第11話 友達
翌日、教室にて海月は入夏の話を聞いて、目玉が飛び出るのではないかと思う程、目を丸くさせた。
「あの怖くて危険で不気味で、それで危険な翌檜の紫崎檜から許可をもらっただと!?入夏、お前どんな技を使ったんだよ!?」
海月は何を思ったか、入夏の身体をペタペタと触り出す。
「痛い所はないか?殴られたとか蹴られたとか、鉄パイプでやられたとか」
「ないない、暴力行為はなかった。殺気みたいなオーラは怖かったけど」
「よく生きて帰ってきたな!」
「大袈裟・・・・じゃないな。確かにそうだ」
「おめでとうございます」
「うおっ!」
いつの間にか入夏の隣に簾が立っていた。
「大したものですよ、あの紫崎檜から許可を得たのですから」
「いや、灰尾が言ってくれたんだろ?」
「えぇ、でも返事はしてくれませんでしたよ。色々な方法でアピールしたのですが、無視されました」
「何かごめん、ありがとう」
「いいえ、これも虎鉄からの頼みですから。同じクラスなのだから声だけでもかけてやってほしいと」
「そっか、赤羽にも礼を言わないとな」
「そうしてあげてください。それで、本題なのですが」
「あぁ、うん」
「こちらを渡しに来ました。どうぞ、海月さん」
簾は海月に封筒を渡す。
「昨日の件についての書類です。これを持って、昼休みに赤虎団の部屋まで来てください。僕はいませんが、虎鉄がいるでしょう」
簾はそれだけ言うと、教室を出て行った。
「なんだそれ?」
入夏が海月に尋ねると、海月は焦ったように笑った。
「な、何でもない!俺、戻るわ!」
昼休み、海月がいないので入夏は虎鉄と出会った木の下で弁当を食べていた。
「青石入夏くん」
「あ、あなたは」
「いやいや、同級生やん!そこは『き、君は』とかやないの?」
「そうですけど」
「あと、敬語もいらんよ、よその派閥リーダーに敬語使われるナンバー2とかおかしいやろ」
「わ、わかった?」
「そう、その調子」
朴人はヘラヘラと笑って入夏の隣に座った。
「入夏くんさ、新しい派閥作るんやろ?昨日、檜から聞いたよ」
「あぁ、うん」
「よく檜からイエスを貰ったなぁと思って、声かけたんよ」
「それは、どうも」
「どうやって許可貰ったん?」
「メリットを聞かれたから、一緒にガーデニングや盆栽を始めないかって。俺の派閥の部屋に肥料とか置いて」
入夏の答えに朴人は噴き出したて、ゲラゲラ笑いだした。
「園芸部の勧誘やん!」
「いや、俺も言い終わった後、そう思った」
「つまりお友達になってあげるって言ったんやね」
「そうなるのか?」
「いやぁ、笑った。君、普通の人間っぽいのに面白いことするね」
「はぁ」
「いやいや、気を悪くしたんなら謝るわ。ごめんな。でも、めっちゃいい案だと思うよ、それ」
「そう?」
「だって、僕以外だと檜の友達は今んところ君と赤虎団の虎鉄と簾だけやもん」
「えっ、赤羽と友達だったのか!?ていうか、灰尾も友達なのか」
「うん。檜は背が高いから目立つのに、ボーっとしているというか暗いからね。虎鉄がコイツ友達おらんのかって心配して檜に声かけたんやけど、アイツ熱血やん?簾を挟めば檜には丁度いいんやないかって僕が提案したんよ。日よけやね、日よけ」
朴人の話からするに友達なのかどうかわからないが、派閥の上層部の友好関係は悪くないようだ。
「やっぱりサイキョウを目指すから、こっちはあまり馴れ合う気はなかったんやけど、虎鉄がな、学校生活は楽しむもんやから仲よくしようってうるさいねん。せやから、派閥関係なしに学校生活は仲良くやるってなっているんよ。ま、僕は賑やかなのが好きやからいいんやけどね」
「じゃ、ピオニーも?」
「あぁ、虎鉄は声かけとるかもなぁ。僕らは特に関係はないよ」
「そっか」
「ま、ピオニーの桃里は怖いって言われとるけど、ちゃんとしている奴が好きらしいから、誠意をみせればいいと思うで」
「なるほど」
「じゃ、僕もう行くわ。楽しかった」
朴人は立ち上がった。
「あ、あいつにもタメ語で接してやってな。それと、檜と友達になってくれてありがとうね」
「あぁ」
「アイツ、誤解されやすいから」
朴人は入夏に背を向けたままそう言って去って行った。
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