二人だけじゃない
女王のしもべが持つ矛の神器が、マリに突き刺さる直前、ガルニスが横から彼女に飛びつき、地面に伏せさせた。
急降下していた女王のしもべは狙いを外したが、低空で急旋回して矛を振り回し、追撃をしかける。
ガルニスはマリを抱えたまま地面を転がって、矛の一撃を避ける。まさに紙一重の攻防。
「雷よ、降れ!」
さらに杖を持った女王のしもべが、天から雷を呼んで、地上に降り注がせる。
「トウキ!」
空が閃いた瞬間、マリはブレスレットを胸に抱えて祈った。瞬時にドーム状のバリアが展開され、落雷を受け流す。
そこへ矛を持ったしもべが折り返し迫るが、今度はニッカールコが横槍を入れた。
側面から不意討ちを受けたしもべは、バランスを崩して転がる。
「今だ!! やれ!!」
言われるまでもないと、タローはニッカールコが声を上げると同時に、矛を持ったしもべを叩き斬る。
しもべは剣を受けようと構えた矛もろともに両断され、白い砂の山と化した。
残る神器持ちのしもべは三人。雷の杖を持った者、白いオーブを持った者、小さな斧を持った者。三人とも上空にいて、自ら動こうとしない。
武術家の一人のトモクロが、牽制に木製のブーメランを投擲すると、薄く白い霧状の障壁が発生してブーメランを弾き落とした。マリの神器に類似した、広範囲を防御できるタイプだと推測できる。
タローと武術家たちは、上空でバリアを張る敵を退けることができない。しかし、相手側もマリの神器の守りを突破する手段がない様子。お互いに動かないまま、睨み合う。
時間稼ぎをされてはいけないと、タローは突破口を探した。彼の武器は剣。遠距離の敵には攻撃する手段がない。剣が伸びるとか、斬撃を飛ばすとか、そういうことができればいいが、そう都合よくいかない。
こういう事態を最初から考慮しておくんだったと、彼は強く後悔した。だが、今は悔やむよりも、現状打破の手段を考えるのが優先だ。
そこで彼は以前にガルニスが言っていたことを思い出す。
――神器はクダリのもの。本人にしか使えないということも珍しくない。
タローは剣に目を落として、柄を握る感覚を改めて確かめた。ハナを思って、意を決した彼は、剣を横に構え、その場で一回転。遠心力を利用して神器壊しの剣を女王のしもべ目がけて全力で投げつける。
「行けーーッ!!」
剣は高速で横に回転しながら、白いオーブを持ったしもべに向かっていった。
タローの予想外の行動にしもべたちは反応が遅れる。そのまま剣は、霧状の障壁を切り裂き、オーブを持ったしもべを引き裂いて、白い砂の塊に変える。
「なにっ!? ……あぁ、しかし、バカめ! 自ら切り札を手放すとは!」
隊長は驚愕しつつも、剣を失ったタローを嘲笑い、剣の飛んでいった方角を見て、また驚愕した。
「何だと!?」
通りすぎたはずの剣が、弧を描いて戻ってくるのだ。
「帰ってこい!」
タローの声に応じて、剣は彼の手元に収まる。
彼は心の中でハナに感謝の言葉を述べた。
ハナの最期の言葉。いつでも、あなたの側に……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます