『剣翼ノ白騎士』~出来損ないだと馬鹿にされている俺が、神の名を冠する【魔導兵装】と共に【最強の魔導騎士】へと成り上がる。どうしてそんなに強いのかと言われても、普通に力を封印していただけですが?~
第124話 兆しと怒り【side:Everyone】
第124話 兆しと怒り【side:Everyone】
「このっ、邪魔だァァっ!!!!」
横からどつかれた陸夜は激昂。
悟郎の顔面をレイピアの柄で殴り、腹部に膝を叩き込む。
「ど、土守さ……っ!? げぶゥっっ!?」
鼻が曲がり、空中で気絶した悟郎は
教員に首根っこを掴まれながら救助される形での脱落となった。
だがキルスコア的にはともかく、悟郎の撃墜を陸夜の手柄だと思う人間はいないだろう。フィールド内外を含め、全員の視線が朔乃に向けられる。
「お、お前は……っ!?」
「へー、結構可愛いじゃん!」
「ひ……っ!?」
細身の少女に突き刺さる数多の視線。
その上、陸夜は鬼の形相であり、涼斗は当事者を観察するようにマジマジと見つめて来る。
実質的に格上を撃墜したが故の
朔乃は盾の持ち手をギュッと握りしめながら、必死に重圧に耐えることしか出来ないでいた。
「ふん、雑魚風情が僕の道を阻むなど……!」
「ぐっ……!」
直後、朔乃は突進して来た陸夜の
腐っても学年二位の
「おっと、そういうのは悪役のすることだぜ!」
「が、ぶ……っ!?」
フリーになっていた涼斗が横から蹴りを入れれば、陸夜の体が派手にすっ飛んでいく。
二度目の人身事故だ。
無論、今度は意図的なものではあることは言うまでもないが。
「いやー、こんな可愛いコと戦うなんてつれーな!」
「ふぇ……?」
「どうせ残り五人だし、さっさと終わって欲しいぜ!」
涼斗は見るからにテンパっている朔乃に対し、快活に笑いかける。
それは見事な好青年っぷり。
殺伐とした進路争奪バトルロイヤルにおいて、何とも場違いなやり取りを繰り広げていた。
「ぼ、僕を足蹴に……!? ふじゃけるなああぁぁっっ!!!!!!」
「おっと、危ねぇ!」
「きゃっ!?」
「へぶぅぅううっ!?」
涼斗は大盾に槍を押し当てながら横に飛ぶ。
当然、いきなり押されて驚く朔乃ではあるが、今彼女が立っていたところを二つの魔弾が駆けていく。
直後、すっかり背景と化していた内の一人が魔弾を受けて脱落。
まさかの四つ
だが残り人数が少なくなろうとも終了の合図は聞こえてこない。
否、本来ならもう終わっているところ、理事長直々の指令が下されたが故に今も試験が続いていると称するべきだろう。
理由は、当然――。
「許さんぞォっ!!」
「可愛い子ちゃんは、端っこでじっとしてな!」
「え……!?」
この場で朔乃の特異性を見極めたいという感情からだ。
尤も当の朔乃本人は、ぶつかり合う陸夜たちを呆然と見送っており、事態の変化に付いていけていないわけではあるが――。
「くそっ!? お前の
「そんな勝手なっ!」
だが次の瞬間、残っているもう一人が朔乃へと襲い掛かる。
それは陸夜のもう一人の取り巻きである
かつて烈火の代わりに対抗戦代表に選出され、空気と化していた男子生徒だ。
加えて、活躍出来なかったのは今回に関しても同様であり、陸夜の流れ弾で最後のアピールチャンス潰されて激昂。
貸出機の“陽炎”を駆り、朔乃を強襲する。
「“プロテクション”……!」
「そんな初級魔導……効くかよォ!」
朔乃は斬撃魔導を魔力障壁で受け止める。
Fクラスが相手とあって正面突破しようとする武緒だったが、それは最悪手でしかない。
「そうだね、だって攻撃してないもんっ!」
「何っ!?」
“
結果、迫り出した左右部位が
それは宛ら、障壁の牢獄。
「えいっ!」
「のおおおぉぉっ!?!?」
朔乃は大盾を振り上げ、スパークする障壁牢獄を投げ飛ばす。
ただ流石にこの辺りは練度不足だったのか、投げ飛ばした武緒は明後日の方向へと吹き飛んでしまい――。
「田舎者が僕と互角なんて……!?」
「ひっぅううッ!?!?」
「ぐぁああっ!?」
またも戦闘中の陸夜に横から突っ込んでしまい、盛大な人身事故を引き起こすことになる。
「く、ふっ……!」
本日二回目の間抜けな事故を目の前で見せつけられたとあって、涼斗は空中で腹を抱えて爆笑してしまう。
一歩間違えばコントにしか見えない上、本人たちにその意図がないことを理解しているのだから、尚更自然な反応だろう。
陸夜が瞬間湯沸かし器と化し、顔を真っ赤にしながら激昂するところまで含めて。
「ふ、ふっ……ふざけるなぁぁああ!!!! 僕を笑いものにしやがってぇぇっ!!!!!!」
二度の屈辱。
陸夜は再び己を含めて一〇の魔弾と化し、身を固くしている朔乃へと迫る。
だがいくら人生がかかった戦いとはいえ、学年二位の
「や、やべっ!?」
現に朔乃は、初見の涼斗から見ても戦い慣れていないことは明白。
もし学園の試験を利用した八つ当たりとも称せる過剰攻撃が直撃すれば、それこそ命の危険すら――。
「何でもいいから逃げろっ!! 早くッ!!!!」
脳裏を過る最悪の光景。
慌てて陸夜の後を追う涼斗だが、状況的に一手遅くなってしまうのは当然のこと。既に突貫している陸夜に追いつけるわけがない。
その直後、涼斗の悲鳴のような叫びがアリーナ中に響き渡った。
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