第12回 もうすぐ今年最後の『競輪祭・GI』

 再来週の11月22日(火)から27日(日)まで、2022年最後のGI『競輪祭』が始まる。

 競輪GPを目指す上で、参加する選手にとって、ここが最後のチャンスになる。


 しかし、今年最後のGIは例年以上の激戦になるだろう。それには幾つかの理由がある。


 まずは、今日時点で競輪GPへの切符権利を持っている選手が限られていることだ。

 毎年、競輪GPを走るためには、簡単であって、簡単ではない方法がある。それは、年間6回開催されるGIの内、どれか一つでも優勝すること。一つでも優勝すれば、もうそれで決定。余程のことがない限り、その権利が失われることはない。


 今年、この条件を満たしている選手は、まだ3名しかいない。脇本雄太選手(福井)、古性優作選手(大阪)、新田祐大選手(福島)の3名だ。今年のGIは、10月の寛仁親王牌GIで新田選手が優勝するまでは、脇本選手と古性選手が優勝をたらい回し状態だった。


 今年最初のGI・全日本選抜競輪(2月)で昨年のGP覇者・古性選手が優勝。古性選手は、今年の競輪GP開催の10ヵ月前に早々と切符権利を手にした。

 そして、5月の日本選手権競輪ダービー。ここで脇本選手が優勝。競輪GPへの切符権利を手にする。

 すると、その翌月の高松宮記念杯競輪GIで、古性選手が地元・岸和田競輪場での優勝を果たす。今年2回目のGI優勝だった。


 次のGIが8月のオールスター競輪。ここで脇本選手が完全優勝という形で、今年2回目のGI優勝を果たす。今年の8月終了時点で、4つのGIが行われた。しかし、ここまで脇本選手と古性選手しか、GIを優勝していない状態だった。


 これが先月の寛仁親王牌GIで変わる。新田祐大選手が、GIタイトルを全て優勝する『グランドスラム達成』という形で優勝。ようやく、脇本、古性、両名以外の選手で競輪GPへの切符権利を手にする者が現れた。


 それと今年の競輪GPへの道のりが激戦なのは、もう一つの理由があると私は考える。今年からGIとGⅡの賞金額がアップしたのだ。

 競輪GPを目指す方法は、GIを1回でも優勝すること。そして、もう一つの方法が、賞金ランキングで上位9名に食い込むことだ。

 今年は特別競輪(GI)と準特別競輪(GⅡ)の賞金額が全体的アップしたので、その影響が顕著に表れている。寛仁親王牌GIが終了した時点で、賞金ランキングにおいて賞金獲得額が1億円を突破している選手が4名もいるのだ。


 競輪GPが終了した時点で、賞金獲得額が1億円を突破する選手が複数出る年はある。近年で言えば、2019年のGP終了後。この年は5名が賞金獲得額1億円を突破した。そして、昨年2021年。GP終了時点で、賞金獲得額が1億円越えの選手は4名いた。

 だが、この賞金獲得額はGP終了時点なので、競輪GPでの賞金も加味されていることを留意してほしい。


 その上で、今年は競輪祭を迎える前の時点で、賞金獲得額が1億円越えの選手が4名もいる。今年GIを2回優勝している脇本選手と古性選手。

 そして、GI優勝はしていないが、地道に賞金を獲得している松浦悠士選手(広島)と、佐藤慎太郎選手(福島)だ。松浦選手と、佐藤選手の両名は、特別競輪での準優勝や、記念競輪での優勝などで賞金額を地道に、そして確実に積み上げてきている。


 競輪祭GIが終了時点で、その年の競輪GP出場者が確定する。言うまでもなく、その年のGI優勝選手と、それを含めて賞金ランキング上位9位以内に食い込んだ選手だ。


 しかし、ここにも思わぬ落とし穴がある。賞金ランキングで競輪GP出場を目指すには、例年7000万円前後の賞金を稼ぐ必要がある。

 ところが、今年は特別競輪での賞金額(特に決勝戦)がアップしている。そのため、今年は賞金獲得額が7000万円前後では、GP出場のためには足りない可能性がある。

 また、当然のことながら、この競輪祭で優勝すれば、今年の賞金獲得額が低い選手でも、問答無用にGP出場の切符権利を手にすることができる。それは最後の最後で一発逆転劇となり得るので、賞金ランキング枠で出場を狙うには気が抜けないのだ。


 その上で、再度おさらい。今年、GI優勝選手の脇本、古性、新田の3人は確定。そして、現時点で賞金獲得額が1億円越えの松浦、佐藤の2人も。次いで、賞金獲得額が現時点で9000万円前後の郡司、守澤の2人も確定


 そして、ここからが運命の分かれ道。現時点で、賞金獲得額がおよそ8400万円の平原康多選手。そして、賞金獲得額がおよそ7300万円の清水裕友選手。次いで、賞金獲得額がおよそ6100万円の山田庸平選手。賞金獲得額がおよそ5700万円の成田和也選手。この4人は気が抜けないだろう。


 優勝すれば、それに越したことはない。だが、競輪祭の決勝戦の賞金は、優勝選手がおよそ4000万円。準優勝で、およそ2000万円。3位で、およそ1300万円。4位で、およそ980万円。5位で、およそ810万円。

 優勝できなくても、決して賞金額が。そのため、最後の最後、賞金ランキングにおいて逆転負けをしてしまう可能性もあるのだ。


 しかも、今年はグランドスラム達成したGI優勝者・新田選手の存在が、賞金ランキングにおいて壁になる可能性がある。

 今年の新田選手は、前半の成績が良いとは言えず、GI優勝や賞金ランキングでのGP出場が難しいと思われていた。ところが、10月の寬仁親王牌・優勝で状況が一変する。グランドスラム達成の偉業も大きいのだが、そこまで成績の良くなかった新田選手が優勝したことで、賞金ランキングに大きく影響を与えた。


 現時点で、新田選手の賞金獲得額はおよそ7600万円。しかも、GI優勝した上での金額だ。

 仮に、新田選手が競輪祭で良い成績を残せず、賞金ランキング上位9位内から脱落したとしよう。だが、新田選手はGI優勝という立派な切符権利を持っているので、賞金獲得額での選考が関係ない。

 なので、賞金獲得額で新田選手を上回っても、GI優勝者という選考基準が最優先なので、結果的にGP出場を逃す選手がでる可能性があるのだ。


 今年最後のGI競輪祭。そこで選手達を待ち受ける運命とは―。選手も、競輪ファンも今から気が抜けない。

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