一章 四天王の館?

第1話 真夜中の召集



 事の始まりから、くわしく語ろう。

 ついでに、うちの美形ばっかり(男ばっかりとも言う)集まったパーティーメンバーも紹介していこう。


 メンバーその一は僕ね。だって、主役だから。勇者はロランだけど、僕が主役! 東堂薫。あだなは、かーくん。リアルではアパレルショップの店員だ。子どものころから、女の子みたいと言われ続けてきた可愛い属性。


 兄の猛はこっちの世界では、背中に黒い羽のある竜人。現実でもこっちでも長身のイケメン属性。ただし、ぶっちぎりのブラコン要注意!


 で、勇者は問題のロラン。現実世界では兄と同い年の僕らの同居人兼友人の蘭さんなんだけど、こっちでは十七歳の美少年。

 でもさ。ロランは現実での記憶がないみたいだから、蘭さんが召喚されてるわけではないみたいだ。顔はそっくりなんだけどねぇ。


 で、今、この事件の冒頭は、ボイクド城の会議室から始まる。


「急な召集に応じてくれて礼を言う」と言ったのは、ワレスさん。

 ボイクド城近衛隊の隊長であり、武闘大会三年連続優勝して殿堂入りした人類最強の男。

 だからと言って、ゴッツイ大男だと思った? 思ったよね? チッチッ。それが違うんだな。


 ワレスさんは金髪碧眼、細身の中性的美青年だ! 人類一強いくせに、人類一の麗しさをロランと競ってる。まあ、ロランよりは男っぽいんだけど。

 アレだよ。少女マンガの王子様。文句なく理想の美形。性格は知的で洞察力にすぐれ、クール。僕の憧れの英雄だ。


 わあわあ。夜中に見るワレスさんもカッコイイなぁ。燭台の光にきらめく金髪巻毛が華やかだぁ。


「深夜だぞ。熟睡してたのに」

 猛がアクビしながらブツブツ言う。


「兄ちゃん。たらふく肉食って、まっさきに寝てたよね?」

「朝まで快眠したいんだよ。夜中に起きたら腹が減るだろ」

「猛、どんだけ燃費悪いんだよ!」


 ハッ! 真夜中なのに、憧れの英雄の前でじゃれてしまった。ついクセで。猛がなんか言うと反射的に言い返したい病にかかってる。


 ワレスさんはクスクス笑いながら、

「すまないな。だが、四天王がひそんでいるというウワサの館があり、一個小隊が偵察に行ったきり、帰ってこない」

 その表情とは裏腹な深刻な内容を告げる。


「えっ? それ、マズイんじゃないですか?」

「全滅の可能性がある」

「すぐ助けに行かないと!」

「だから、おまえたちを呼びだした」

「まあ、そうですね」


 ムダにさわいで話をややこしくしてるのは僕(と猛)だった! てへっ。かーくん。はずかしいぞっ。


「ほんに四天王だったら、わやつだけじゃ危なくないですか?」


 あっ、急に僕が訛ったと思わないでほしい。これはアンドーくんだ。現実の安藤くんは奥出雲の松潤と呼ばれているイケメンだ。実家の農業を継いだ心優しい青年。こっちではミルキー城の兵士だったんだけど、今は僕らのパーティーメンバー。


「だから、こっちからも応援をつける。クルウは知ってるな?」


 ワレスさんが示したのは、彼の右腕で近衛隊副隊長のクルウ。まるでギリシャ彫刻みたいな美青年。長い黒髪をうしろで結んでる。生まれつきの家柄も騎士だけど、戦闘職業も騎士だ。おだやかに見えて腹黒ビューティー。


 そして、もう一人。いや、二人。


「ゴライとモッディだ」


 身長二メートルをゆうに超える巨人! と、ふつうサイズの人間だ。しかも、二人とも見おぼえがある。


「あっ、ゴライだー! ゴライパーティーのリーダー。反射カウンターだね!」


 民族衣装を着たムキムキマッチョの巨人は寡黙かもくにうなずいた。

 じつは数日前に今年の武闘大会が終わったばかりだ。今年の優勝パーティーはね。なんと、僕らだよ。かーくんパーティー。

 そのときの強敵だ。ゴライは自分にむけられたあらゆる攻撃を反射して、そのまま相手に返すっていう、ものすごい技を持ってる。ちなみに、その後の特訓で、今はその技、兄ちゃんも使えるんだけどね。


「あとは、ホルズとドータス。おれの部下二人をつける。人数は少ないが精鋭部隊だ。おまえたちで、その館のぬしを倒してほしい」


 というのが、ワレスさんからくだされた今回の任務だ。


「あれ? ワレスさんは来ないんですか?」

「城の守りも必要だからな。だが、手にあまると思えば、いつでも呼びだしてくれ。転移魔法でかけつける」


 残念。でも、しょうがないね。みんな留守にしてるうちに、魔王軍がお城に攻めてくる……なんてことも絶対にないわけじゃないし。

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