第19話 滅びゆく世界
「ここが君の?」
「うん。“アザレア園”……私の家だよ」
俺たちの目の前にあるのは、“アザレア園”という
その向こう側には、いわゆる“小学校”を二回り小さくしたような建造物が立っている。
このアザレア園は、クオン皇国における
実際、白いブロック
とはいえ、ここに着くまでに説明を聞いていたおかげで、彼女の境遇自体にそれほど驚きはない。
大前提として、周囲から勘違いされない公共施設でなければ、初対面の女子の家まで同行するはずもないしな。
「ごめん、わざわざ来てもらったのに、大したおもてなしも……」
「いや、構わない。お互いに好都合だろうしな」
とはいえ、施設内では気が引ける内容であるらしく、園から少し離れたところで彼女の話を聞くことになった。
俺としても見知らぬ家に入るより気が楽だし、断る理由もない。
まあそれならどうして俺を連れて来たのか――という話にもなるが、初対面の相手を自分の弱み――プライベートスペースに招き入れることで、誠意を見せようとした結果なのだろう。
それに風破は自分がどう見られているのか分かっているタイプだろうし、付きまといや個人情報の
「――で、結局のところ、俺に何を聞きたいんだ?」
「じゃあ、前置きなしで……。私は君がどうやって
「
「あ、うん……。勿論、さっきの先輩たちみたいに
またそれか――という、感情がないわけじゃない。
だが姿勢を正した風破は、真剣みを帯びた表情を浮かべている。冗談で返している場合ではなさそうだ。
「天月君から見て
「俺はこういう施設に縁がないから、何とも言えないが……。少なくても子供たちにとって良い環境に見える……と思うが?」
「そっか……そう思って貰えたなら私も嬉しい。でも、もうすぐ無くなっちゃうかもしれないんだ」
思わず疑問符が浮かんだ。
確かに施設にはそれなりに年季が入っているようにも見えるが、別に問題があるようには思えない。
風破の態度やさっきまでの子供たちの様子からして、悪徳施設とかでもないはず。
それなのに――。
「資金不足だよ。国からの運営支援が打ち切られそうなんだ。最近の情勢を受けてね」
だが風破の答えで全てが
「天月君も知ってると思うけど、この国は……いや世界中は、“
「なるほど、身寄りのない子供たちへの手当てが打ち切られようとしているわけか。孤児を助ける余裕もないし、逆に足手まといでしかないから」
「そういうこと、だね。それに……もしそうなったら、次は園長が個人で経営しないといけなくなる。ここは身寄りのいない子供しかいないから、利益なんて出せるはずもない。だから……!」
「どうあっても閉園せざるを得ない。風破のように自立できる年齢ならともかく、幼い子供たちの行く先がなくなるわけか。でも苦しいのはどこも同じだ。良ければ
子供たちに魔導の才能があれば、何人か引き抜かれるかもしれないが、大多数は孤児一直線。
それに親が子を捨てる理由は多々あるものの、現在進行形で社会問題となっているのは、魔導適性が低いと分かってから捨てられる子供たちのこと。
むしろこうして学園のエリートになった風破は、例外中の例外であるということだ。
であれば、あの子たちがどちらに
着の身着のまま放り出されるのか。
その先で悲惨な目に合うのか。
ともかく子供たちに待つのは、暗い闇の未来でしかないのだろう。
「でも一つだけ、支援が打ち切られても存続できるかもしれない方法があるんだ」
だが当の風破は手を固く握り、鬼気迫る面持ちで俺を
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