第145話 親失格
「ンで、そこんとこはどうなんだ?」
「えっと、アザレア園の買収が……」
「あァ!?」
戦闘モードのスイッチが入っている
まあ俺とお揃いの作業着を着ている辺りから、色々と察して欲しいわけだが。
「どうして今になって、自分で捨てたはずの娘を求める?」
「そ、それは……」
「いつからこの悪徳ビジネスを始めたのかは知らんが、本当に社長なら風破の行方を追うこと自体は容易だったはず。つまりお前は娘が有名になるまで見向きもしなかったわけだ。しかも風破は、お前の下に付いている連中とは対極に位置するはずだが?」
当の俺は床に突き刺さった剣を右手で引き抜き、左手には“
奴の顔面に突き付けながら、尋問を開始した。
「まあなんにせよ、お前に拒否権はない。キリキリと吐いて貰おうか」
「ひィ!?」
虚言や苦し紛れの捨て台詞を言おうものなら、即座に蒼穹の火砲を放つ。そういう脅しだったわけだが、思った以上に効果
しかしこの怯え様、完全に素人だ。
やはりコイツはただの悪徳サラリーマン。
国に反逆する教主や魔導使いに立ち向かう戦士にはなり得ない。
「何がどうしてこうなったんだ? 風破については?」
「そ、それは……ひっ、ィ!?」
「拒否権はないと言ったはずだ」
「ま、魔導使いとの接点が欲しかったんだ! どうせ魔導を使えない連中が何人集まったって、化け物みたいな魔導騎士には勝てない。だから……!」
「暴徒化する信者を抑えられなくなった結果、適当なところで逃げようとしたわけか……」
根本親子との一件。
先日の集会での一幕。
相対した連中は、明らかに正気を失っていた。
つまりこの事態は、名前貸しだけのお山の大将が制御出来る領分を超え始めつつあるのだろう。そこで新しい
しかも風破とは血の繋がった親子関係である以上、親である奴の方が絶対的に有利な立場にある。法律を盾にして風破を逃がさないことは可能だし、実質的な人質代わりにアザレア園を抑えれば尚更効果が増す。
そのまま風破を
後は優良経営者を演じながら孤児の相手をして、高給取りになる風破に食わせて貰えばいい。それにアザレア園の良質な環境ならば、風破以外にも同じような施設出身の支援者も出て来るはず。
奇しくも、風破本人がその前例になるわけだしな。
少なくとも、いつ逮捕されるか分からない立場より、遥かにマシな生活を送れることは確かだろう。
「全部投げ捨ててガキに寄生するなんざ、大人のすることじゃねぇなァ!」
「……っ!?」
「ち、違っ!? そんな目で俺を見るなァ!!」
本来、子供を護るべきは親の方だ。だから親が子供の将来を食い潰すなんてことが、許されるはずはない。
風破に聞かせるには残酷すぎる真実だったかもしれないが、ここまで来て知らぬ存ぜぬでは本人も納得出来ないだろう。
元から行動力はある奴だし、年齢不相応と称せる程には
それこそ後で下手に動かれでもすれば、関わってはいけない
だからこそ、ある程度は納得の出来る答えが必要なだったはず。
でなければ、風破は一生父親の幻影に囚われたまま生きていくことになるのだから――。
「さあ、
「だ、誰って……!?」
「ここで再起不能になるか、後で酷い目に合わされるのか……それに比べたら
後の親子関係に関しては、当人たち次第。もう父親の方が
信者ビジネスについても然るべき場所で吐かせれば良いが、もう一つの
さっきまでのやり取りからしても、コイツに教主なんて大それたことが務まるはずがないのは明白。
それに信者洗脳の
百歩譲って前者はそういう洗脳スキルを持っていたのだとしても、後者に関しては説明が付かないのだから――。
現に上の工場だけで色んな手続きをしていたのなら、どう
当然、こんなどこにでもある企業が国から優遇されるわけもないし、
でも潜伏場所がこれだけ巧妙に隠されていた反面、風破への接触からアジトバレまでの流れは正直
下っ端の練度や警備体制を含めた何もかもが――。
であれば、答えは一つ。
前者は
専門家でもない俺が簡単にセキュリティーを
鬼が出るのも蛇が出るのも分かっている。
元凶とやらは一体――。
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