第102話 限界を超えた力
極光が弾ける。
そこに在るのは、装いを新たにした俺たちの姿。
「“アイオーン”……“セレスティアモード”……」
この身を包むのは、より洗練された白亜の戦闘装束。
更にさっきまでよりも、鋭角なシルエットを描く“フォートレス・フリューゲル”。
それに伴い、“
これこそが魔導騎士の切り札にして、“アイオーン”の
「“極龍形態”……これこそ、我が究極の姿……!」
一方のソルも装飾が増した戦闘装束を纏っており、左腕の“ディスペアー・ドラゴニア”もクロー部分が一回り巨大化していた。
加えて右手に携えられた“
一目ではっきり分かる。尋常ではない出力だ。
「よもや、
「それはお互い様だ。まあこっちは、
対峙するのは、魔導騎士と
奇しくも限界を超えた俺たちの出で立ちは、あまりに似通ったものだった。
互いに剣を携える、その姿さえも――。
だが――。
「最早、語ることもあるまい」
「そうだな。今は……」
瞬間、
当然と言うべきか、その破壊力もさっきまでとは別次元。
現に剣戟の余波だけで、周囲の空間が悲鳴を上げているのだから――。
「唸れッ!」
弾かれるように距離を取った直後、ソルの龍が胎動する。
しかし同じ伸縮強襲であっても、武装全体から紅蓮の
並の魔導騎士なら、掠るどころか余波だけで消し飛んでしまいそうな程だが――。
「この“セレスティアモード”なら――ッ!」
煌翼から蒼穹の
新たな境地を経たことで、その加速が極限まで高まっている。
「力が昂るぞ……ッ!!」
「俺は、前に進み続ける……!」
龍頭が空を切って通過した瞬間、即座に放たれていた紅蓮と蒼穹の斬撃が激突する。
結果、もう何度目か分からない相殺劇と相成った。
だがその反面、お互いが自身の――そして相手の力に慣れていくかのように、一合ごとに破壊力が確実に増していく。
まるで互いの殺気で、己の刃が研ぎ澄まされるかのように――。
龍頭と翼撃。
砲撃と剣群。
掌底と足刀。
剣戟と剣戟。
刹那の攻防の果て、必殺の応酬は新たな次元に到達しつつあった。
「やはり俺の目に狂いはなかった! 貴様は我が好敵手たるに相応しいッ!!」
「その前に色々話を聞かせて貰いたいわけだが!」
「ふっ、口ぶりの割には、悪くなさげな
「どう、かな!!」
それと同時、戦いを繰り広げる俺は、ソルの言葉を否定出来ないでいた。
一発の魔導に己の死力全てを乗せて打ち合わなければ、一瞬の内に消し飛ばされる。
極限まで研ぎ澄まされた感覚は、俺から限界という認識を奪い去っていく。
そんな最中、戦うと同時に魔導を使っていてこんな気分になるのは、一体いつ以来だっただろうか――と、奇妙な感情の奔流に襲われていた。
あの雷鳴の日、“異形の巨竜”との戦いの果てに俺は全てを失った。
世界は濁り、今も真実を求めて
そうして日々を過ごす中、両親に憧れて覚えた魔導はいつの間にか戦うための手段でしかなくなっていた。
襲って来る
真実の前に立ちはだかる全てを斬り裂く。
雪那や零華さんを護る。
俺の魔導は、そのためにある。
だから他人からの評価はどうでもいい。
俺は俺の思うままに前に進む。
例えFクラスと呼ばれようが、それで良いと思っていた。
だが幼い頃に感じていた魔導への想いや憧れ。
これまで
命を奪い合う戦場に在りながら、俺が全ての
少なくとも、今この瞬間は――。
「はあああああ――ッッ!!!!!!」
何度も剣戟を交錯させ、二律背反の様に蒼紅の軌跡を残しながら、天頂へと駆け上がっていく。
他の誰も追いつけないほど高く、他の誰も追いつけないほど
「――ッ!」
そして遥か天空に達した後――。
一瞬の静寂を経て、互いに切っ先を向け合う。
「
「ああ……終わりにしよう」
次が最後の一撃。
限界を超えた力で斬り結んだこの戦いも、いよいよ決着の時を迎えようとしている。
「天地開闢――」
青龍刀に灯った紅蓮が爆発し、左腕の龍口が開く。
「舞え、黒炎――」
白亜の双刃に漆黒の炎を纏わせる。
暴発寸前の“
瞬間――。
「“龍皇蹂躙撃裂破”――ッッ!!!!」
紅蓮の極斬撃が撃ち放たれ、射出された左の龍が斬撃を押し出すように砲撃を吐きながら追従する。
「“ロストリベリオン”――ッ!!」
黒炎の極斬撃を十字に重ね、一気に飛翔させる。
その直後、周囲の空間を引き裂かんばかりの爆轟が俺たちの天空を包み込んだ。
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