背中からチンコが生えてきた話 その3
家に帰るまでの間、ペニーは意気揚々と自分の秘密らしいことを語っていたが、疲れていたのでほとんど聞き流してしまった。
部分的に聞き取れた単語に、「女に寄生する」「少子高齢化」「実験的展開」「極秘裏」だとかなんとか言っていたが…。極秘裏にすることがこんなのじゃすぐバレるような気がするんだけどなぁ。
まぁ深く考えるのはまた後でいいし、私一人で理解して解決できるような問題でもなさそうなので今は何も考えないことにした。
家に帰ってきたのは夕方の5時くらいだった。
どうやらまだ親は仕事から帰ってきていないようなので、今のうちにお風呂を済ませることにした。
ペニーがいる状況では、安易に家族の前で薄着に慣れないからだ。
結局今回の外出では何の成果も得られなかったが、落ち込んでいても仕方がない。もし明日になっても解決しなかったら…もう親に相談して病院へかかるしかないが。
寄生獣のミギーのようにこいつは愛想があるわけでもないので、この一日の生活で全くこいつのことを好きにはなれなかった。
もしこのままこいつとこれから一生過ごすことになったら…、私はどうすればいいんだろう。
それにもし、なにか漫画みたいな大きい揉め事みたいなのに巻き込まれたら…。ペニーはその出自になにか大きい裏がありそうだったし。
とにかくお風呂に入ってリラックスしようと脱衣所に入る。
ペニーも洗った方がいいのかな…とかどうでもいいことを考えていると、ペニーがふと話しかけてきた。
「お前は…俺と世界…どちらを選ぶ?」
「は、はぁ?なに、その質問…」
いきなり重めのトーンで放たれたその質問の真意がつかめず呆けていると、気を取り直すようにペニーは首(たぶん亀頭)を振って、
「しかし、俺はお前みたいなかわいい奴に寄生できてよかったぜ。しかもこれから一緒にお風呂とは、さすがの俺も勃起もんだぜ!」
「いや、あんた常に勃起してるみたいなもんでしょ…」
そう、今日こいつと一緒に過ごして分かったことなのだが、どうやらこいつは常に勃った状態をキープしているらしい。これ以上伸びたりもしないけど、縮んだりもしない。
そうやって常に戦闘状態を保っておいて何になるのか知らないが、今日気づいた一つのどうでもいいポイントだった。
とにかく汗もかいたので早く流そうと、服を脱いですぐに浴室へ。
私は先に頭を洗うタイプなので、先にシャンプーをし、その後ボディソープで体を洗う。
私は背中を洗おうと回れ右をして、ペニーが鏡と向き合うような姿勢になった。
しかし、なぜかペニーは急に黙りこみ、まるで品定めするように鏡に映った私の身体を眺める(?)と…
「な、ど、どういうことだあああああ!?なんでお前チンコ生えてんだよ!」
「え?何?それ、多分あんたのことでしょ」
「いや、ちげーよ!股の間に…、おまえ、それ…!」
「え、私フツーに男なんですけど!?知らなかったの!?」
そう、別に隠しているつもりはなかったのだが私は男である。
まあ、普通の男の人に比べれば確かに小柄で顔も童顔ではあるんだけど…。
今日もシノさんに性別間違われてたっぽいし(もう面倒くさいので指摘しなかった)。
てっきり記憶を共有しているから自分の性別くらい知っていると思ったのだが…、そういうものでもないんだろうか。
「て、てめえまさか男の娘ってやつか!く、くそお!どおりであまりお前の身体になじみにくいと思った…!」
「え、なに、馴染みやすさとかあるの?」
「あぁ、俺らは人間の女の身体になじむように設計されている…。それは当然俺たちが作られた目的のためにそうせざるを得ないのだが…」
な、なんか急に語り始めた…。
しかし、さっきからペニーの様子が変で、湯気のような蒸気がペニーの身体全体から発生している。
これはもしや…。
「ちくしょう、なんでお前の身体からは若干のフェロモンが出てんだよ…。普通男の身体には俺たちの身体はなじまないように設計されてるってのに…。これがプラシーボ効果ってやつなのか…、グッ!」
鏡で見ている限り、段々とペニーの体が縮んでいるように見える。おそらくこの湯気のような蒸気とともにペニーは蒸発しているのだろう。
「ま、まさかこんなことが起こるなんて…、ち、ちくしょう…」
シューシューと音を立てながらペニーは消滅していく。
場違いかもしれないが、ペニーの消滅していく音を聞いていると、夜ご飯にハンバーグを食べたくなってしまった。
こうして、たった一日のペニーとの非日常は幕を閉じる。
なんかペニーが延々と気になるようなことを言ってたけど…。まあ、そんなのどうでもいいか。背中からチンコが生えてくるっていう大問題が解決できたんだし!
きっとこれからも…、平和な日常が送れるよね!
完
背中からチンコが生えてきた話 レベルNデス @lv5death
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