三章 やっぱり、かなわない!
第7話 いきなり最強技連発! からの?
ロランがさ。ロランが、「みんな、行くよ!」と言っちゃったから、僕らは次々と、掃除機に吸われるホコリか紙クズみたいに扉の内へ——
もうね。宙を飛んでる気分だよね。
そして、部屋に入ると、敵を見るヒマもなく、それぞれの持つ最強技がくりだされていく。
「剣の舞!」
「千手観音!」
「二刀流!」
「ま〜!」
「キュイキュイキュウ!」
「アルティメットフレアー!」
「千手観音!」
「燃えつきろー!」
「暗殺!」
「ケロケロロー!」
「毛刈りー!」
「突撃!」
「ミーミミーミー!」
「ニャー!」
なんかいろいろ技名がならんだけど、いちいち描写アンド説明してたら長くなるんで、割愛。てきとうに、もんのすごい必殺技を想像してほしい。千手観音が二回あったのは、猛とゴライだ。
「そっかぁ。猛は最強技、千手観音なんだねぇ」
「通常攻撃を一回の行動で十回連打する技なんだよ」
ワクワク。僕は最強技、なんだろな。僕の順番、まだかな。あ、来た来た! 体が勝手に動く!
「黄金の嵐!」
ん? 何も起こらない……。
えっと、黄金の嵐って、なんの技だっけ? ああ、商神か。たしか、小切手を切るが一回行動で三回できる技だっけ。
「ああ! 所持金がゼロだから、小切手が切れない!」
小切手を切るは、傭兵呼びの一種だ。自分で使う金額を決められる。
なんだ。僕の最強技、今だと黄金の嵐なのか。だったら、金額指定できたから、お財布持ったままでもよかったのに。むしろ、所持金がなかったせいで、僕の攻撃は不発に終わった。
あわてて預かりボックスから招き猫のマスコットつきガマグチを出したけど、もう反応してくれない。やっぱり、その瞬間にお金持ってないと技が使えないんだねぇ。
それにしたって、これだけの人数で大技連発したから、いくら四天王でも倒したでしょ?
ただの大技じゃないよ? 今の僕らの数値、神レベルだからね。ふつうの人のレベル50って、数値は三桁だ。どんなに強くても力500とかさ。僕らは小説を書くや、つまみ食いや各々の技のおかげで、万超えだよ。ザコ敵ならワンパンだよね。ボスでも死ぬレベル。
そう思って、あらためて室内をながめる。
えーと、敵はっと?
「……あれ?」
敵は立ってる。暗がりのステージみたいなとこに一体、デカイのがいる。
それにしたって、何が起こったんだ? この惨状は?
「僕らのほうが全滅寸前なんだけどー!」
ロランの号令で突撃した形だから、全員一つのパーティーと認識されたようだ。ふつうならパーティーは前衛の四人だけしか攻撃できない。いくつかの職業を得て、後衛支援スキルを持つメンバーなら、後衛から補助行動できる。
けど、ロランの『みんな、行くよ〜』はパーティー全員が必ず行動する。えーと、人間だけでも十二人。仲間モンスターも十二体。つまり、それだけで約六ターンぶんの攻撃が続いたことになる。
この世界の戦闘はターン制だから、敵はなんの行動もできないはず。
なのに、倒れてるのは僕らの仲間たち。
ああ、ケロちゃんも、ホルズやドータスも、バランも、あっ! ク、クルウまでっ?
「バランとクルウは仲間を守るスキルがある。敵の攻撃を一手に受けてしまうんだ」と、猛。
「それでいくと、たぶん、ホルズやドータスもだね」
生き残ってるのは、僕、猛、ぽよちゃん、火の玉のたまりん、それに、ロランだけ。
「ミニコまで? ミニコの防御力二万六千超えてるんだよ?」
「何が起こったんだ? 一瞬のことで、兄ちゃんにもわからなかった。ただ、ミニコも仲間を守る技があるよな」
「あるね」
「つまり、敵からの攻撃を受けやすい」
僕らのターンだったはずなのに、なんで敵の攻撃が? カウンター系の技ってことか?
それより、ど、どうしよう?
僕ら、全滅しないよね?
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