第31話 竜の墓標
――“フォートレス・フリューゲル”、展開解除。
戦いの終わりを告げるかのように、俺の背から巨大な煌翼が消えていく。
その直後、国を守る騎士たちが同じ高度に到達した。
「ほ、報告にあった学生か!? “
まあ“
「この空域の“
「“
「戦ったことは事実です。倒したわけではありませんが……」
“
対して俺は、
だからこそ、そんな学生が“
とはいえ、この人たちは、さっきまで展開していた大出力の翼を見ていたはず。
結果、必要以上のパニックを起こされなかったのは、不幸中の幸いだった。
主に説明的な意味で――。
「と、ともかく分かった。では我々は、巨大竜種を……」
そして
その一方、俺は騎士団の移動を制した。
「い、いきなり何をするんだ!?」
当然、食って掛かかられるが、これも
なぜなら、既にあの場所は
この連中が
「これで
雪那は眼前の巨竜に“
当の巨大竜種は、身体の各所が凍り付き、右腕までも
しかし雪那の腕前にも驚愕だが、巨大竜種も戦意は
その様から感じるのは、恐怖よりも誇り高さへの
だが――。
「我が元に集え、氷絶零度……」
凛とした声が響き、
それと同時、戦場の空が凄まじい冷気に包まれる。
「■■――■■■■――!!!!」
異変を感じた巨竜は
「凍てつけッ! “グラキエスコフィン”――!!」
魔力変換・“氷”が付与された“
それは一定範囲内の物質を凍り付かせる魔導術式。
荒れ狂っていた“グロリアスドラゴン”を氷の中へと閉じ込め、物言わぬ
――“
巨大な
そして飛翔能力を失った巨竜は、儚く地へと墜ちていく。
だが巨大質量の落下を受け、下の騎士団はパニック状態。
無論、それも計算済みであり――。
「……」
血振りをするかのように、
直後、巨大な氷塊は結晶となって砕け散った。
「う、そ……だろ!?」
「あっちのガキも、こっちの嬢ちゃんも……! もう滅茶苦茶過ぎて驚く気も起らねぇ……」
雪那の勝利。
俺以外の誰もが大口を開けてしまっているようだ。
「お疲れ、怪我はなさそうだな」
「ああ、それよりも烈火こそ大丈夫……というか、あんな爆発に巻き込まれたのだから、怪我がない方がおかしい。一体、どうやって助かったのだ!?」
「いっぺんに聞くなよ。まあ斬撃魔導の一点集中で強引に脱出。攻撃と爆風は、フリューゲルを盾にして防いだ。その結果、無傷ってわけだ」
“フォートレス・フリューゲル”。
それは“アイオーン”の固有武装の一つ。
能力は俺の制御を受けて、三対六枚の巨翼がリアルタイムに稼働。空中戦における推進力と姿勢制御性を高めながらも、機動力を爆発的に向上させるというもの。
加えて、煌翼自体が
正しく、攻防一体の統合武装。
そして今回は翼で全身を
「ふむ、“
一方の雪那は、
まあ普通に考えれば、肉片一直線コースだったわけで、逆の立場なら俺も同じ反応をしたはず。
だからこそ、俺も気が抜けてしまったのだろう。不意に要らんことを言ってしまった。
「それはお互い様だ。まだ調整不足の奥の手だったけど、上手くいって良かった」
「は……調整中? そういえば、この間の決闘騒ぎでは見られなかった武装だが……」
感動の再会から一転、ジト目の雪那に詰め寄られる。
大変美しいお顔で視界が
続きを話せ――と、鋭い眼光が語っている。
「元々試作機の“アイオーン”は、完成した機体じゃない。それに急に使うことになったから決闘騒ぎの時は、基礎武装だけでとりあえず戦える状態にしただけ……」
「なるほど、つまり今も調整を続けていて、武装も追加されていると?」
「ああ、だからようやくこの機体を象徴する主兵装を積めたわけだが……」
「あれだけ特徴的で複雑な武装なのだから、細かい調整は必須だろう。さっきまでの戦況を考えれば、力を出し惜しみしている場合ではないと理解もできる。とはいえ、調整不足が分かったまま、ぶっつけ本番で大暴れしたということか!? 何という無茶を……!?」
終わり良ければ
だが最悪の場合、あの高度で“アイオーン”が強制解除され、戦闘不能という事態になってもおかしくなかった。
つまり俺は、“
もし雪那が同じことをしていたら卒倒する自信があるし、今回ばかりはお叱りの言葉を受け入れよう。
「まあ不可抗力だし、俺はこうして無事だ。そんなに心配してくれなくても大丈夫だぞ」
「べ、別に烈火の心配などしていない! 私は、ただ……!」
雪那の白い頬が紅く染まる。
ただ今度の睨みつけは、何も怖くない。
俺が守った日常。
その
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