六〇七年 春の一節
六〇七年、春の一節。火の神と風の神の使いが、風に乗ってやってくる。
「春だよ、雪が溶ける春だよ!」
「春だよ、
春の暖かな風は眠る生き物を目覚めさせ、縮こまる芽を伸び上がらせる。火と風の使いはけらけら笑いながら春を振りまくと、風とともに次の土地へと去って行った。
両御使いが去り、人々は戸口から外へ出た。暖かな春風を体に受け、春の訪れを喜び合う。
その一方で、ユノは家の中にいた。外に出る代わりに、父の事務室兼書斎の窓を開け放して春風を呼び込んだ。
暖かな風がユノの頬を撫でる。窓を開け放したまま、ユノは分厚い図鑑を持ってテーブルに着いた。たくさんのキノコが描かれた図鑑を広げても、ユノの表情は浮かない。あれ以来、ユピトと一度も話さないまま春を迎えてしまったからだ。
ユノの両親はカンテを危険人物とし、ユノをカンテたち親子に近づかせようとしなかった。両親の強固な壁に隙を見つけるのはなかなか難しかった。両親の目を盗んではユピトに会いに行こうとしたが、ユノはユピトと話せなかった。ユピト自身にウィリデの子供たちを避けている節があったからだ。
フラウスで起きたことがユピトに壁を作らせてしまったのだろうかと、ユノは胸を痛ませた。
子供同士で遊んでいると、ユピトが遠くから見ているのをユノは知っていた。ユピトの金色の目に、寂しさと羨望が浮かんでいるのだ。
獣と同じ金色の瞳は恐ろしい。だがユノにとっては、いつまでも見つめていたくなる不思議な瞳でもあった。ユピトの瞳を正面で見つめたら、時間なんて忘れてしまうだろうと思っていた。
「……ユピトと遊べたらいいのにな」
新しい遊びが流行るたび、遊びに新しいルールが増えるたび、ユピトが加わったときに教えられるようにと、ユノは必死になって覚えた。だが、その機会はやってこない。
大人の真似をして頬杖をついたユノは、図鑑のページを見下ろしながら大きな大きなため息を吐き出した。
そのとき、かさりと外から音が聞こえた。窓の外へ目を向けると、木陰に隠れるユピトの姿が見えた。額に包帯を巻いた少年なんて、ウィリデにはユピトしかいない。
ユノは急いで窓に駆け寄り、半開きだった鎧戸をぐいと押し開けた。
「ユピトっ。どうしたの? 遊びに来てくれたのっ?」
嬉しさで興奮気味のユノにそう尋ねられ、ユピトは何度も視線をさまよわせた。もごもごと何か言うが、声が小さ過ぎてユノの耳に届かない。身を乗り出したユノが窓から落ちかけたのを見て、ユピトは慌てて木陰から出てきた。ユノと話せるよう窓辺へ近寄ると、ユピトはユノの家まで来た用件をもじもじしながら話した。
「親父が、教室開くから……ユノもどうかって……。あっ、ユノは見るだけだっ。けがしたら、あぶないから……」
話が行ったり来たりするユピトの話を辛抱強く聞き、ユノはこう理解した。ユピトの父カンテが、その剣の腕前から剣術教室を開くことになったらしい。ウィリデの男の子たちはこぞってユピト宅へ集まるようだ、と。それによって知らない人ばかり来ることに臆したのか、それともユノに話しかける口実になると考えたのか。ともかくユピトは、剣なんて握らないユノを剣術教室へ誘ったのだ。
ユノの返事は「行く!」以外にない。
「すぐ行くから、そこで待ってて!」
身を翻し、ユノはぱたぱたと足音を立てて家の出入り口へ走った。台所で何やら煮詰めている母が「ユノ!」と呼び止めたが、ユノは「遊んできます!」とだけ返して家を飛び出した。
ユピトはユノに言われた通り、木のそばで待っていた。ユノが「行こ!」と手を差し出すと、おずおずと手を繋いだ。互いに小さな手を固く握り合い、カンテの剣術教室へと急いだ。
