『続 お月様とお饅頭』
やましん(テンパー)
『続 お月様とお饅頭』
ウサギさんの運転手さんは、ぐんぐんと高度を上げ、地球の大気圏から飛び出しました。
地球人は、まだ、このあたりで、うろうろしておりますが、月のタクシーには、なんら問題がありません。
そんな凄い技術を持った、月の文明ですが、最近は、もっぱら、水と、エネルギー不足に悩んでおりました。
月には、裏側に大量のお水が蓄えてあったのですが、使いすぎで、もはや、足りなくなりました。
また、核融合に使う物質、ヘリウム3、が月にはたくさんあります。
それを使って、エネルギーを作ってきましたが、着々と力を着けてきた一部の地球人が、いまや、それを狙って横取りしようとしておりました。
月の王さまは、ここしばらく、平和路線を保ってきました。
武器などは、あまり、作らなかったのです。
むかし、かぐや姫戦争や、その前にあった、地球を巻き込んだ、月の王さまとお妃さまの夫婦げんか戦争とかの時代には、地球の科学は、月には遥かに及びませんでしたが、当時の地球人は、魔術を使いました。また、月出身のヒミコさまとか、うさぎさんこと、王さまの娘さんや、その家来の亀さん、北欧の英雄さん、などが活躍した結果、大事になる前に、戦争は、なんとか終結しました。
この運転手さんは、じつは、そのうさぎさんの、隠れた子孫なのでした。
しかし、このところ、100年は、地球人が大量の武器を作り、核兵器も山ほど製造しましたし、月に届くロケットも、すでに持っているため、もし、戦争になったら、必ず月が勝つとは言えなくなってきました。
なにしろ、地球は、でかいのです。
それで、最近は、月の政府は、地球の一部の指導者と協定を結び、技術提供の代価として、資源の供給をしてもらっております。
ただし、月に文明があることについては、絶対に秘密にする約束でした。
でも、新規に、ある国が、探査機を月に送る度に、新しい協定が必要になり、ますます、話しは複雑になってきておりましたし、地球人は、さらに生意気になりましたのです。
間もなく、一般人の月旅行が始まるでしょう。
『おしのびですかい。ひーさま。』
黒い影の3人は、被っていた隠れマントを脱ぎました。
隠れマントは、太陽光では、まったく反射しないので、姿が隠れますが、月の光には、少量の特殊な物質の波長がまじるため、影のように見えるのです。
ひいさま、と呼ばれたのは、かつての、うさぎさんで、現在の月の女王さまの娘さん、つまり、現王女さまだったのです。
かなり、活発で、気の強い王女さまで、そこは、母親譲りです。
『あなたは、みな、お見通しか。むかし、お母さんが、地球のあちこちに、探査装置を埋めたんだけど、あそこは、海辺だったのよ。その後、川になった。戦争があった。空襲もあった。最近、なぜだか、あそこから、データが来なくなった。お母さんから頼まれて、調べに来た。それだけ。』
『そうすか。』
うさぎさんの運転手さんは、それだけ言っただけでした。
『クーポン券は、渡した?』
『へえ。一般人は、これが、初めてでやんした。まずかったすか? なんせ、スターシップ焼きを、もらったもんで。ひいさま、食べますかい。』
すると、御付きのたぬきさんが言います。
『お姫さま、そうしたものは、食べない方が………』
『あなた、スターシップ焼き、食べたことないの?』
『ございませんが。』
『それは、いけません。地球の情報収集に、食べ物を欠かしてはなりません。地球人は、たしかに、やんちゃで、自分の土地に執着し、取り合いもしますし、今回も、母上は、核戦争にならないか、心配しています。あたくしの役目には、その偵察もありました。でもね、地球の食べ物は、なかなか、美味しいのです。話し合いには、必ず、食事会がセットになりますし、お酒も出るのです。それがなくては、仲良くはなりません。さあ、喜んで、いただきましょう。』
『へい。5つもらったんで、みっつ、どうぞ。』
運転手さんは、お饅頭を包んだラップを、ひいさまに、渡しました。
すると、ひいさまは、御付きのたぬきさんと、きつねさんに分けましたあと、すぐに、食べました。
『なんという、美味。ほら、あなたがた、頂きなさい。こんなものをつくる地球人を、滅ぼしてはなりません。おかあさまが、仕掛けたあの探査機械は、実は、いざというときには、2グラムの反物質爆弾にもなります。ただし、いまは、もう、たくさんは、作れないのです。もし、全部爆発したら、地球人は、大きな痛手を負うでしょう。今回、不調の一個を、取り替えましたが、やはり、使えない爆弾です。あんなもの、食べても、おいしくありませんから。一個を母上にさしあげても、良いでしょうか?』
『へえ。平和のためなら。』
運転手さんは、言いました。
しかし、地球人は、このような、月人の好意を、良く理解しているとは、言い難いのでした。
🌃
『続 お月様とお饅頭』 やましん(テンパー) @yamashin-2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます