第101話 龍皇咆哮
「とんでもない援軍が来たものですな」
「クルスか……」
ソルの乱入を受け、戦場は一時
互いの特記戦力と目される者たちが、並ぶように向かい合うことになった。
直後、敵の指揮官と思われる“
「ソル殿はミツルギ侵攻部隊に編成されていないはずでしたが?」
「ふん、俺には関係ない。それより下らん戦場に俺を担ぎ出した罪を
「全く……食えないお方だ」
まるで別の場所も攻めて来たかのような口ぶり。
俺たちが困惑に固まる傍ら、ソルは愉し気に笑い、敵の指揮官はそんな奴を見て肩を竦めている。
「ソォォルッ!! 貴様ぁぁぁ!!!!」
そんな最中、ソルによってアリーナの地表に叩きつけられた“
結果的に助けられた形になったとはいえ、意図的な
それも双方好戦的だけあって、尚更反りが合わないようだ。
「敗者必滅。貴様は下で雑魚と遊んでいろ」
現に当のソルは下方を一瞥することもなく、呆気からんと言い放った。
あくまで仲間を助けたのではなく、本当にさっきの奴が邪魔だっただけ。態度の節々から、人を見下すオーラが
そしてソルが見据えているのは――。
「――来い、天月烈火」
熱烈ご指名――といったところか。
「烈火……」
「ソル……」
雪那と小柄な“
追従する者はおらず、メインアリーナの遥か上空は、誰の手が及ぶこともない
「この時を待ちわびていたぞ」
「それは迷惑な話だな」
「ふっ、この俺を前にそんな口が叩けるのは、貴様くらいのものだ」
凶悪な殺気。
流麗な剣気。
次第に戦域の緊張が高まっていき――。
「闘いの
「――ッ!!」
剣戟が交錯し、天空で蒼と紅の魔力が弾ける。
先ほどまでとは、比にならない圧力。
破壊の奔流が周囲を駆け巡る。
「ほう、この“
「こんな所でやられるわけにはいかないんでな!」
俺の“
「それでこそ……!」
激烈轟閃。
ソルの力強い剣戟が繰り出される。
「させるか……!」
流撃双閃。
二刀を以て捌き切る。
ファーストコンタクトは互角――と、距離を取る。
だがその直後、共に得物を振り上げて刀身に魔力を纏わせた。
「“龍皇崩斬撃”――!!!!」
「“エクシードフィアーズ”――!!」
紅蓮と蒼穹の斬撃が激突。
戦場の空に爆炎の華を咲かせる。
激突の余波は、俺たちを
「これほどの使い手はそうはいまい! 精々、我が“神龍器”――“ゼリオン”を愉しませてみせよっ!」
「何を……っ!?」
「“ディスペアー・ドラゴニア”……貴様の翼と同じだ!」
凶悪な笑みを浮かべたソルは、先ほど味方を吹き飛ばした左腕の武装――龍の頭を模した特殊兵装を撃ち出して来る。
“ディスペアー・ドラゴニア”。
俺のフリューゲルと同様、有機的と機械的の間を取ったような出で立ちをした武装は、斬撃の余波を裂きながら紅蓮の躯体を躍動させる。
「この武装特性は……!?」
「唸れ!」
対する俺が煌翼を翻して回避行動を取ったことは言うまでもないが、奴の龍は
「それに
思わぬ一撃ではあったが、再びフリューゲルの機動力で強引に砲撃を回避。
しかし
角度も距離も自由自在。
紅蓮の砲撃を照射しながら宙を舞うそれは、正しく火を吐く龍。
まあ威力も速度も実際の大型竜種に比肩するどころか、それを遥かに上回っているが――。
「回避は無意味、なら……!」
――テスタメント・レイ。
再び武器を換装し、ソルの紅蓮に蒼穹をぶつけて相殺。
反撃の機会を見計らう――。
「その程度、効かん――ッ!」
だが当の龍頭は、尚も爆炎の中を突っ切って来る。
どうやらこの武器の本懐は、砲門を備えた打突武装。
本来の用途が近接用とあって、耐久性は折り紙付きであるようだ。
でも爆炎を裂く影は一つじゃない。
「ここならッ!!」
「ちぃ、っ!?」
煌翼の
瞬間、剣を手に空を翔け――。
「今のは、
そう、砲撃同士の衝突は目くらまし。
本命は“フォートレス・フリューゲル”による高速機動を以て、ソルの左下――左腕の武装を伸ばすために腕を突き出している関係上、どうしても生じる死角からの奇襲攻撃。
「斬り裂け――」
「舐めるなァァ!!」
互いの剣に魔力が渦巻く。
――“エクシードフィアーズ”。
――“龍皇崩斬撃”。
再びの猛烈な斬撃激突と相成った。
「この体勢なら――!!」
だとしても、奴からすれば半ば無理やり身体を捻っての迎撃。
片手で柄を支えるソルに対し、俺はフリューゲルの推進力と双剣で押していく。
このままなら二刀を以て斬り裂けるが――。
「この程度! 龍皇の前には無力!」
蒼穹が押し勝とうとした時、背後から紅蓮の竜が飛来する。
俺を素通りしていた“ディスペアー・ドラゴニア”が軌道を変えて戻って来ているわけだ。
「ちっ……!?」
対する俺は、“フォートレス・フリューゲル”の推進力を前方ではなく下方に回すことで、急浮上。
「いいぞ、天月烈火ッ! もっと俺を愉しませろ!!」
「“神龍器”とはなんだ!? 何故、俺たちはお前たちと戦っている!?」
「はっ、そんなこと――! 知りたいのなら力づくで口を割らせてみろ!!」
再び、剣戟の応酬――。
「まあ徒労に終わるだろう! 何故なら、俺は無敵だからな!!」
「何とかするさ。俺にも闘う理由が出来た!」
更に俺の回転足刀蹴りとソルの掌底が激突するが、またも威力が相殺して互いに弾かれ合う。
「この俺が、捕らえきれないとは……」
「今のままでは、押し切れない……か」
現状、火力はソルの側、機動力は俺に分がある。
だが双方ともに、戦局を左右するほどの優劣はついていない。
つまり互いに決め手となる大技を放つ隙が無く、どちらかが集中を切らすまで延々と斬り結び続けることは必至――。
「よもやこんな所で……使わざるを得ないとはな」
「調整不足は百も承知だが……」
突破口がないのなら、無理やりにでも作り出すしかない。
奇しくも、
「“極点禁呪”――」
「“オーバードライブ”――」
何が起こっているのかを理解する必要もない。
俺たちは、互いに自らの
「解放ッ!!」
「イグニッション!」
瞬間、戦場の空を紅と蒼の魔力が染め上げた。
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