道すがら、ユピトは「朝は子供で、大人は夕方からなんだ」と語った。
「朝から昼は、大人は働くだろ? だからな、朝は子供だけなんだ。で、大人には夕方から教えるんだ。疲れてるときの動き方と剣の振り方を教えるって、親父が言ってた」
突然現れた怪物にも対処できるように、ということなのだろう。ユピトが懸命に説明するのを聞いたユノは、「大人は大変なんだなぁ」と他人事のように感心していた。
カンテの剣術教室は、ヤラィから借りた小屋の前の、
すでにカンテによる教えは始まっていて、整列した男の子たちは木製の剣を手に素振りをさせられていた。素振りをする彼らはへとへとだ。ヤラィがカンテに貸した小屋からユノの家までかなりの距離がある。ユピトが往復している間に散々扱かれたのだろう。
「おっそいぞ馬鹿息子! さっさと素振りに入れぇ!」
両腕を組み厳しい声を飛ばすのはカンテだ。ユピトは「うっせー馬鹿親父!」と同年代の男の子たち同様の元気で言い返すと、ユノを日陰へ送り、素振りの列に加わった。
素振りをする列から「あ」と気の強そうなツリ目とやや大きな団子鼻が特徴の男の子が声を上げた。
「おい、ユノ! お前女だろ! 何で来てんだよ!」
声を上げ手を止めたのは、ユノたちと同じ年に生まれたカルウィンだった。彼はウィリデの年少の子供をまとめる、いわゆるガキ大将だ。ウィリデの三役の一人、フェオの息子でもある。面倒見の良い性格だが、気の強さと口調の荒さから女の子からの人気は低い。代わりに、年下や同年代の男の子たちからは慕われていた。
カルウィンの声で、優しそうな垂れ目の男の子も「ほんとだ」と呟き手を止めた。カルウィンの隣にいた彼の名前はダナン。農学者であり三役の一人であるヤラィの息子だ。見た目通り穏やかな性格で、カルウィン同様面倒見も良い。学者の子であることから頭が良く物知りで、年長の子供から相談を受けることも多々あった。
ユノの父エオロも三役の一人で、ほかの二人とともに、ウィリデで指揮を執る立場にあった。その繋がりから、ユノはこの二人とわずかばかりの交流があった。
父同士が学会に出ることから、ダナンとユノは多少会話を交わす。それでも、内容は父同士の伝言が多い。一方カルウィンとユノは、ほとんど会話がないと言える。ガキ大将気質のカルウィンは乱暴ではないが気が強く、また声が大きく口調も荒いため、彼をユノは苦手に思っていた。
ユノが二人とさほど交流を持たない反面、カルウィンとダナンは仲が良かった。家の近さから幼馴染みと呼べる存在であり、性格は反対だが何かと馬が合うようだった。
「剣術を教わりに来た、ってわけじゃなさそうだけど……。ユノがこういうところに来るって、珍しいね」
ダナンは穏やかな口調で首を傾げて見せるが、カルウィンはツリ目をさらに吊り上げ、不審者でも見るような目でユノを睨む。
「女がこんなとこ来るもんじゃねーだろ。家帰って裁縫でも料理でも教わっとけよ。それか子守り!」
「でも、ユピトに誘われたんだもん」
「そ、そうだ」
列に混じっていたユピトが、声を上げた。カルウィンは振り返り、ユピトの存在を初めて気づいたように眉を上げた。いつの間にか周りの子供たちも手を止め、カルウィンとユピトをじっと見ている。
「ふぅん。お前、しゃべれるんだな。いっつも遠くからこっち見てるだけだから、しゃべれねーんだと思ったぜ」
カルウィンの嫌味に反応せず、ユピトは木剣を構えたまま「ユノはここにいていい」と主張した。
「ユノは、おれが誘った。だからここにいていいんだ。お、追い出すけんりは、えっと……お、おまえにはない!」
「お前じゃなくてカルウィンな」
