キャッツアイ。@越後屋のの

 中島さんの話、というかそれは梅小の話なのです。


 ここは北里なのです。梅小は半分こいるけど、土地的に北里のが強いのです。うちの勢力内です。


 越後屋は伊達じゃない! のです。


 これだから梅園は。


 はっ。宇宙人とかないわ〜



「中島さん。なんで宇宙人ってわかるです?」



 そもそもどうやって宇宙人ってわかるですか。



「銀色に光ってて、シャーシャー鳴いてたんだって」


「銀色…?」


「宇宙人ってそうやって鳴くんだ…というか鳴くんだ」


「それとあの有名な写真のやつみたいな身長だったって」


「その宇宙人って小さなやつだろ? 捏造だろ? あの写真は嘘だったって何かで見たぞ」


「だよね…私も実は信じてなくって。あの病院の医療ミスじゃない? って人が梅小の大半なんだよね。人知れず始末されたって」


「小さな……銀色……?」



 宇宙人も病院も医療ミスもどうあってもどうだっても別にいいのです。


 小さな、銀色。


 その話を聞いたら、天体観測に出かけた夜を思い出したです。


 ああ、ののは…その日恋をしたのです。


 雲のない、月夜の晩に恋をしたのです。


 月明かりを浴びて、緑じゃなくて、銀に怪しく光る姫様に、猫の夜目のような大きな目をしたミステリアスな姫様に、魅かれて惹かれてドッキンコしたのです。


 大きく笑った姫様に心を盗まれたのです。


 悪いお姫様みたいに笑うからと姫様と呼び出したのです。


 でも、これは二人だけの秘密なのです。


 ただ…その日を思い出そうとするとモヤモヤするです…なぜかパイセンを思い出してモヤるです。


 腹立つです。


 そう、それもあの日からなのです。


 あの日からなんかあいつ、腹立つのです!


 それに姫様も…あの日以来…すっかり変わって…でも最近の姫様は、いい。まるであの頃のようです。


 有無を言わさず従ってしまうです。



「………あー、もーその課題はいいです。別のに変えるです」


「え? 今から変えれるものなの?」


「えーまたー? センセ脅しちゃ駄目だよ」


「そうだそうだ」


「お、脅さないのです! ちゃんと頼むのです! 人を何だと…まあいいです。よく聞くです! 自由研究の変更宣言をするです! テーマはネットにおけるVtuberの発展性について、です! みんな、過去より今からのフューチャーを夢見るです!」



 時代はライバーなのです! まだまだ定義は甘いですが、きっと2.5次元として定着するはずなのです。円華ちゃんを推して参りますよ! まずは自由研究という形で将来性を探っていくです!


 あ、でも最終作品の銀髪の子も捨てがたいです…


 柏木ぃぃぃいい!!



「越後屋さんが過去から掘り起こそうって言い出したんじゃないですか…」


「ほんとだよ。こういうところ昔から変わんないんだよ、こいつ。みんな振り回してさー。頼むって書いて脅すだからな? まーでも本音の部分では…なぁ?」


「ねー? 姫様姫様って。ねぇねぇ、ののちゃぁん…ほんとに姫様好きなのかなぁ…?」


「な、なんですか加代、茉莉。私は昔から姫様一筋なのですよ…?」



 な、何なのです…そのジト目は…



「もーいいって。姫様にハマる前は、いったい誰をストーキングしてたのかなぁ〜? 忘れたフリとかいつまでやるのってくらいのとぼけっぷりだったよね」


「そうそう。わたしらが付き合わされて写生クラブまで入ってたのは何故だ? チョコミン党に入ったのは何故だ? まぁ…良さがわかるまでは苦行だったけど…美術室に黙って行ってたのは? 執着してたのは? だから今回のバレンタインはなぁ?」


「ねぇ?」


「やだぁ、越後屋さん、そうだったんだ」


「そ、そんなこと覚えてない! してない! ほんとパイセンとカプとか冗談でもやめて! 気持ち悪いのです! そういうんじゃな……何ですか、皆さんその顔は…哀れむような目は…」



「…茉莉…これがツンデレか?」


「いや、リアルだと頭おかしいやつじゃん」


「ののじゃん」


「だよねー知ってたー」


「まだ誰とも言ってないのに…越後屋さんってやっぱりそうなの?」



「ぐがッ?!」



 な、何言ってるです?! わたしは姫様にしかデレないです! ツンなんかないです! うぬぐぁぁぁぁあああ!!



「あー…柏木先輩…きっと今頃…」


「だよな…姫様の目、ランランしてたし…大人だな…のの、どんまい」


「越後屋さん…それなのに、あんなにイベント頑張って…応援したんだ……泣ける…彼氏出来てごめんなさい…」


「や、ち、違うのです! パイセンとはそんなじゃないのです! だからその顔やめてなのです!」



 あんな既読スルー野郎なんて、こっちから願い下げなのです!


 それに仕方なく相手してやってるだけなのです!


 私がいないと、あいつもう友達いないのです!


 サッカーボールくんは無くなったのです。


 三好真っ黒くそ野郎もいないのです。


 それにきっと失敗するのです…


 だってパイセンはヘタレなのです。


 おいおい泣くことになるです。


 仕方ないから慰めてあげるです。


 でも姫様が泣いてたらどうしよう…


 でも、もしかしてもしかして天元突破してたら…ドリルが天を…姫様を突いてたら…


 うぁぁああああ!!!



 ああ! なんでこんなにモヤるです…!?



「中島さん…自由研究は明日からにするです。今日は終わるです。茉莉、加代、行くです」


「あがるねージェロット久しぶりー」


「ああ! やぁったぜ!」



 違うです。


 モヤモヤして仕方ないのです。



「違うのです。行くのはチョコミン党本部なのです」



 だから、三人で忍び込むです。


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