迷宮の真実




「皆様?! たった一日で踏破なされたのですか?!」

 王室の使者が戻ってきたルナティックとリヴンを出迎える。

「あーそういえば……」

「迷宮の中の時間では五日ほどかかりました」

「あーあ、ライラがもっと早く来てくれれば俺の五年……いや、一年は……」

 リヴンはふてくされたように言う。

「仕方ないじゃないですか! もう」

「取りあえず、レイジ陛下にも会わせて下さい」

「え?!」

「この迷宮は王室が関与していると思います」

「?! わ、わかりました」

 皆馬車に乗り込み、王都へと向かった。





「手紙一通しか持ち帰らぬとは……」

「まぁまぁ、中身を見れば理由が分かりますよ」

 王室の偉い人々と国王に、リヴンは平然と言った。

 ルナティックメンバーはほとんどがカチカチと凍り付いていた。

 リヴンが手紙を開けると、映像が出た。


『この手紙を手に取り、その上で宝を一つも取らなかった者へ感謝を。私はストレア国国王、リーザス』


「お、御祖父様?!」

 国王陛下が目を丸くする。


『妻の亡骸を迷宮に放置したのには訳がある、妻を亡くした私は妻が永遠に眠ったままで居て欲しいと願い防腐魔術をかけた、当時は禁忌の。それを隠すために迷宮を魔術師と案内人に作らせた』


「やっぱりか」

 リヴンが当たっていた事に頷く。


『宝は生前彼女に私はプレゼントしたものだ、だから宝を取ると呪われるように仕込んでおいた』


『常闇の迷宮は妻の墓碑だ、願うなら誰も入らせないで欲しい』


『夜が好きだった彼女への私からの手向けなのだ』


 映像が消えると、国王は息を吐いた。

「……分かった、今後常闇の迷宮への立ち入りは禁止としよう」

「それが良いでしょう」

 リヴンが言う。

「……墓参りいけぬのが残念だが」

「それについてはもう一枚の紙が説明すると思いますよ」

 リヴンはもう一枚の紙を開いた。


『もし王族が墓参りをしたいのなら、それを願って入るといい。彼女の場所へと行けるだろう』


『それと、宝を盗まなかった者に、王室から褒美を出すがいい。既に用意している』


『宝物庫の一番奥の青い宝箱だ』


『くれぐれも、渡さないなどケチな事はするなよ』


『そんなケチな王族は呪うからな』


「御祖父様、圧が強いです!」

 国王は声を上げる。

「今すぐ取ってくるのだ!」

「は!」


 しばらくすると青い少し古びた宝箱を持ってきた。

「こ、これかと!」

「御祖父様の刻印が付いている、よし、渡せ!」

「ライラ、君が受け取れ。その資格がある」

「え?」

「そうだな、ライラお前が受け取れ」

 コルヴォとリヴンに言われてライラは戸惑いながら宝箱を受け取った。

「迷宮の調査完了、感謝する」

「これは、私からだ受け取って欲しい」

 今度は国王からの報酬が渡された。

 金貨がみっちり入っている袋と、魔術アイテムの数々だった。

「師匠は……?」

「俺はいいわ、独断で入って仲間待たせまくってるし、いやもう新しく案内人とってるかな?」

「師匠……」

 寂しげなリヴンにライラはなんと言葉をかければいいのか分からなかった。

「取りあえずギルドに戻って報告するか」

「そうしましょう」

 全員城を後にし、ギルドへと向かった。





「「「「「リーヴーン?!?!?!」」」」」

「げ!?」

 待っていたのはリヴンの所属していたパーティ「ブレイブハート」だった。

「お前俺達を帰らせといて、自分は一人迷宮探索とかふざけてんのか?!」

「し、仕方ないじゃねぇか!! あの時フロアボス倒す方法無かったんだからよ!!」

「それなら、それを探しに行って出直せば良かったじゃない!!」

 一年間戻ってこなかったリヴンに非難の嵐。

「申し訳ない、うちの案内人を連れ戻して下さり……」

 ブレイブハートのリーダーらしき男性が、リヴンの頭を下げさせながら自分も頭を下げていた。

「いや、リヴンのおかげでこちらは対策がとれたのです、あまり責めないでください」

「というか、うちのライラちゃんがサンダーソードの連中にこき使われたので得たアイテムが決定打ってのが複雑よねぇ」

「「「「ライラ?!」」」」

 ライラはブレイブハートのメンバーに囲まれた。

「皆さんお久しぶりです」

「四年前、別のパーティに異動してからどうなってたか不安だったが、酷い目にあったみたいだな」

「今のパーティはどうだ?」

「はい、とても優しい方々で嬉しいです」

「そういえば、ライラちゃん。リーダーさんとお付き合いしてるって聞いたけど……」

「何ぃ?!」

 リヴンが顔を上げてライラの方を掴む。

「おい、いつの間に恋人なんてできてたんだお前?!」

「いえ、あの、その」

「何で俺に紹介しようと思わなかったの?!」

「だって師匠行方不明だったし……」

「しかも、相手はこの顔面筋肉痛野郎だと?!」

「コルヴォさんの悪口は言わないで!」

 ライラは持っていた木の板でリヴンの頭を叩いた。

「いで!!」

「こっちにも色々事情があるんですよ……」

「そうだな……ここではなんだ、別室──ギルド長も交えて話そう」

「おう」





「はー?! あのレザスにストーカーされたから恋人役をやってるぅ?!」

「あの噂のストーカー男ね……」

「じゃなきゃ、簡単に可愛い姪っ子をほいっと恋人認定しねぇよ嘘でも」

 ライラはコルヴォに背負われながら、頭に顎を乗せ、退屈そうに話を聞いていた。

 リヴンやブレイブハートのメンバーは額に青筋を浮かべていた。

「今は幽閉されてるけど、いずれ出てきたら嫌だなぁ」

「それはないから安心しろ」

 ライラの嫌そうな言葉をグレアが否定する。

「取りあえず、お前達が無事に戻ってほっとしているよ」

「有り難うございます、グレアさん」

「今日くらいは叔父さんでいいぜ」

「有り難う、叔父さん!」

「おう」

 グレアはにかっと笑った。





 リヴンはブレイブハートの案内人として仕事をすることが決定し、そして常闇の迷宮の謎解明と、踏破を祝して、宴が開かれた。





 宴の後、酔って帰ってきたメンバーを先に戻って宝箱の中身を見ていたライラが出迎える。

「お帰りなさい!!」

「すまん酔っ払いが二人も居る」

「わわわー! グレイ、僕の頭かじるのやめてー!」

「やめんかグレイ」

 コルヴォはグレイの頭を殴り昏倒させた。

「まだ飲み足りないぃ……」

「レイナ十分飲んだろう」

「レイナさん、水でしたらいくらでもどうぞ」

「ううー」

 レイナはのそのそと水場へ行き水を飲み干していった。


「それで、宝箱の中身は?」

「案内人が持っていた方がいいアイテムだけですね、後は……」

「月光花のペンダント?」

「ええ、皆さんの能力を上げるものですからもっておいて損はないかと」

「分かった全員に明日渡そう」

「はい」

 コルヴォの言葉に、ライラはにこりと微笑んで頷いた。






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