0110 白狼族の少女ミルキィ

 アルヌさんを呼び、再び奴隷部屋へ一緒に行って、もう一度ミルキィを見た後で、その旨を伝える。

俺たちがミルキィを買うと聞くと、アルヌさんも大喜びだ。


「さようでございますか?

ありがとうございます。

ミルキィ、お前は運が良いぞ!

おそらくこの方以上に、主人としてお前にふさわしい方はおらぬ。

よくよくお仕えなさい」

「はい、お買い上げ、ありがとうございます」


こうして狼少女ミルキィは俺の奴隷となった。

契約部屋へ行って、書類を作り、契約が終わると、俺は改めて挨拶をする。


「では僕が今日から君の主人になるシノブ・ホウジョウだ」

「よ、よろしくお願いします」

「ああ、こちらこそ、よろしくね」

「はい」


うん、いい笑顔だ。

俺がミルキィの笑顔に癒されていると、俺の胸のポケットからヒョコっと顔を出したハムハムが、突然俺の肩まで駆け上ると、そこからピョン!とミルキィに飛び移る。


「あっ!」

「え?」


初めてハムハムを見るミルキィが軽く驚く。

ハムハムはミルキィの肩で、ふんふんと匂いを嗅ぐような仕草をしている。


「何してるんだ!ハムハム!」

「ウキュ」


俺の言葉を無視して、ハムハムはミルキィの首周りをスルスルッと1周すると、ミルキィの大きな胸の谷間にズボッ!と身を沈める。


「あっ、あっ、ああっ・・・」


主人である俺のポケットから飛び出したハムハムに対して、どうすれば良いのか分からずに、ミルキィが悩ましく悶える。

ハムハムはミルキィの胸の谷間と服の間で、何やらもぞもぞと動いている。


「あっ!コラ!ハムハム!」


ぬぬぬ・・・こやつ、御主人様の俺ですら、まだしてもいない羨ましい事を・・・

俺が叫ぶと、ハムハムが潜り込んだ大きな胸の谷間と服の間から、何かボクに用?といった感じで、ピョコッと顔を出す。


「ウキュ?」

「あ、あの、これは・・・?」


自分の胸の谷間で寛いでいるハムハムにどう反応すれば良いかわからずに、ミルキィが俺に問いかける。


「ああ、すまない、それは僕の作ったジャベックでハムハムと言うんだ。

ハムハム!戻って来い!」


俺の命令にハムハムは首を横に振って、イヤイヤをする。

ぬぬぬ・・・確かに小動物らしくランダムで命令を無視するような設定にはしておいたが、ここでそれをするか?

こやつ、どうしてくれよう?と俺が考え込むと、ミルキィの谷間を堪能して満足したのか、ハムハムが、ようやくそこから出てくると、俺の元に戻ってくる。


「元に戻っていなさい。ハムハム!」

「うきゅ!」


今度は言う事を聞いて、ポケットにもぐりこむ。


「驚かせてすまなかったね」

「いえ、大丈夫です」


少々驚いた様子だったが、ミルキィも平静に戻った様子だ。

その様子を見てエレノアが声をかける。


「では、一応私が奴隷頭という事でよろしいでしょうか?」

「奴隷頭?」


俺が初めて聞くその言葉を、エレノアが説明をする。


「はい、奴隷が複数いる場合に、教育をしたり、統率を執る役目の者が必要になります。

主人が兼任したり、執事や家人の誰かがなる場合もありますが、大抵の場合は、奴隷知識がある者か、先にいた奴隷がなる事が多いですね」


まあ、エレノアは最初の奴隷だし、今では俺の感覚も飲み込んでくれているから確かにその役割は当然だろう。

それになんと言ってもレベル685だしな。

任せても何も問題はない。

むしろよろしくお願いしますと頼みたいくらいだ。


「うん、じゃあ、それはエレノアに任せた」

「ではミルキィ、私が一番奴隷で、奴隷頭のエレノアです。

これからよろしくお願いしますね」

「一番奴隷・・・やはり奴隷だったのですか?」

「ん?何の事だい?」


意外そうに質問する俺に、ミルキィが答える。


「いえ、正直、最初に見た時に、非常に気品のあるお方で、御二人はとても仲睦まじいようにお見受けしました。

どう見ても、主人と奴隷の関係には見えないので、御主人様の奥様かと思ったのですが、首には奴隷の首輪をしていたものですから・・・」

「なるほど」


そりゃ納得だ。

普通これだけ美人で気品があれば、奴隷とは思わないよな。

中々このミルキィは見る目もあるようだ。

それに俺とエレノアはそんなに仲良さそうに見えるのか?

夫婦に見えるほどに?

