第3話アリサは外道だった

「「ガイルが死んだ」」


 不味い。200メートルの距離でも、魔法が届く。副団長は頭を回転させるが、過去の戦場で似た経験は出てこない。

 そうだ。人質だ。騎士領主を人質にすれば


「お~い、取引だ。こいつの命を・ギャ」

「「副団長も死んだ。あいつ、人質がいても魔法を放つぞ。とんだ外道だ」」


「おい、騎士、冒険者だったら、そこで『人質には手を出さないで~』となるだろ。お前には情けってものがないのか!」と怒鳴る盗賊


 アリサは躊躇なく撃った。幸い修正はすんでいる。


「テロリスト・・とは取引・・しない。騎士は・・一所懸命・・真の騎士ならば・・命と引き換え・に・領民を守る・・はず・・父様の教え・・」


 近接戦闘をするには人数が多い。

「・・間引きする・・」


 銃声が響いた。雷魔法のような音が一定のリズムでさく裂した。

「吸う・吐く・止める。吸う・吐く・止める」

 杖から鉄のツブテが少女の呼吸のリズムで放たれ、盗賊たちが作った方陣の最も装備の良いものや飛び道具のある者から次々に撃たれていく。


「こいつ、一呼吸毎に魔法を放ってやがる!」

 誰かが気づいて声を挙げるが、次に指示を出す者は皆、撃たれてしまった。



「コウカン、引く、弾倉、交換、コウカン、放つ、弾込めヨシ・・・」


 次は「伏せ撃ち」の姿勢を取る。少女はうつ伏せに寝っ転び。魔法杖を構えるが、杖の細い方から脚を出して地面に設置した。


 右手で魔法杖の指を掛けている枝をギュウと後方に引っ張り肩に押しつけ、左手は、鉄と木の境目を、上からギュウと押さえ付けた。


(ふふふん♪64のレはミナゴロシ~レッツゴーのレ~)

 

 少女は自作の下手な鼻歌を歌いながら

 連発の「レ」・・と魔法杖に付いている小さなレバーを勇者の国の言葉「レ」に合わせる。


 ☆回想五年前

「ジョキョ先生、連発が・・的(テキ)に・・全然当たらない・・・よ」


 ???

「それで良いのです。反動で揺らぎが大きくなります。弾をばらまくイメージで撃って下さい。的以外に計算して当たるようになります。アリサ候補生の弾は、地上5メートル上に飛んでいます。5メートル以上の人はいませんね。現時点では弾がもったいない。筋トレ、いや、この世界では強化魔法だったかな」


「え~~」


 __________________________________________________



 最初、ドンを撃ったような炸裂音が数秒でなされ、前列から、四列目くらいまで人が大勢倒れ、集団の真ん中に穴が出来た。


「ヨシ、弾倉交換・・・」


 団長、副団長、組長を失った指揮官のいない50名ぐらいの盗賊は成すすべもなく、次々と各個に撃たれた。


 少女は立ち上がり、杖にひもを掛け肩で杖を平行に釣りながら、近づいて、あの魔法を生き残った盗賊達に放っていく。


「ヒィ、あの女、こっち来るぞ!」

「慌てなさんな。僕に任せなさい」


 と奥から眼鏡を掛けた盗賊の中では場違いなひょろ長い男が出てきた。茶色の釣りズボンに白いシャツ。手には木で出来たバインダー、商会の店員にも見える。


 彼は戦争中、主計官補佐補助の補助(つまり輜重兵)主計官のそばで読み書き計算を習った。盗賊に身を落してから、その経歴から「狂犬団」の物資の管理を任されていた。今も奪った村の物資を確認していた。


「フフフフ、僕は文字を読み書きできます。三桁の足し算引き算が出来ます。今は掛け算に挑戦中です。あの少女よりも頭がいい・・大人の頭脳戦を見せて上げます。任せて下さい」


「「そいつは、すげえーー」」


「僕たちは降伏する!女神圏交戦規定第2章、降伏した者を虐待してはならない。君、降伏した人を紳士として扱わないと、王様にとっても怒られるよ。捕虜としての待遇を所望する!」

 と戦争中、王国軍より渡された団旗を四角にしてうやうやしく持って来た。


 眼鏡は正式に降伏が成立したこと。これで僕達を殺したら王様に怒られちゃうよとアリサに説明したが、アリサは


「女神圏交戦規定2章捕囚の規定・・但し書き・・次の者は除外する・・③冒険者ギルドから盗賊等と認定された個人又は集団・・⑧自ら盗賊等名乗るもの・・は捕囚の規定は適用されない・・王国刑法・・夜盗等が適用・・される。王国刑法夜盗等は現行犯なら殺してもとがめられない・・よ。

 

お前達は・・除外規定③と⑧に該当する・・・つまり・・捕まって・・拷問されて、縛り首・・可哀想だから殺してあげる・・ね」


「な、識者の見解を求める!」

 パン!



(ふふふふ~~ん♪クレイモア~は~対人地雷じゃな~い。だってだって埋めないんだもん♪)


 そして、次々に鼻歌を歌いながら、直接標準で撃っていく。


(ふふふふ~~ん♪64は賢い子~スコープ無しで300なら100発100中だい♪)


「待ってくれ、俺には女房と子供がいる。俺が死んだら心配だ。この通り!」

 腕を7.62ミリ弾で吹っ飛ばされた盗賊の1人がアリサの前で土下座する。



「大丈夫・・・貴方の妻と子供・・賞金首じゃない・・処罰されない。安心していい・・」

 パン!


(ふふふふ~~ん♪89は良い子~3点斉射で弾の節約~とっても健気な子♪)


「ヒヒヒィ、俺には年老いた母がいる。俺が帰らないと悲しむんだ」

 足から血を出して、動けない盗賊が懇願する。



「そう・・あのね・・人は・・み~んな、母様から・・生まれた・・おじさんたちが・・殺した人・・も・・母様・・いたんだよ」

 パン!


「ふう、掃討・・終わり」


 最後に生き残っていた盗賊を「パン」した後、アリサは汗を拭いた。



「す・・すごいな。これが、勇者様の国の武器か?」


「うん。そう・・勇者の国の騎士様の武器・・奥さんたち・・1キロ先の森・・に隠れてもらった・・無事」


「そうか・・・有難う。この村の代表として御例申し上げる」


 領主騎士は考える。

 黒目で黒髪は、この王国ではいなくもないが・・「もしや、君は召喚された勇者様の『貴方ご無事でしたのね!』」


「父上!」「ご領主様~~~」


 騎士の周りに人垣が出来、お互いに無事を喜び合った。

 これからの事を話し合い。さあ、おのおの仕事に取りかかろうとなった時。


「アリサお姉ちゃんは?もう帰ったの?」


「何、アリサ殿が、いない」


「旦那様、あの方は鉄の馬に乗って来ましたの・・もう、姿は見えない位置にいるかと・・」


 と言うことは、やはり、召喚勇者様のお子か・・と騎士は、アリサが去ったであろう南の街道に向かって、剣を立て礼をし黙礼した。


 騎士爵夫人、子息、村民は騎士にならって、アリサが去った方に向かって胸に手を当て頭を下げ黙礼をしたが・・「ヒヒーーーン」と「パカパカ」の音で目を開けた。


 「・・騎士様、お馬さんたち・・蹄鉄を付けている・・野生は無理・・魔物に・・襲われたら・・可哀想・・この村で・・面倒・・お願い」


 オフロード用スクーターに乗ったアリサに先導された馬10頭が目の前にいた。

 アリサが主を殺した「狂犬団」別働隊の馬。


「ああ」と騎士は答えたと言う。









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