全力少女。@円谷華
最近のわたしには悩みがあった。
どうもおかしい。
何かおかしい。
記憶が飛ぶというか、言葉にしにくいような感覚に陥る時が多いのだ。
それも裕くんとイチャイチャしてる時だ。
幸せだし、そのせいかなって思ってた。
その時のわたしは、何故か浮遊する魂みたいになっていて、俯瞰してぼんやり眺めていた。
あれが、おそらく有頂天って状態で、気持ちいいし、おそらくあれがイクという現象なんだと思っていた。
まあ、実際…こほん。
でも、わたしじゃないわたしとイチャイチャする姿はなかなかに辛く、早く戻せ戻せと焦っていた。ぼーっとさせてくる感覚に、焦って抵抗していて気づけば元に戻っていた。
最近はそのせいか、裕くんに過度に接していた。
最初は裕くんを初めて上書きした時。いい子いい子してる途中だったし、興奮も最高潮だったし、深夜でもあったから気にもしてなかったし、寝落ち&正夢だと思っていた。
その正夢の中でのわたしは、裕くんの上に跨り、弄び、手慣れた動作で、準備を完成させ、それこそ夢中だったように思う。
わたしの願望が夢で未来を見させていたと思っていた。
でも告白もしてもいないのに、そんなことするはずが無いと思っていた。
半ば強制的にだけど、告白してから付き合えて。
半ば強制的にだけど、バレンタインで結ばれて。
そこからも何か不安というか、迫る何かがあった。そのために裕くんをひたすら求めて可愛がってしまった。
いえ、嘘をつきました、わたし。
そう、年上の裕くんを揶揄うことに快感を覚えていないとは言えない。
わたし好みにデザインすることに中毒性がなかったとは言えない。
甘い声がわたしの脳髄を刺激し、どことは言わないけど逆にデザインされてないとは言えない。
違う、そうじゃなくて、そもそもの話だ。
タイムリープしてきた裕くんは、華ツーによって作られたと言える。
だから過去の辛さから逃げるために積み上げたものをぶっ壊して。裕くんが過去の悲しみから逃げるために身につけたモノを取っ払って。
そうしてようやくわたしに心が向いた。
と思っていたら、この有様。
ボールをぶつけてから何かおかしい。
そのフリーキックだけど、わたしには才能があった。
努力を積み重ねたわけでもないのに、見聞きすればまるで熟練者のようにそれが出来る。出来ることがわかってしまう怖さ。
これは小さな頃にあった出来事。
誰にも言ってない、わたしの秘密。
イマジナリー華。
内気なわたしのこころのヤバいやつ。
わたしの弱気な意見を跳ね返す、妄想のわたし。
幼い頃、その子の言葉に従えば、裕くんと簡単にイチャイチャできた。
でもわたしじゃないわたしに、怖くて怖くてたまらなかった。
その小さな頃のわたしは、パラノイアみたいなそれになると、決まって意識が浮遊するから裕くんの魔法にやられたのだと最初は思っていた。
だんだんと境界線がなくなりそうで、イマジナリー華から怖くなって逃げたように思う。
受け入れてしまうと自分が儚く泡のように消えてしまいそうで、怖かったから抵抗したように思う。
だからあっち行ってと固く固く封印したような気がする。
そんな事を、裕くんに貰った絵を見て、乾いた叫びが潤った時、薄らと思い出したのだ。
アルバムを見て、少し思い出したのだ。
だから怖くなってアルバムそっちのけで襲ってしまった。
いいえ、嘘をつきました、わたし。
あれは彼氏彼女の自然の成り行きです。
でも、なんで忘れてたんだろう。
たしか美月ちゃんが告白すると聞いて、一度解いたと思う。いや、ののちゃんの時もノートを見た時にヤバいこいつと思って解いたと思う。
あの星のパレードのような流星群の夜もそうだったと思う。
サッカーばっかりで構ってくれなくて、願ったような気もする。
絵の上手い裕くんに褒めて欲しくて願ったような気もする。
あれ? 結構解いたな…?
そんなこんなでフリーキックはイマジナリーに頼らないと悔しいけど難しい。
ほんとは頼りたくなんてないのに、ああ、またやっちゃった。だんだんと境界線がなくなっていく気がするけど、不思議とそこまで怖くない。
それに、内気なカンガルーみたいたわたしはもういない。もうあの時のわたしじゃないし、妄想のあいつを飼い慣らすのだ。
というか、裕くんが悪いと思う、わたし。
(裕くんは悪くないわ)
ううん悪い。絶対悪い。
(それくらいいいじゃない。嫉妬なんて醜いわね)
し、嫉妬とかじゃないから! 彼女として当たり前だから!
(早く同調しなさいよ)
しないから! というか早く消えて!
消えなさい! わたし!
◆
「ヘスラーかぁ…渋いとこ出すなってこれ絶対当たるやつ! 裕介くん避けてぇッ!」
「え? ぁだぁっ!!?」
「先輩!? 大丈夫です?!」
大丈夫に決まってる。優しく強く当てたし、プレデター?も履いてないからそこまでじゃない。
というか裕くんが当てろって言ってたんだけど……聞いてたくせにこの二人なんなの。
「ふぅ。さ、裕くんを回収…いえ、介抱して尋問…いえ、薫ちゃんのお見舞いに行きましょう」
「…なんかこういう時、いつもキャラ変わるよね」
「丁寧な話し方が逆に怖いのです…」
「……」
丁寧な話し方の時は、だいたいが夜のレースの口火なだけ。エロ可愛いから使っているだけ。
イマジナリーなあいつの影響では、決してないのだ。
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