第3話 派閥説明会
派閥説明会は海月の言う通り混んでいた。全校生徒が新しい派閥リーダーの話を聞きに来ている。入夏は場所取りをしてくれた海月の隣に行った。
「ステージが良く見えるだろ?」
「流石海月だな。それにしてもまだ始まらないのか?もうそろそろ時間じゃないのか?」
入夏が壁に掛けてある時計を見た時、体育館がいきなり暗くなった。
『それでは、これより派閥説明会を行います。派閥リーダーとナンバー2の方の登場です』
無機質な音声が流れ、ステージの幕が上がる。
『それでは、派閥名と勧誘をお願い致します』
無機質な声に促され、最初に口を開いたのは赤羽虎鉄だった。
「俺は!
手で握りしめているマイクを使わずに虎鉄は大声で話し始める。
「我が赤虎団は常に己を成長させる人間しか認めない!お前達に覚悟があるならば、必ず身も心も強くなることを約束しよう!」
「虎鉄、マイクを使うんですよ」
虎鉄の隣に立つ眼鏡の男が話しだした。
「む!すまん!」
「赤虎団ナンバー2の
制服を着崩すこともなく、真面目な見た目の簾はそう言うと、一礼をしてマイクを降ろした。
『次の派閥、お願い致します』
「どうもー、皆さん。
マッシュルーム男、朴人は人懐っこい笑顔でステージから生徒達に手を振っている。
「さぁさぁ、リーダーからも一言!」
そして、マイクを檜に渡す。檜の顔は昨日とは違っていた。首と顔の右半分に何かが描かれているのだ。それが刺青かどうかは入夏にはわからなかった。
「檜の花言葉は不死、不滅、強い忍耐力・・・・君達に素質があるなら君達も檜の木になれるかもしれない」
そう言った檜の口角が僅かに上がった。その笑顔からすぐりのような妖艶さが入夏には感じられた。
「てことで、お願いします!じゃ、お次どうぞ!」
『次の派閥、お願い致します』
「ピオニーのリーダー、桃里ぼたん。ピオニーは強く美しい者が来る派閥。何事においてもトップを目指し、常に王者の風格を持ち続ける。貴方達に意欲があるのなら、美しく強い人間に成長できる」
ぼたんの声は見た目通りの可愛らしい声だった。
「ナンバー2の
菫はそれだけ言って黙った。
『それではこれで派閥説明会を終わりにします。明日の放課後から一週間は派閥体験とします。来週の今日までに所属したい派閥があれば紙に書いて、生徒会に提出してください。なお、提出日以降も派閥に所属は可能ですが、その場合は生徒会を通さず、派閥リーダーに直接渡してください』
無機質な声と共にステージの幕がおろされた。
翌日、早速派閥体験の準備が行われた。赤虎団はイーグルの部屋、翌檜はリベスの部屋、ピオニーはカメリアの部屋を使っている。
「なぁ、入夏はどこに行く?」
向かい合わせで弁当を食べていた海月が入夏に尋ねた。
「あー、どうしようかな、海月は?」
「とりあえず今日は翌檜に行ってみようかと思う。全部回って考えるよ」
「じゃ、着いていくわ」
「じゃ、放課後は一緒に翌檜の所に行こうか」
「わかった」
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