女王とレジスタンス

 眉をひそめる二人を見て、町長は丁寧に説明をはじめる。


「『支配の女王様』は、この世界の秩序を守る女神様のことだよ。何百年も昔から、この世界を守ってくださっているんだ。私たちが大きな戦争もなく、平和な暮らしを送っていられるのも、全て女王様のおかげなんだ」

「ふへぇ~、そんな人がいるんですね。あ、人じゃなくて女神様なんでしたか」


 ただ感心して頷く少女とは対照的に、少年は本当に女神などという存在がいるのかと怪しんだ。神器なんてものがある異世界だから、実在していてもおかしくはないと彼は思うが、あまり信じる気にはなれない。

 町長は説明を続ける。


「ただ、そんな女王様に反発する連中もいる。そいつらは『レジスタンス』なんて名乗ってはいるが、実態は盗賊と変わらない。君たちの神器を盗んだのも、そいつらだと思う」

「まさか……神器で女王様を?」


 嫌な予感がした少年は、不吉な問いかけをした。

 町長は深刻な表情で頷く。


「そうかもしれない。君たちの神器が、どんなものかは分からないが、もし……危険なものだったら」


 少年は焦りを募らせる。


「早く何とかしないと。とりあえず……ボクたちは女王様に会えばいいんですか?」

「ああ。町で一番の武術家を護衛につけよう。とりあえず今日は休んで、明日の朝に出発するといい」

「はい」

「宿は取っておく。ウチの者に案内させよう」

「何から何まで、ありがとうございます」


 町長の心づかいに少年は深く頭を下げた。それに倣って少女も頭を下げる。


「この世界の者として、クダリ様の力になるのは当然だよ」


 町長は胸を張って、あくまで善意であることを二人に強調して示した。ルミエ町の代々の町長は、この世界でクダリが最初に訪れる集落の長として、悪印象を抱かれないために、どのようにクダリと接するべきか、よく学んでいるのだ。

 クダリに好意的に接して、この世界の発展に協力を得やすくする。それがルミエ町の重要な役割なのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る