木剣を持ったまま腕組みし、カルウィンはずいとユピトに迫った。カルウィンは年の割に体格が良く、対するユピトはやや小柄で、二人は拳二つ分ほど背丈に差があった。その拳二つ分上から、カルウィンはユピトを見下ろす。
「お前、冬に引っ越してきたばっかのくせに生意気だな」
「な……なまいきじゃ、ない。まちがったことは、何も言ってない!」
「なんだとぉ?」
「よーしそこまでそこまで!」
今にも掴みかかりそうになったカルウィンを止めたのは、今まで見守っていたカンテだった。
「あーだこーだ言いたいなら、持ってる剣で語れ。もし俺の息子に勝てたら、ユノちゃんを追い出すなり何なり好きにさせてやろう」
ユピトがカンテに反論する前に、カルウィンが「いいぜ」とうなずいた。その顔には不敵な笑いが浮かんでいる。
「おれはな、あんたに教わる前から剣の訓練してんだぜ」
「ほー。じゃあさっきへたばりそうになってたのは演技か。たいしたもんだ、王都に行けば舞台に立てるぜ」
「うるせー! おい、ユピトだかユピタだか知んねーけどお前! おれと勝負だ!」
木剣の先を突きつけられ、ユピトは一瞬、カンテとユノに目をやった。しかしすぐ、金色の目は目の前のカルウィンを捉えた。
「わかった。やる」
困り顔のダナンが「やめときなよ」とユピトを止める。
「カルウィンは、本当に剣の稽古を受けてるんだ。ここの警備兵さんたちに見てもらってるんだよ。木剣でも、本気で打たれたら痛いんだ。やめなよ、ユピト」
「やる。大丈夫だ」
頑ななユピトに、ダナンが呆れたようにため息をついた。それを合図に、固唾を呑んで見守っていた子供たちは一斉に離れて輪を作った。内側に残されたのは、ユピトとカルウィンだけだ。
二人は数歩分離れると、互いに向き合い、木剣を構えた。力んでいるカルウィンに、何本勝負にするかをカンテが尋ねる。
「それで? 何本勝負にするよ、坊主」
「坊主じゃねえ、カルウィンだ! ……こんな奴、一本で十分だ」
「そうかいそうかい。一本だってよぉ、ユピト」
「わかった。早く合図してくれ、親父」
対するユピトは、構えに無駄な力が入っていなかった。日陰にいたユノは、自然と足が動き出していた。男の子たちの輪に入り、かき分け、ユピトが一番見える場所へ移動する。ユピトの金色の目に真剣な光が宿るのを、ユノの榛色の目はしっかり捉えた。
切っ先を向け合う二人に、カンテが手を振り下ろし合図する。動いたのはカルウィンだった。ユピトに向かって駆け寄り、木剣を振りかぶった。
ユピトは半歩動いてそれを避けた。視界からユピトが消え、カルウィンはツリ目を丸く見開く。空振りに終わったカルウィンの木剣は、滑るように移動したユピトによって叩き落とされた。
あまりに一瞬の出来事で、誰も声を上げなかった。カンテが「ユピトの勝ち」と子供のようにニヤニヤ笑いながら宣言しても、
「も、もう一回だ!」
我に返ったカルウィンは、横にいるユピトを振り返り再戦を吼えた。ユピトは困った顔で父のカンテを見たが、カンテはニヤニヤ笑うだけで、どうするかはユピトに委ねているようだった。ユピトが再びカルウィンに向き直ると、カルウィンの茶色の瞳に炎が燃えていた。ユピトの金色の瞳に、楽しげな光が瞬いた。
「わかった」
再び、二人は木剣を構え向き合った。カンテは勝敗のわかりきった勝負に興味がないのか、合図をダナンに任せてユノのそばに立った。
ダナンの合図で、またカルウィンが走り出す。今度は振りかぶらず、ユピトへ切っ先を突きだした。ユピトは読んでいたかのように避け、先ほどと同じように、軽い力でカルウィンの剣を叩き落とす。
「惜しいな、今のは踏み込みが甘いぞ!」
「う、うるせえな! もう一回しろ!」
