背中からチンコが生えてきた話 その2

 今の季節はまだまだ夏の暑さが抜けきらない秋。

 しかし、その暑さの対策として普通の薄い服を着てしまうと背中に不自然な突起物が浮き出てしまい、周囲の注目の的になることは明白だった。

 なので仕方なく厚手のコートなどを着込んでいったのだが、そのせいで目的の風俗店に向かう途中、結局目立つことになってしまった。

 まあ、背中にチンコが生えていると思われるよりまマシだからいいんだけど…。



 

 …今回行ったお店は、いわゆる風俗エステと呼ばれる性的なサービスを提供してくれるところだ。

 このクソペニーを射精まで持って行けばいいだけなので、別に本番アリのお店に行く必要が無いのがせめてもの救いだった。

 とにかく、私はさっさとペニーをしごいてもらって解放されたかったので、ネットで調べた近くのお店に、レビューも見ずに直行した。

 そして店に入って開口一番、私は年齢確認をされる前にすぐさま受付の男にこう叫んだ。


「このお店の中で、特殊なお客さんをよく扱う人を指名させてください!」


 こういうのは、恥を捨てて勢いで行くのが大事なんだ!

「いや、でもお客さん、未成年じゃ…」

「このお店で一番手練れの人を指名させてください!」

 勢いで押し切る!何が何でも!

 受付の男に近づかれ、必死に抵抗しようとしたそのとき、自分の中の熱い思いが届いたのか、一人の女性が裏から顔をのぞかせ、私を見るなりこちらに歩を進めてきた。


「あら、珍しいかわいいお客さん。あなたみたいなかわいいがこんなところに来るなんて何年振りかしら」


 そう言ってそのベテランそうな女性は受付の男をたしなめ、プレイルームの方を指さし、

「あなた、何か訳ありみたいね。まだ暑いのにそんな厚手のコートも来てるくらいだし。いいわ、私が面倒見てあげる」

「あ、は、はい。ありがとうございます…!は、初めてなのでお手柔らかにお願いします…」


 そうして、親切なその女性(名前はシノというらしい)に腕を引かれながら、奥のエステルームに案内させられた。


「それで…、あなたどうやら訳ありみたいだけど、いったいどうしたのかしら。って言っても教えてくれないわよね」

 そんなことを聞かれても、どう答えればいいのか…。

 悩みつつも、どうせこれから否応にも知られてしまうことなので素直に、

「いえ、これからサービスしてもらえば、自然に理解していただけると思いますので…」

 そう答えたものの、当然ながらシノさんは一瞬不思議そうな顔をしたが、やはりいろいろなお客さんに対応してきたからなのか、すぐさま仕事モードの顔つきに修正した。


「それじゃ、さっそく始めてみましょうか。でも、あなたったら、ここは男のアソコをマッサージするお店なのよ。どこをマッサージしてもらうっていうのかしら?」

「えっと…背中です」

「え?」

 きっとシノさんは私が普通のエステだと勘違いして背中のマッサージを求めていると思っているに違いない。

 しかし、私の背中のヤツを見せれば…。

 

 シノさんが大げさに驚かないように天に祈りつつ、私は服を脱ぎ、その背中をあらわにさせた。


「んじゃ、お嬢さん、気持ちよーくお願いするぜぇ」

「え、え?」

「ちょ、ペニー!喋らないで」


 当然喋るチンコを前にしてシノさんは驚きの表情を見せる。

 やっぱりさすがの風俗店でもこのクソチンポを見せるのはマズかったか…、と後悔したのも束の間、シノさんはすぐに穏やかで落ち着いた表情に戻り、背中のペニーに向かって

「あらあ、あなた背中に生えててしかもお喋りさんなのね。さすがの私もこんなお客さんは初めてだわあ」

と、話しかけるというまさかの対応をするのだった。

 これにはさすがのペニーも予想外だったのか、少し驚いたような声を上げたが、すぐに

「そんじゃ、シノさん、いっちょ頼んますぜ!」

と、意気揚々と返事をするのだった。

 これから消える可能性もあるというのに、全く元気な奴だなあ、とあきれつつ、その余裕さに若干の不安を抱きつつ、私は背中を向けて台に寝転がった。


 そうして、ついにシノさんによるサービスが始まったのだが…、それはもう筆舌に尽くしがたいほどのものだった。

 ペニーは直接抜いてもらっているのでものすごく気持ちよさそうな声を上げているのはもちろんこと、最悪(?)なことに私にもその快感が伝わってきてとにかく大変だった。

 とまあ、何とか壮絶なシノさんのテクニックを味わったペニーと私だったが、残念ながらペニーは消滅してくれなかった。むしろここに来る前より生き生きとしているようだった。

 やっぱり、こいつの言うことなんて信じるんじゃなかった…。

 でも、もはや今日は病院に向かう気力も残っちゃいないし、とぼとぼと帰路につくことに相成った。


 ちなみに、気分がよくなったのかペニーは意気揚々と自分の出自を語り出したようだが、もはや聞く気力も残っていなかった私はそんな情報を聞き流してしまった。


 まあ、どうせ私にとって有力な話なんてしてないだろうし、あとで聞き返せばいいし、どうでもいいか…。

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