ラブストーリーはもうすでに。@柏木裕介
抱き合ったまま、なかなか沈黙が終わらない。
「そ、そういえば──」
なんで華の「好き」で身体が反応しない…? あの指パッチンもそうだ。なんでだよ! いや違う違う。それでいい。それがいい。
今までがおかしかったのだ。
おかしいと言えば、さっきの女だ。
危うく危なかったわけだし…つーかナイフは華が出したのか…向こうから警察に言われたら…早くここから立ち去った方がいいよな…?
そういえばあのアルタートバッグには何が入ってんだ?
ペーパーナイフも気にはなるが、現実的に考えるとバッグと中身が優先問題だ。
ヘタしたら弁償ものだし。いや、ヘタも何もないか。
価値のないものならいいが、開けるの怖え。
というか持って帰れよ!
まあ、今はいい。
ズラかろう。
華を抱きしめていた腕をゆっくりと解いた。
華は…瞳を潤ませながらまだポーっとしていた。
なら全容を聞くのは明日でいいか。
僕は立ち上がり、華を立たそうと促すが力が入らないのか立たない。
それか、ひょっとしたら腰が抜けて立てないのか? 痛みが遅れてやってきたか?
でも今の僕は虚弱だし、体格差もある。
華を背負うのは無理がある。
「どうしたものか…」
改めて華を見てみると…さっきからなんか妙な胸騒ぎがするな…照れムズはもちろんあるが、心がザワワ、ザワワとしている。
なんだろうか。
あれだけ出したのに、なんかこうムラムラ──あ、おい! 下半身に抱きつくんじゃない!
疲れてるからか、なんかさっきから過敏なんだよ!
いや、待てよ…? あの交差点での態度はそこまで珍しくはないが、さっき体験した空気、不思議現象…そして…華の…怯えたようなこの感じ…錯乱とまでは言えないが、やっぱり何か変だ。
客観的に見たらおかしいこと……まるで別人のような…僕の場合は…タイムリープした直後…錯乱してダイブした。
もしかして…もしかして僕や森田さんと同じように華も…アリちゃんも未来人…いや、あの感じは過去から今へ───
「裕くん」
「な、なに?」
「セックスしよ?」
「なんでだよ」
勘違いだったな。
あいつが…あの頃の華がそんな事を、ましてや上目遣いで言うはずないし…
だいたいもうラブストーリー中だろ! そんな恥ずかしいこと言わせんなよ!
……。
「い、一回だけだからな…」
「ッ! や、優しく…してもらえたら…嬉しい──」
「今日はそっちか…わかった」
「…そっち…? …ぇ、あ、ゆあ、ん、ゆ、裕くん、あ…!? だ、だめ、お耳弱いからぁ…ゃあ、ん、お、お家っ! 裕くんのお部屋でんむちゅ?! ん、んむ、あ、はぷ、ぷはっ、はっ、はっ、はにゃ……は! ほ、ほら、わ、わたし! 汗! シャ、シャワーとか! 浴び、あ、はぁ、し、しっぽりと、温めあって、や?! あにゃ、にゃ、にゃッッ?! ち、クリクリしにゃいでぇ…あにゃ!?」
「子猫バージョンか…わかったよ…強引なやつな」
「子猫…? ご、強引? そ、その嫌じゃないんですけど…最初は、お互い、や、そこ違っ、にゃ?! ああ!? しょこ、だ、だめですわっ!? に、匂いとか! き、汚いと思いますわ!?」
「甘い匂いさせて何言ってんだ。お嬢口調は…プラス緊縛だったっけか…お前と違ってそんなに上手くないからな。スカーフ貸せ」
「緊縛っ?! あ、あの、満更じゃないの、ないのだけど、違くっ、てぇ…んむ、お外は、ちゅ、あの、トラゥ、むちゅ、…い、言えない…わよぉ…!」
「くそ、キスしながらとか結構難しいな…ちょっと黙ってろよ…よし」
「はにゃ?! 逮捕されてりゅわたし!? あにゃ……はっ! 違うの、違ぁうにゃああ!? んんんッ!? ゆ、裕くん! その、い、入れ、ちゃ、だ、だめ、あ、そこ、いい、や、ダメ! ち、違うのよ、い、入れか、替わってると、いいますかっ!」
「そうな。僕達入れ替わってるな」
「え? ゃ、あにゃ!? ひゃん、ち、違くってぇ、わ、たしぁ! から、先に、言っちゃいけない、のぉ!」
「お前と違って僕は優しいから。逝っていいから。ほらイケよ」
「違っ、やあ?! 嘘!? 何これ?! 頭痺れ、りゅ、見、見にゃいでぇぁ、ああっ…!! っはぁ、はぁ、はぁ…え…あ…やぁ…恥ずかしいよぉ…せっかくの…初めてなのにぃ…ぐすっ…」
「そうな。外はな。なかなか怖いよな」
「ち、違うのぉ…! ぁにゃ!? じ、時間が、わからないからぁ…あにゃぁぁぁぁ!?」
「そうな。外だしな。雑に済まそうな。ほらあっちの壁行くぞ」
「ご、強引…! え、あ、あ、愛に、気づいてくださいぃ…」
「僕がー抱きしめてあーげ、る。生まれー変わる天使ー…まあまあ裏声出るな…」
「そうだけど違うのぉ〜…違わないけど違くて〜…」
「とりあえずこれ咥えて壁に手ぇついてろ。腰落とせ」
「や、こ、こんな格好?! 恥ずか…え? いや、イヤ、そ、それわたしのパンんむッ?! んむー! んむー!」
「これ僕にもやっただろ。同じことしてって言ってただろ。というかなんか…こう…日に日に役者だよな……って言ったら駄目だったっな…この後、ここだろ?」
「んむむッッ?! む、んむぅッ!?」
「僕の、散々弄り倒したんだ。それに駄目なところ知ってんの、お前だけじゃないからな」
「んんッッ?! ん! んん…? んむむッッッ?!」
「全部好きだよ、華」
「ん…むーむん……」
「だから昨日やったこと、やり返すから。いいよな」
「…んむ……? んんんッ!! ぅんんむむむむッッ?!」
「ちゃんとSっけあって良かった。本当良かった…後ろされないと勃たないんじゃないかと…軽く絶望してたからな。だいたいトコロテンってなんだよ。射精管理ってなんなんだよ。ほら、お尻ぺんぺんしてやるから。頑張れ頑張れ」
「んむ?! んむむむッッッ───!!?」
◆
そうして、僕と華のひとときが過ぎ、流石に疲労困憊だったのでタクシーを使って家に帰ったのだった。
ただ、嫌がってもフリだから絶対やめないでって言ってたくせに、なぜか華は車内で激おこプンプンしながら腕に甘噛みしまくっていた。
そうか。
多分こういう時に、使うんだろうな。
解せぬ。
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