モンスター
狼頭の怪物と対峙したガルニスは、思わず声を上げる。
「な、何なんだ、こいつは!?」
彼は驚きながらも、襲いくる怪物を棍で迎撃する。強烈な突きが大柄な怪物を弾き返す――はずだった。
現実は違う。怪物はガルニスの突きを器用な体さばきで受け流し、側面から飛びかかった。
その勢いに圧されて、ガルニスは怪物と組み合ったまま、後方に転がる。
「ガルニス!」
ニッカールコが背後から怪物の頭を叩いて、引き剥がそうとするも、少しも怯ませられない。確かに手応えがあったのにと、彼は驚愕とする。
明らかに女王のしもべよりも頑強。
「タロー、やれ!! 今だ!」
ガルニスは怪物に押し倒されながらも、その状態で怪物の体を固定させていた。
タローはすぐに反応して、神器壊しの剣で怪物を突き刺す。
怪物は白い砂の塊となって崩れ落ち、ガルニスの体を覆った。
ガルニスは白い砂を払って立ち上がり、顔をしかめる。
「怪物め……」
武術家たちは改めて周囲を警戒した。
タローはガルニスに問いかける。
「大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない」
「あのモンスターは何なんですか?」
「オレに聞かれても困る」
「今までこの世界にはいなかった……って、感じですかね?」
「あんなのがいて堪るか!」
彼の返答を受けて、モンスターなんかいないのが普通だよなと、タローは心の中で同意した。
おそらく怪物の正体は、女王が生み出した新たなしもべ。狭い場所や地下での戦いが苦手な、翼を持つしもべに代わる存在。疲れを知らず、まともな攻撃が通用しない点では同じだが、より力が強く、体も丈夫になっている。
ガルニスはタローに提案した。
「あの怪物が出てきたら、今みたいにオレが体で食い止めるから。その間にトドメを刺してくれ」
「え、大丈夫なんですか?」
「何ごとにおいても、限度はある。だが、それが一番確実だ」
彼は怪物と組み合って、純粋な力の差を痛感していた。多少の技術など全く問題にしない、圧倒的なパワー。
ガルニスはタローに念を押す。
「良いか? オレたちの中で一人や二人――誰が欠けようと、大した問題じゃない。タロー、それとマリ、あんたら二人じゃなけりゃ、女王には対抗できないんだ。オレたちのことは捨石ぐらいに考えろ」
タローは頷かなかったが、ガルニスの覚悟だけは受け止めた。
一行は怪物の襲撃を警戒しながら、五番目のアーチを潜って進む。
怪物は遠巻きに一行を監視しながら、森の中を移動している。まるで襲いかかる隙を窺っているかのように。
全員が嫌な空気を感じていた。
それまで武術家たちに交替で担がれていたマリは、再び自分の足で歩きはじめる。彼女自身、有事の際に足手まといにはなりたくなかった。
そして、その時は来た。
六番目のアーチが見える場所で、森の中からぞろぞろと何匹もの怪物が姿を現し、同時に一行に襲いかかったのだ。
「トウキ!」
マリがブレスレットに触れてバリアを張るが、怪物は構わず襲いかかる。怪物の力でも神器のバリアは破れない……が、このままでは一行も身動きが取れない。
「オレがやる!」
タローは自分から怪物に斬りかかった。安全なバリアの内側から、ひしめく怪物をまとめて一気に斬り払う。
神器壊しの剣は、怪物の体を紙切れのように裂き、瞬く間に白い砂の塊に変えた。バリアと剣があれば、たとえ相手が怪物であっても物の数ではない。
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