奇妙な町
町の中に入った二人は、話のできそうな人を探す。
そこで少年は改めて、この地域は外国なのだという思いを強くした。石とレンガの町並みは、明らかに彼のよく知るものではなかった。自動車も走っていないし、アスファルトの道路もない。それに何より……見かける人は髪の色がおかしい。誰も彼もカラフルでビビッドな色つきなのだ。黒い髪の者は一人もいない。
髪色のあまりの異質さに気後れする少年とは違い、少女は平然とした態度で彼に声をかける。
「誰に話を聞こうか?」
「いや、あの……何とも思わないの?」
「何が?」
「髪の色だよ。普通じゃない。こんなに皆が皆……」
少女には少年の言う「普通」が分かっていなかった。少年と周りの人を見比べて、初めて彼女は気づく。
「あ、黒い髪の人がいない?」
「そうだけど、そうじゃなくて」
人の地毛は基本的には、黒・茶・赤・黄・灰・白に収まる。一つの町の人が全員、ビビッドカラーに染めていることは、まずない。
少年が町の人たちの髪色に違和感を持つということは、逆に言えば、町の人たちも二人の髪色に違和感を持つということでもある。二人の近くを通りかかる人たちは、誰も二人に怪訝な視線を送る。
少女は自分の髪の先を見て、黒髪であることを確認してから言った。
「私たちみたいな髪の色の人は珍しいのかな?」
「……そうみたいだ」
町の人たちから見て、自分たち二人はどう映るのかを考え、少年は顔をしかめた。
一方で少女はそんなことなど気にせず、誰に話しかけようかと考えている。
「それで、どんな人に話を聞けばいいのかな?」
無邪気なのか胆力があるのか、どちらかは分からないが、少年は彼女の発言に内心で驚いた。同じ境遇にある女の子が前向きに行動しようとしているのに、このまま棒立ちしているわけにもいかないと思い直した彼は、町の人たちを見定める。
「交番があればいいんだけど……」
「交番?」
「それか観光案内所とか」
「案内所? どこにあるんだろう? やっぱり誰かに聞かないといけないよね」
「優しそうな人がいい。言葉が通じればいいんだけど」
少年は緑色の髪をした温和そうな年配の男性に声をかけることにした。
二人が年配の男性に近づくと、いかにも用がありそうな気配を察知されて、逆に彼の方から話かけられる。
「こんにちは。クダリ様だね?」
「クダリ、サマ?」
明らかに異国の風情なのに、言葉を理解できることに困惑する少年を見て、緑髪の年配の男性は小さく笑う。
「いやはや、今度は二人同時とは、珍しいことがあるものだ。こっちのことは何も分からなくて、困っているんだろう? 私が町長の所に連れていってあげよう。ついてきなさい」
「町長?」
「そう、町長。詳しい話は町長がしてくれるよ。初めてのことではないからね」
混乱するばかりの少年とは対照的に、少女は明るい笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます」
「いやいや、いいんだよ。クダリ様は歓迎すべきお方だからね」
年配の男性も笑顔で応える。
二人は雰囲気に流されるまま、彼の後について町長宅へと案内された。
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