「いいぞ!」
再戦を挑むたび、カルウィンの目には闘志の炎が燃え、ユピトの目には楽しげな輝きが宿る。
何度剣を叩き落とされても、カルウィンは再戦を申し出た。ユピトは何度でも受けて立ち、渾身の力が乗ったカルウィンの木剣を避け、叩き落とした。
次第に、カルウィンも待ちの姿勢を取るようになった。動かないカルウィンに、今度はユピトが打ち込んでいく。ユピトの剣が地面に落ちることは、終ぞなかった。
からん、と音を立ててカルウィンの木剣が落ちた。もう握力もないようで、カルウィンは手を震わせ「くそっ」と悪態をついた。
「てめー、避けてばっかいんじゃねーよ!」
「受けるのはどうしても避けらんねーときだけだって、親父に教わった。怪物が相手でも盗賊が相手でも、いちいち受けてたら刃こぼれするって」
「避けたら男らしくねーだろ!」
「でも、負けたら何も守れない」
ユピトの静かな声に、カルウィンは黙った。何も言い返せず、悔しそうにユピトを睨むだけだった。
大きな破裂音が響いた。カンテが手を叩いた音だった。二度、三度と手を打ち鳴らすと、カンテは輪になった子供たちを再び列になるよう並ばせた。
「見ての通り、お前らの大将であるカルウィンは、俺の息子のユピトに負けた。ユピトが勝てたのは何でか、わかる奴はいるか?」
「避けてばっかだったから?」
「違う!」
おずおず答えた誰かの声に、カンテはすかさず否定の声を飛ばした。わかってないなと肩をすくめ、ユピトにそばへ来るよう手招くと、小さな頭を大きな手で抱き寄せた。
「ユピトにはな、おむつが取れる前から剣を持たせた。俺がユピトに剣を仕込んだ。だからユピトはカルウィンに勝てた。ということはぁ? つまりぃ? ジョリジョリ頭の坊主、垂れ目のお前! 答えは!?」
ジョリジョリ頭、と指名されたのはダナンだった。
ダナンとカルウィンは同じ髪型だった。ダナンの父であり三役の一人であるヤラィが「男たるもの髪型なぞ気にするな」と言って、二人の髪を刈るのだ。
ダナンは諦めて月に一度髪を刈られるが、カルウィンは毎度脱走を試みる。だが、高齢のヤラィが見せる意外なほどの俊敏さに勝てた試しはない。
指名されたダナンは驚き裏返った声で「はいっ」と返事をしながら、カンテが言いたいこと、言ってほしいことを答えとして導き出した。
「おれたちも、カンテさんに教わればユピトみたいになれるってことですか?」
「そう! その通りだ! さすが学者様の子だな!」
過分に褒められ、ダナンは照れた。だがその照れも束の間。カンテは再び派手に手を打ち鳴らした。
「それじゃあ俺の教えが正しいとわかったところで、お前ら全員素振り再開!」
カンテの台詞に、不満の声の大合唱が始まった。それを再び手を鳴らして黙らせると、カンテは男の子たちの顔を見回した。
「お前ら、生まれてすぐ話せたか? 生まれた次の日から歩けたか? 歩けなかっただろ? ユピトは今よちよち歩きの赤ん坊だ。けどお前らはまだ生まれたばっかだ。歩く練習から始めるのは当然だろ?」
カンテの言うことはもっともだった。男の子たちは唇を尖らせたり頬を膨らませたりとそれぞれのやり方で不満を表しながら、大人しく木剣を両手で握った。手を震わせるカルウィンも、もう列に戻って木剣を握っていた。
「さぁて、素振り再開! さっき止めちまったから、また一から数え直しだぞー」
げんなりしているうめき声は上がったが、不服の声はなかった。
いち、に、と掛け声に合わせて木剣が振り下ろされる。カンテは列を縫うように歩きながら、木剣の握りや姿勢を正していく。その様子を、ユノはじっと見ていた。正しくは、真剣な顔つきで剣を振るユピトを、見ていた。
