第9話 みんなを助けないと!
それにしても、僕ら以外のメンバーが、まだなかに倒れてる。早く助けださないと、蘇生魔法でも生き返らせることができなくなるかもしれない。かもしれないっていうのは、まだ僕ら全滅したことないんで、そこらへん、よくわからないんだよね。
「ロランたちを助けに行きましょう!」
「待て。おまえたちが行けば、さっきの二の舞になるだろう? とりあえず、おれが一人で戻り、全員を運びだす」と、ワレスさん。
「でも……」
「心配ない。おれも隠れ身が使えるようになった。標的にされずに動ける」
「そうですか。じゃあ、お願いします」
よかった。僕らだけだったら、ほんとに全滅してた。
「あっ、でも、待ってください。ワレスさんはなんか封じられてしまった特技ないですか?」
「ないな」
「猛も最初ないって言ってたのに、ほんとはあったんですよ。ワレスさん、特技の数めちゃくちゃ多いから」
「なぜだ?」
「じつは——」と、敵に大事な技をうばわれたことを説明する。
ワレスさんは考えこんだ。
「戦闘に入る前に、すでに封じられたんだな?」
「そうですね」
「だとすると、何かしらの罠か? おれに効かないのは、おそらく生来特技で敵からの干渉をいっさい受けつけないせいだろう」
ミラーアイズか。敵の弱体化魔法や攻撃魔法をはねかえすんだよね。
いいなぁ。なんで僕のまわりの人はみんな、カッコイイ技なのに、僕はつまみ食いに、小銭ひろい? いや、チートだよ? 僕の技だって、すっごいんだよ? ただね。ネーミングがね。
とにかく、そんなわけで、十分後。どうにかこうにか、みんなを広間の外につれだすことができた。蘇生魔法で生き返らせる。
「申しわけありません。私がついていながら、これほどの失態を……」
なんて、クルウは開口一番に謝罪したね。
「それより、ここはいったん、ひこう。城で休んでから攻略を考えたほうがいい」と、ワレスさんは提案する。
けど、ロランが泣きながら訴えた。
「イヤです。絶対、イヤ。僕の顔がこのままなんて、死んだほうがマシ!」
まあ、ムリもないか。ロランの麗しさは世界中の美女もかなわないからね。失うのは全人類の損失だ。
チッとワレスさんは舌打ちついたものの、さすがに文句は言わなかった。
「おれも、かーくんを守れないのは困るなぁ。早く特技、とりかえしたい」
猛まで主張する。
「さっきはカウンターくらったから全滅しかけたんだ。次はカウンターはがしてから攻撃すればいい」
「では、こうしよう」と、ワレスさんは考えを述べた。
「おれはおまえたちから離れて、隠れ身で観察している。もしも、おまえたちがまた全滅しそうになれば、戦闘離脱させる」
なるほど。保険をかけとこうってことか。ワレスさん強いし、技も魔法も華麗だから、いっしょに戦えないのは残念だけど、そのほうが安心かもしれないな。
それにしても、得意技を封じられた僕らに勝ちめはあるのか?
「僕は小説が書けなくても、傭兵呼びや断捨離って大技があるからいいけど、ゴライさんとか、反射カウンターないと厳しくないですか?」
「……」
寡黙だな! 困ってる感がいっさい伝わらない人だ。
まさかと思うけど、ゴライはほんとに魔王のスパイなんだろうか?
そう言えば、こんなピンチ、初めてだもんな。僕らの技をうばったのって、この人……なんじゃ?
そんなことを考えてたときだ。ホルズとドータスがさわぎだした。ボスがいる広間の前なんだから、大声出さないでほしいなぁ。とか言って、すでに一回め、さんざん、わめきちらしたっけか。
「隊長! 今、ここになんかいたぜ」
「おお、いたぜ」
「ドータス。そっちに行った」
「おいこら、おとなしく出てきやがれ」
ワレスさんがピカリと青い目を光らせる。出た! ミラーアイズ! くうっ、しびれる。
「ただのぽよぽよだ」
コンソールテーブルの裏に入りこんだ何かを、ワレスさんは透視した。が、そう言ったあと、首をかしげる。
「いや、ぽよぽよではないな。見たことのない生き物だ」
ワレスさんが近づこうとすると、テーブルのすきまから、それが逃げだした。すごい勢いで走っていく。よく見えなかったけど、小さい白い動物だった。うちのネコりんたちに似てた? あっ、ネコりんもモンスターね。可愛いんだよ。
「あれ? 今の……」
つぶやいたのは、ロランだ。
「どうしたの? ロラン」
「なんだか、どこかで見たことがあるなって」
「そう?」
今のはなんだったんだろ?
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