レジスタンスとの生活

レジスタンスの襲撃

 タローを乗せた馬車は、街道を走って次の街ウィントへと向かう。

 エトラ市から離れて、人家の少ない道を馬車が走っていると、木組みのバリケードが道を塞いでいた。

 タローは猛烈に嫌な予感がする。以前にも経験したことがあるのだ。

 そして彼の予感は当たった。馬車が停まると同時に、いったいどこに隠れていたのかと思うくらい、大勢のレジスタンスの者が現れて、馬車を取り囲んだ。

 黒装束に身を包んだ彼らは、次々と馬車に取りつく。いくら警備隊でも、これでは多勢に無勢だ。ざっと見た程度でも、十倍は数が違う。

 馬車は破壊されて、中に乗っていたタローも警備隊の者も引きずり出される。

 周りは敵だらけで、何がどうなっているのかも、タローにはよく分からない。こうなってしまっては、抵抗しても無意味だ。


「クダリを確保したぞ!」


 タローを引きずり出した男が、そう叫んだ。


「眠らせろ! さっさとずらかるぞ!」


 誰かが大声で指示を出す。

 次の瞬間、タローの顔に向けて、スプレーでガスが噴射された。麻酔ガスだ。

 タローは酩酊状態に陥り、まともな思考や行動ができなくなる。フワフワした気分になって、頭の中がグルグル回る。その間に彼は数人がかりで運び出された。

 警備隊の者たちはそれぞれ武器を取り上げられ、適当に痛めつけられた上で、拘束され放置される。

 レジスタンスが撤退した後には、壊された馬車と拘束された警備隊員らが残されるだけだった。



 レジスタンスの者たちに担がれて、連れ去られている間、タローは意識こそあったものの、全くの夢見心地だった。体の揺れと同期するように、視界が回転する。素面なら気持ち悪いと感じるところだが、逆に眠りに落ちる前のように奇妙な快感に支配されている。

 その後、彼は縄で馬の背に縛りつけられた。クッションこそ置かれているが、非常に揺れる。それでも彼が胃の中の物を吐き出すことはなかった。平衡感覚はとっくに狂ってしまっていて、これ以上は狂わないのだ。

 やがて時間が経って、麻酔の効果が薄れはじめると、タローは息苦しさからうめき声を上げる。そうすると再び麻酔ガスが浴びせられて、今度こそ彼は意識を失った。





 タローが意識を取り戻した場所は、木造の小屋の中だった。床に敷かれた薄い毛布の上で、彼は仰向けに寝かされていた。特に拘束されているということはない。


「タロちゃん、気がついた?」


 彼の目の前にはハナがいた。彼女は眉をひそめてタローの顔を覗きこんでいる。

 タローは驚いて起き上がるも、何から言って良いのか分からず、あたふたして目と口を開閉させるだけ。


「あのね、タロちゃん……大事な話があるの」

「話?」


 これは夢ではないかと、タローは疑っていた。ここがレジスタンスの拠点で、ハナと再会できること自体はあり得るのだが、二人とも拘束されていないし、見張り番もついていない。あまりにも無警戒だと感じたのだ。

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