかりません」
「魔物とは戦っていた事があるみたいだったけど、何を武器に戦っていたのかな?」
「大抵は素手か、木の枝というか・・・棒ですね」
「木の枝?」
いわゆるひのきの棒や木刀、いや木剣のような物だろうか?
ちょうど武器屋に木剣がおいてあったので、俺はそれを持って聞いてみる。
「こんな感じかな?」
「いえ、そんな加工された物ではなく、本当に木の枝です。
小枝を取り払い、せいぜい木の皮をむいた程度の物です」
「え?そうなの?それじゃ相手が強いと辛くない?」
「場合によっては、木の棒を氷剣にして戦います」
「氷剣?」
俺の疑問にエレノアが答える。
「確か白狼族は凍結系魔法を使える者が多く、木の棒に氷をまとわりつかせて剣として使うと聞いた事があります」
「はい、そうです。
私達は木の棒に雪や水を凍らせた物をつけて戦います。
場合によっては、相手を凍結させたりもします。
私はまだ使えませんが、大人たちが使ったり、それを借りたりして魔物と戦った事はあります」
「へえ」
所変われば品変わるというが、氷の剣とは初めて聞いた。
しかし、それなら普通に剣と盾でよいのではないだろうか?
「では、最初は普通に鋼の剣と鉄の盾で戦ってみるかい?」
「はい、よくわかりませんので、そうさせていただきます」
「鎧はどうする?」
「正直鎧は動きにくいので、もっとも軽く、動きやすい物がよいです」
「そうなると・・・とりあえずは皮の鎧と皮の帽子かな?」
「はい、それで結構です」
こうしてミルキィの初期装備が決まった。
明日からはいよいよ迷宮で訓練してみるか?
期待の新人、ミルキィ嬢の活躍に、乞うご期待!だ。
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