もう誰も剣が振れないほど疲弊した頃、カンテによる剣術教室の一日目は終了となった。
よろよろしながら銘々が己の家へ帰っていく。そんな中、元気なのはカルウィンとユピトだけだ。包帯すらずれていないユピトに、カルウィンは闘争心を燃やし息巻く。
「ユピト! てめー、今日勝ったからっていい気になんなよ。おれのがすぐ強くなって、お前の剣なんか叩き折ってやるからな!」
「折るのか!? でも折るのはいいな、相手の武器を減らすのはいいやり方だ!」
「そういう話をしてんじゃねーよばか! ばーか!」
相手を好敵手と認めているのはカルウィンだけのようだ。それが悔しく、カルウィンは地団駄を踏み、自分が燃やす対抗意識を何とかユピトに伝えようとする。だがユピトには、そういったものが欠片も伝わらないようだった。
どこかずれたやり取りをする二人を見守っていたのは、ユノとダナンだ。汗だくのダナンは、疲れ切ってなお怒る元気のあるカルウィンに苦笑していた。
「ユピトだっけ。あの子は全然疲れてないみたいだし、カルウィンもあんなに怒る元気があるなんて、すごいよね」
ねえ、と同意を求めるダナン。ユノが返事をする前に、怒ったカルウィンが「ダナン!」と怒鳴った。
「あのやろー、話がちっとも通じねえ! さっさと帰るぞダナン!」
「はいはい。ユノ、次も来るの?」
「どう、だろう。ユピトが誘ってくれたら、来るかも」
「そっか。じゃあ、また明日」
そう言って手を振ると、ダナンはカルウィンと一緒に帰っていった。入れ替わりに、先ほどまでカルウィンに絡まれていたユピトがやってくる。ユピトは緊張した面持ちでユノに「送ってく」と申し出た。
「ユノんちまで、送ってく。あの、ユノが……やじゃ、なかったら」
「いやなわけないよ! ありがとう、ユピト」
喜ぶユノの表情に、ユピトはホッとしたように緊張を緩ませた。ユノの隣に並び、やや大きめな牙を見せて「行こ」と笑った。
てくてくと、二人は歩いた。
すっかり太陽は高い。二人は途切れ途切れに会話を交わしていた。ユノが話しかけ、それにユピトがもごもご答える、という形がほとんどだったが。
ユノの家まであと少しというところで、ユピトが足を止めた。つられてユノも足を止める。
「な……なあ、ユノ」
「なぁに、ユピト」
ユピトは恥ずかしがるようにうつむいて、二、三もごもご何か呟いた。聞き取れない呟きにユノが「なぁに」と聞き返すと、ユピトは金色の瞳をきらきらさせながら、ユノをまっすぐ見つめた。
「おれたちっ、友達かっ?」
恥も衒いもなく尋ねられ、ユノは一瞬言葉に詰まった。金色の瞳を正面から見つめていられたら、と思っていたはずなのに、いざ正面から見られると、気恥ずかしさに目を逸らしてしまう。
ユピトの瞳から鼻先へ視線をずらしつつ、ユノは「友達だよ」とうなずいた。
「わたしは、そう思ってるよ。ユピトは?」
ユピトの顔にサッと赤みが差した。そして、満面の笑みが広がる。
「おれも、ユノは友達だって思ってる。ユノは、おれのはじめての友達だ」
ユノは胸がきゅうと苦しくなった。
急に胸が苦しくなったので、ユノは自分が病気になったのかと思った。慌てているうちに、ユノの胸の苦しさは消えてしまった。
一瞬の出来事にユノは首を傾げる。首を傾げるユノを見て、ユピトも笑顔のまま首を傾げる。
道ばたで首を傾げ合う二人を、通りがかったルルが見つけた。手にかごを提げている。お遣いの最中か帰り道であろう彼女は、二人を見て「変なのー」と笑いながら走り抜けていった。
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