第23回 競輪界の『毛利元就』!?広島の松浦悠士!

 さて、これは前回(22回)に引き続き、競輪GP2022のおさらい。


 競輪GP2022では、4人が並ぶ北日本ラインが分断される可能性。そして、それを試みるのが松浦悠士選手(又は、平原康多選手)ではないかと予想した。


 結論として、その予想は的中していた。しかし、競輪GP2022で予想外だったのは、この松浦悠士選手が北日本ラインを分断してくるタイミングと、それに対する北日本ライン(特に新田祐大選手の反応)の対応だった。


 平塚競輪場現地でレースを観ていたので、今でも忘れられない。

 松浦選手が、何と残り5周に差し掛かる場面だった。松浦選手の動きに平塚競輪場会場の観客からはと、歓声が上がった。松浦選手はその早いタイミングで、北日本ライン2番手の新田祐大選手の位置を狙いに行ったのだ。


 私以外にも、競輪GP2022を観ていた人、予想していた人には、単騎一人で闘わなければいけない松浦選手が、北日本ライン分断を試みると想定した人は多いはず。しかし、そのタイミングがここまで早いとは思ってもみなかっただろう。


 大晦日の朝。スポーツ紙を3紙購入し、レース後の選手のインタビュー記事を読んだ。そこには、他の選手のコメントでも、松浦選手の動きが想定外だったとの回答が並んだ。


 私と同じく平塚競輪場現地で観戦したお客さん。それに全国各地で場外発売が行われていた競輪場、場外車券発売場サテライト、テレビの前の競輪ファンも驚いたのではないのだろうか?まさに、松浦選手のである。


 さらに、もう1点想定外だったのは、位置を狙われた新田祐大選手の対応だった。彼はあっさり自分の位置を明け渡してしまったのだ。北日本ラインは、新山響平選手-新田祐大選手の順番でラインを形成していた。

 ところが、松浦選手が新田選手の位置。つまり、新山選手の番手後ろに来たとき、新田選手は松浦選手と並走せず、新山選手の番手後ろに入れてしまった。この対応に、私や他のお客さんも驚きを隠せなかった。その時点で、新山選手-松浦選手-新田選手という並びになってしまったのだ。


 本来(という言い方も変かもしれないが)、他の選手が自分の位置狙ってきたならば、自分の位置を明け渡すのではなく、並走してでも自分の位置を守る。これは競輪がラインという連携をしてレースをする上で、基本中の基本。

 なので、新田選手が自分の位置を明け渡してしまったのが、正直に言ってあり得ない対応だと思ったのだ。私も、他のお客さんも、これはどういうことだと、皆が動揺していたのを覚えている。


 恐らく新田選手は、松浦選手と並走して、脚の消耗するのを避けたかったのだと思う。

 その証拠に、新田選手は赤板残り2周に差し掛かるタイミングで、新山選手の番手を奪い返しに行った。


 しかし、松浦選手と北日本ラインの駆け引きをする間、展開をしっかり観ていた脇本選手と古性選手の近畿コンビが一気に仕掛けてきた。近畿コンビの仕掛けのタイミング。それに近畿コンビの完全復活具合がマッチして、北日本ラインも松浦選手も瞬く間に追い抜いていったのだ。


 2019年の競輪GPから、2021年の競輪GPまで松浦選手と共に競輪GPを走ってきた同じ中国地方の選手・清水裕友(山口県)がいなかった競輪GP2022。そこで松浦選手が考えた奇策がレース展開を大きく左右した。


 松浦選手の北日本ライン分断策は成功したが、彼自身松浦選手のGP制覇はなかったし、確定かくていばんに入ることもできなかった。


 松浦選手以外にも地元・神奈川県の郡司浩平選手や、平原康多選手(埼玉県)も単騎でのレースだった。だが、あのを打てたのは、松浦選手しかいなかっただろうし、あれ以外の選択肢もなかったかもしれない。


 それだけ、競輪GP2022は出場選手の地区に偏りがあり、例年の競輪GPでは観たこともない展開になった。


 2019年の競輪祭で初めてGI優勝し、今回の競輪GPを制覇した脇本選手と同じく、日本選手権競輪ダービーと、オールスター競輪を優勝している松浦悠士選手。特に2020年のオールスター競輪では、当時も圧倒的な強さを誇っていた脇本選手に競り勝って優勝した経験を持つ。今後も競輪界の毛利元就の活躍に目を離せない。

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