ブレスレットの力
マリは青い光線からタローを守るために、ブレスレットに触れて願った。
「トウキ、守って!」
円形のバリアが光線を遮るが、女王は構わず光線を発射し続ける。バリアを張らせ続けることで、二人の身動きを封じようとしているのだ。
タローは剣を投擲する構えに入ったが、女王は片手でメイドの一人を掴み上げると自らの盾とした。持ち上げられたメイドは、抵抗するどころか、顔色一つ変えない。全くされるがままで、自分の意思を持っていないのだ。
タローは剣を下ろして、歯を食い縛る。
それを見て女王は高笑いした。
「ホホホホホ、かわいいものよ。小事を捨てる覚悟もなく、この私を討とうとな?」
タローとマリは防戦一方。武術家たちも、まだメイドたちと戦っている。このまま時間が過ぎれば、消耗するのはタローたちの方。
何とか活路を見出そうと、タローは展望室内を見回した。
女王を生んだクダリが閉じこめられているクリスタルは、今も変わらずメイドたちに守られている。タローには峰打ちで人を気絶させるような剣の技量はないし、強引に守りを突破する力もない。
他方、逆転の手を探していたのは、マリも同じだった。このまま進展がなければ、ただ不利になっていくことは、彼女も承知している。苦境を突破するのに、タローにばかり頼ってはいられないと、彼女はブレスレットを強く握り締めた。
――そして彼女はバリアの性質を変えられないかと発想する。
「……トウキ、跳ね返して!」
彼女が願った瞬間、ブレスレットが強く輝いて、バリアがビームを反射した。
青い光線が飛び散って、メイドたちに命中する。
「何っ!?」
予想外の事態に、女王は慌ててビームの連射を止めた。
マリはタローに呼びかける。
「今だよ! タローくん!」
「わかった!」
タローも突然のことに驚いていたが、今は何も考えずに動いた。
彼はビームを受けて身動きが取れなくなったメイドたちの間を駆け抜け、クダリが閉じこめられている青いクリスタルを、神器壊しの剣で破壊する。
青いクリスタルは一突きで粉々に割れ砕け、白い砂となって周りに飛び散る。
「キッ、キサマッ、何ということを!」
動揺をあらわにする女王には目もくれず、タローは解放されたばかりで呆然と立ち尽くしているクダリの中年男性に声をかけた。
「あんた、今の状況が分かるか!?」
「えっ……?」
中年男性はうろたえ、視線を右へ左へと泳がせる。
「あんたが生み出した神器のせいで、この世界はめちゃくちゃだ!! 今すぐ『支配の女王』を止めろ!!」
「わ、私が……?」
「そうだよ! あんたしかいない!」
「し、しかし、女王陛下に命令など、畏れ多い……」
「はぁ!? 女王っつっても、あんたの神器じゃないか!」
怒りとあきれの混じった声で詰め寄るタローに、中年男性は逆ギレした。
「私は、私は完全な支配者を求めたんだ! 永遠に美しく、永久の王国を支配する、真の王を! この身も魂も捧げるに値する、真の忠誠を誓えるお方を! あぁ……、麗しき女王陛下!」
「このイカレ野郎がぁ!!!!」
恍惚の表情で女王を仰ぎ見る中年男性を、タローは全力で殴り飛ばした。
中年男性は避ける間もなく、仰向けに倒れて気絶する。
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