へへへ・・・・何かそれも気分が良いな・・・

しかし、一応誤解は解いておかないとな。

エレノアの事はどう説明しよう?

俺がどうエレノアの説明をしようかと考えていると、ミルキィがおずおずと質問をしてくる。


「・・・あの、不躾ですが、一つ伺っても、よろしいでしょうか?」

「なんだい?」

「御主人様は、どちらかの御家門の方なのでしょうか?

決して外には漏らさず、必ず内密にいたしますので、どうか教えてください。

さもないと失礼をしてしまいそうなので」


御家門って・・・この場合、どこかのお偉いさんとか、貴族の子供って意味だよな?・・・なぜ、そうなる?

そう思って俺は思わず聞き返した。


「え?御家門?なんで?」

「はい、人品卑しからぬ風体なのに、まるで身分を隠すかのように、わざと服装を落としているような、その出で立ち。

私のような奴隷を買うのであれば、お金に困っているとも思えないのに、そのような格好をしているのは、何か理由があっての事だと存じます。

そして美しく気品があり、教養あるエルフの教育係らしい奴隷・・・

どちらかの御家門の方が、御身分を隠しての修行の旅か何かの途中ではないのかと・・・」


そのミルキィの説明に、俺とエレノアは思わず顔を見合わせると、次の瞬間、御互いに噴出した。

微笑みながらエレノアが説明をする。


「大丈夫、そんな心配は不要ですよ。ミルキィ」

「あはは・・・そうだよ、そんな事ないよ。

僕はその辺にいる普通の少年だよ。

ただちょっと理由があって、お金は少々普通の人より余計に持っているけどね」

「そう・・・なのですか?」


俺の説明にもミルキィは疑い気味だ。


「でも、このエレノアが気品と教養あるエルフって言うのは当たっているよ。

何しろ家事全般から魔法でも、各国の事情でも、政治の事でも何でも知っているし、できるんだ。

それこそ出来ない事は無いくらいなんだ。

詳しい事情はまだ話せないけど、君が想像した以上の凄い人物なんだよ。

彼女は僕の奴隷ではあるけども、師匠でもあり、一番の友人でもある人だよ。

そして僕がこの世界で一番尊敬している人でもあるんだ」

「もったいない御言葉です。御主人様」

「何言っているの!

もったいないのはこっちだよ。

まあ、だから君も僕の言う事なんかよりも、彼女の言う事をよく聞いてね」

「あの・・・それでよろしいのでしょうか?」


恐る恐るエレノアに質問するミルキィに、本人が答える。


「いいえ、もちろん、そんな事はありませんよ。

確かに私からも指示はさせていただきますが、御主人様の言う事はよく聞いてください」

「はい、わかりました!」

「ええ、ではよろしくお願いしますね、ミルキィ」

「はい、こちらこそお願いいたします」

「ええ、二人で御主人様を盛り立てて行きましょう」

「はい」


うん、よきかなよきかな・・・二人の仲は良好のようだ。

変に相手を意識したり、悪い小姑と嫁のような関係にはなりそうにないので、俺も一安心だ。


「ところであなたは白狼族ですね?」

「はい、おそらくそうだと思います」

「おそらく?」

「ええ、私達は単に狼族だと思っているのですが、他の種族の人たちが私達を指してそういうのは、何回か聞いた事がありますから」

「普通の狼族はあまり魔法は使いません。

あなたの一族はかなり魔法を使えるのではないですか?」

「そうですね・・・私達も氷魔法以外はほとんど使いませんが・・・それに私はまだ何も使えません」


もちろん、魔法を使えたら、もっと高い値段で売られていただろう。

才能が無いわけではないが、まだ魔法は覚えていないという事だ。


「それは徐々に覚えるから大丈夫です」

「そうなのですか?」

「はい、私と御主人様であなたに魔法を教えます」

「魔法を?私に覚えられるでしょうか?」

「大丈夫ですよ。あなたにはその才能があります」

「まあ、ではまずは家に戻ろうか?」

「はい」


こうして俺たちは新たに奴隷となった狼美少女のミルキィを連れて帰った。

うん、仲間が増えるってのはいい感じだな。

それもこんな可愛らしい美少女なら尚更だ。

エレノアは知的で優しいお姉さんって、感じだけど、ミルキィは可憐で清楚な美少女って感じだ。

これからこの獣美少女と一緒に生活するかと思うと、俺の心の中には邪な妄想が広がっちゃうよ?

えへへ・・・色々と楽しみだなあ~・・・

いかん・・・少々オヤジが入ってしまった・・・

反省。

でも、やっぱり口元が緩んじゃうのは仕方がないよね?

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