今年こそ告白してもらうんだ。@円谷華
中学三年生の二学期。
ある冬の日の学校帰り。
わたしの部屋で。
あいつが不意に牙を剥いてきた。
◆
幼馴染の三好翔太。翔くん。
小さな頃は暴れてばかりの男の子だった。わたしには乱暴なことはしなかった。だけど、心の中ではひいていた。
コワ〜って。
でも中学の三年間で小学校の悪童ぶりはすっかりと落ち着き、爽やかでイケメン。サッカー部元キャプテン。学校一のモテる男子と評判になった翔くん。
裕くんの親友でもある。
わたしにとっても幼馴染だけど、良い友達くらい。
成績もよく、面倒見もよく、後輩に同級生にと男女問わず慕われていた。
わたしの話や、他の女子生徒の話も聞いてくれていた。聞き上手さんだった。
そんな翔くんが別クラスの美月ちゃんが好きだから相談に乗ってくれと真剣に言ってきた。
「嘘、ほんとなの! ウソ! いつからいつから?!」
「引退試合の時。その時に差し入れくれてさ。それから気になって…」
ほわ。三年生対下級生の試合の時か〜盛り上がってたって聞いたな〜わたしは行かなかったけど。
「へ〜美月ちゃんか〜美月ちゃん可愛いもんね! わかる! わかります!」
「お、おい、もう少し声抑えてくれよ…恥ずかしいだろ?」
「あ! う、うん、ご、ごめん。でもさ〜へ〜そっか〜なんか良い! すっごくお似合いかも!」
「それで相談したくて。華、雑誌持ってなかったか? クリスマス近いし…裕介のもさ…良かったら見ようか?」
そんなことを、お家の玄関先で言われた。
確かにわたしも相談がある。
さっきバイバイした裕くんへのクリスマスプレゼントだ。
裕くんがニブちんなのはもうわかってる。
ええ、十分わかってますとも。
最近じゃあボディタッチもスルーされ。
前髪で隠れた右目を見ようとすると距離を取られ。
特に絵を描いてる後ろから抱きつくとお尻撫でた猫みたいになってマジ嫌な顔をされ。
たまに部室を追い出され。
特に声変わりが始まってからの扱いが雑で!
超雑で!
喉仏の成長確認タッチしたら前屈みになって怒るし。
産毛みたいな髭サワサワしたら前屈みになって触らせてくれないし。
凛々しい眉毛ジョリジョリ撫でたら前屈みになって怒るし。
腕に抱きついたら前屈みになるの早いし。
最近いっつもいっつも前屈みになったら話半分になるし。
突き放すし。
ガラスみたいに繊細で、てぃふぁーるくらい早いんだって言われても意味わかんない。
二重の意味で君は僕を殺す気かって言われても、説明してくれなきゃわかんないよ!
多分ファンクラブ関係だと思うけど…
わたし認めてないのに…
だけど、もう少し女の子として見てくれてもいいんじゃないかな? 幼馴染って言ってもさ? 負けヒロインになるわけにはいかないんだし?
だからクリスマスは張り切るつもりだった。
「あるある! 上がって上がって。寒いしね!」
今年こそ告白してもらうんだって。
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