レジスタンスのリーダー

 タローは薬の影響で自分の頭がおかしくなったのではないかと、不安になった。


「タロちゃん?」


 ハナは再度呼びかける。

 彼女を心配させてはいけないと、タローは気を取り直した。


「あ、あぁ、どうした……っていうか、大丈夫だった?」

「私は何ともなかったよ」

「本当に?」

「本当、本当。ここの人たち、そんなに悪い人じゃないみたい」


 それは自分たちがクダリだからだと、タローは言いたかった。利用価値があるから大事にされているだけなんだと。


「そんなことより、早く脱出しないと」

「そのことなんだけど……タロちゃん、私たち女王様に会わない方がいいと思うの」


 またその話なのかと、タローは少しうんざりする。


「会わずにどうするんだよ?」

「ここの人たちと協力して、元の世界に帰ろう」

「本気で言ってるのか?」


 レジスタンスに何か吹きこまれたのだろうと彼は察するが、ハナは本気だ。真剣な目でタローを見つめている。


「支配の女王様は、とっても厳しい人らしいの。役に立たない神器を持つ人は、容赦なく切り捨てるって」

「そんな話を信じるのか? レジスタンスの言うことだぞ」


 信じられないという顔をする彼を見て、彼女は少し怯んだが、それでも頷く。女王の元には行かないという決断に、変わりはないということだ。


「警備隊の人たちや支配の女王の、何がそんなに信じられないんだ?」

「それは……」


 ハナは視線を逸らして口ごもったが、レジスタンスの言うことは真実だと、確信を持っている。そしてタローには何かを隠している。

 タローから見ても、それは明らかだった。


「言えないようなことなのか?」


 彼の問いかけに、ハナは小さく頷いた。

 もう彼は何も言うことができない。ハナの気持ちが少しも分からないのだ。


 重苦しい空気になって、二人が黙ったままでいると、一人の若い男性が小屋の中に入ってくる。黒い長髪を後ろで束ね、軽薄そうな笑みを浮かべた、背の高い男性。


(クダリ……なのか?)


 露骨に怪しむタローに、男は話しかける。


「お目覚めみたいだな。少年、オレはレジスタンスのリーダーのトウキだ。トウキ・アラシ」

「クダリ?」

「まあ、そんなところだ。あんたらの同類だよ」


 トウキの発言にタローは目を見張った。レジスタンスのリーダーはクダリだった。それならハナがレジスタンスの言うことを信じたのも、多少は理解できる。

 クダリがレジスタンスの、しかもリーダーを務めるからには、相応の事情があるのだろうと思い、タローは問いかけた。


「どうしてクダリがレジスタンスなんか……」

「支配の女王に対抗するためだ。オレたちにとっても、あんたらにとっても、女王は敵だ」

「なぜ、そう言い切れるんですか?」

「言っただろ? だからって」


 いったい何が同類なのか、タローには分からなかった。さも当然のようにトウキが言うのも分からない。

 トウキは整った顔を少し歪めて、面倒臭そうに言う。


「わっかんねーかなぁ? オレにも守るべきパートナーがいるんだ。名前はマリって言うんだが」

「女の人ですか?」

「当たり前だろ」


 タローはトウキに親近感を持った。トウキとマリも二人のクダリなのだ。何という偶然。

 つまりはトウキも自分と似たような境遇にあったのだろうと、彼は推測する。

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