四章 再戦! 今度こそ!

第10話 いざ、再戦!



 まあいい。どうせ、野生の動物か、小型のモンスターだ。


 とにかく、このままじゃ、ロランは食事もとれないし、そのうち栄養失調で死んでしまう! 目玉なくても見えてるし、鼻も口もないのに呼吸できてるみたいだけど、一刻も早く、もとに戻してあげないと。世界の平和のために! ロランのために!


「じゃあ、行こうか。ね? ロラン」

「僕の先制攻撃で、必ず、こっちのターンから始められますから、今度こそ……」


 大丈夫かなぁ。ロランはいつもの冷静さを失ってる。さっきみたいなことにならなきゃいいけど。今回はワレスさんがついててくれるから、なんとかなるか。


 扉の前でクルウが提案する。

「今回は最初の予定どおり、二パーティーにわかれて行きましょう」

「そうですね。こんなに大人数いても、ほとんどが補欠になっちゃうだけだし」


 ロランの『みんな、行くよ〜』以外ではパーティーの数が多いことにメリットはない。


 というわけで、表口班と裏口班にわかれた。


「ああ、おれ、知力ゼロなんだぜ? 攻撃魔法使えないなんて最悪。補助はできるから、後衛にはつくけど」


 ブツブツ言いながら、ラフランスさんがむこうのパーティーに歩いていく。


「そう言えば、ランス。さっき、クルウさんに肩つかまれてたけど、平気だったよね?」

「えっ?」

「じんましん出ないんだ」

「うわぁー! 人間! よるな! クシャミが、止まらない!」

「……」


 なんだ。気落ちしすぎて認識してなかっただけか。


 さて、広間の大扉をいよいよ、あける。ギイッとな。

 さっきはよく見てなかったけど、そこはなかなか豪華な一室。床は大理石だし、壁紙はアラベスク。ドラゴンの彫像もある。

 それにしても薄暗い。壁ぎわに最低限の燭台しょくだいだけ。天井にシャンデリアはない。だから、中央ほど光が届かないんだ。


「……おジャマします」


 そうっと、なかへ侵入。

 足音しのばせても、どっちみち、馬車がガラガラ音立てるんだけどね。


 ああ、やっぱ、いるいる。奥のまんなか付近に、デッカイやつ。シルエットでは土管に手足がついてる感じ。


 僕らはガラガラ馬車をつれて近づいていく。

 すると、ステージ状になった壇上に、どこからか、パッ、パッとスポットライトが点灯した。


 この世界、中世なんじゃないかとか言っちゃいけない。ここは、なんちゃって中世だ。

 というか、よその世界から召喚されてきたマッドサイエンティストな知恵の悪魔が、蒸気機関車だの、ソーラーシステムのゴーレム(巨大ロボ)だの、電気ポットだの、レーザービームだの、アレだの、ソレだの、さんざん造りちらかしてくれるので、いっきょに近代化しつつある。

 今回のお話には出てこないけど、ホムラ先生だ。研究費を捻出するためにギャンブルに明け暮れる変わり者魔王。悪魔としてはヘンタイの一種なんだと思う。


 おかげで、電気照明はわりにあちこちで見る。そういえば、各地のギルドの照明もだいたい電気だ。


 で、そのスポットライトのまんなかに、ジャン、と照らされたのは……えっ? これ、ほんとに四天王?

 ビヤ樽みたいに太った巨人だね。サーカスの団長っぽいカッコして、片手にムチを持ち、葉巻をくわえてる。


「ケホケホ。タバコは副流煙のほうが人体に害毒なんだよ。スモハラ反対! ムリヤリ吸わされる人の身になって!」

「……」


 男はちょっと考えてから、携帯灰皿に葉巻を押しつけた。意外とエチケット気にしてた!


 ウホンとせきばらいして、男は語り始める。


「わが名は、イジマール! ゴドバさまより大将軍の位をいただいている。愚か者どもよ。こりずによくぞ参ったな。わが力をとくと見るがよい!」


 僕らは顔を見あわせた。


「敵の正体、わかったね」

「自分から名乗ったぞ」

「そう言えば、ゴドバも団長っぽいカッコしてましたよ。あれ、ゴドバ軍の制服なんですかね? ダッサイピエロ。略してダサエロですね」

「あはは! ダサエロ!」

「かーくんやつ、ロランも、人の見ためをあげつらうのはいけんよ? 樽腹がパンパンで笑いがこみあげるとか、言ったらいけんがね?」

「アハハ! たるばら!」

「おまえら、容赦ないな。ピー(伏せ字)にピー(伏せ字)って言っちゃいけないって学校で習わなかったか?」


 はい、上から、僕、猛、ロラン、トーマス、アンドーくん、トーマス、ランスね。トーマスは笑い上戸だったか。

 すると、イジマールの顔色がみるみる赤く染まっていく。あれ? 怒ってる? なんか、僕らが敵ボスの前で話すと、いつもこんな感じなんだよね。


「き、きさまら、ゆるさんぞ! 容赦ようしゃなく粉微塵こなみじんにしてくれるわ!」

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