第2話
4/3(日)
結空は自分の部屋でパソコンの前に座ってヘッドセットをつけ、マウスとキーボードを操作して通話をしながらゲームをしていた。
同居人が家にいないことと、鉄筋コンクリートのマンションで壁が厚いことから気兼ねなくしゃべり声をだしていた。
今やってるゲームは三人一組で銃を使って敵を倒して最後まで生き残ることを目指すバトルロワイヤルゲームだ。
残り1チームを倒せば勝ちという状況だった。
『右の岩陰に敵が全員いる』
「オッケー。回り込んで攻撃する」
味方の報告を聞き、結空は味方二人と離れて単独で行動をする。相手にバレないように回り込み、横から無防備なところに攻撃を仕掛けると、一人を倒すことに成功した。
残り二人は結空の攻撃に当たらないように岩陰に隠れる。今度は味方二人の攻撃があたるようになり、もう一人倒した。
『いけいけいけいけ!』
3対1の状況になったらほぼ勝ちなのでグレネードを投げて逃げ場を奪いながら全員で一気に攻める。残り一人の相手はなすすべなく結空に倒されて終わった。
『3連勝ナイスー!』
「ナイスー!」
『俺、3連勝なんて初めてだ。ソラさんのおかげです』
このゲームは20チーム、合計60人規模で1戦が行われるため、3連勝は滅多にできない。
「あ、ありがとうございます。今日は調子よかったです」
結空は照れながら返事をした。
ソラというのは結空のネットで使ってる名前だ。ネットでは本名でゲームをやっていると身分がバレるリアルバレを防ぐために本名とは異なる名前を名乗っている。鬼憑きの結空にとってはリアバレは死活問題だった。
キーボードのウィンドウキーを押し、ゲーム画面を切り替えて時間を確認する。今の時刻は夜の12時過ぎだった。
「12時過ぎたんでそろそろ落ちますね」
『今日は解散かな。お疲れー』
『キャリーありがとうねー。またねー』
「こちらこそありがとうございました。お疲れ様です。」
結空は通話を切り、ヘッドセットを外して一息つく。
今日の通話した人は全員初対面だった。SNSで募集があったので結空が声をかけて一緒にやっていた。
ネットに触れ始めた当初は初対面の相手と通話することに緊張していたが、何回も初対面の人と一緒にゲームをやるうちに慣れていた。
今となって顔を見なくていい上に当たり障りのないことを言っておけば雰囲気も悪くならないし嫌われることもないので現実で人と話すより気楽だった。
再度日時を確認する。4月6日は始業式で、約8時間後には学校にいないといけなかった。
お金払っていかせてもらっている身ではあるが、学校に行きたくないと結空は思ってしまった。
この気持ちは鬼憑きであることを隠している自分だけなのだろうかと結空は思うが、学校には気軽に相談できる相手がいないので打ち明けることもできなかった。
月曜日は始業式だけで、10時過ぎには終わる上に次の日は入学式で休みだった。昨晩も寝ているため徹夜をしても体調は問題ないが、日曜日の深夜に夜更かしする人は少ないので大人しく寝ることにした。
ゲーミングチェアをクルリと180度回転させ、目の前にあるベッドに飛び込んだ。
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