常闇の迷宮





「繋がってる空間がめちゃくちゃですね……」

「めちゃくちゃ?」

 ライラは眉をひそめた。

 それにグランが疑問の言葉を投げかける。

「そのままです、今は手を繋いだり縄で繋がってるから同じ場所に行けますが、そうでない場合、別の場所に飛ばされ続け、さまよう事になります……まぁ、入り口に戻りたいと思えばすぐ戻れる親切設計と、迷宮の奥へは簡単にはいけない心折設計でできてるのが腹立たしい」

 ライラはむすっとなっていった。

「どうやって行くんだ?」

「ちょっと待って下さい──」

 コルヴォの言葉に、ライラは集中するように目を閉じ耳を澄ませた。


 五分もしないうちに目をかっと見開き、しばらく呆然としていた。

 その後歯がゆいように唇を噛み、悔やむような目をした。


「ライラ?」

「安全第一で行きましょう。縄が切れたら困りますし」

「分かった」

 コルヴォはライラが何故そのような顔をしたのか理解できなかった。


 安全第一と言う事で、モンスターがいないエリアばかりライラは選んで進んだ。


 途中途中宝箱があり、宝箱を開けて中身を頂戴する事もあった。


 夜かどうかも分からないが、ライラは時計を見て休憩をしばしばいれた。


「ライラ、この迷宮はどうなってる?」

「時間の流れが外の世界の五倍になっています」

「え、てことは外の世界だと……」

「一日、ここではもう五日となっています」

「マジかよ……」

 ライラはそう言って、休憩を終わらせて立ち上がった。

「さぁ、行きましょう」

「了解した」

「分かったわ」

「了解っと」

「うん!」


 また、先の見えない迷宮を皆で歩き出す。


 しばらく歩くと、明るく開けた場所に倒れている人が見えた。


「師匠!」

 ライラが小走りで駆け出すと、皆も慌てて駆け出す。

「師匠、師匠!」

「……」

「そんな……」

「ライラ、よく見ろ、彼は寝てるだけだ」

「へ?」

 よくよく見ればその人物──男性は眠っているだけだった。

「師匠! 起きて下さい!!」

 ライラは怒鳴るように叫んで、男性の頬をつねった。

「いでででで!! な、なんだぁ? 一日間寝だめしてたのに」

「一日間寝だめって……どういう体してるのよ」

 レイナが呆れたように言う。


「ん? ライラ、ライラじゃないか?! どうしてここに?」

「王宮から常闇の迷宮の調査を頼まれたからです」

「おーそうかそうか」

「ライラ、彼は?」

「あ、私の師匠のリヴンです」

 ライラはそう紹介してから、リヴンに問いかけた。

「師匠! もしかしてこの空間は……」

「おうよ、ここだけ外と同じ時間が流れている、で次のフロアがこの迷宮のボスだ」

「「「「!!」」」」

「師匠、倒せなかったんですか?」

「この迷宮の調査に来た時点で、仲間がバラバラになるわトラブル連載だから俺だけのこって調査することにしたのが五年前だから、外だと一年前くらいになるわな」

「五年間調査してわかった事は?」

「何かで繋ぐなりして入らないとバラバラになる、位なんだよ」

「それライラちゃんすぐわかった事よ?」

「やっぱり俺隠居すっかなぁ」

 ライラの言葉にリヴンは天を仰いだ。

「だ、大丈夫ですよ、師匠!」

「そうかなぁ……」

「ところで、迷宮のボスは何だ?」

「エンシェントドラゴン」

「「「「は?!」」」」

 リヴンの言葉にライラ以外が反応する。

「いやいやいやいや!! 無理無理無理!! ドラゴンスレイヤーでも持ってなきゃむ──」

「レイナさん、私持ってますよ」

「「「「は?!?!」」」」

 ライラの言葉に再び他のメンバーが反応する。

 ライラは魔法袋から一本の剣を取り出した。

「……おい、ライラ、それ何処で手に入れた?」

 リヴンの目つきが変わる。

「……そのルナティックの前のサンダーソードに居た頃、事前調査で休みに一人で潜った時に……」

「はぁ?! サンダーソードの連中何してんだ?!」

 ライラの行動に信じられないと言わんばかりの声をリヴンはあげた。

「今は全員牢屋行きです」

「そうか、そんな事してやがったのか……くそ、殴りたかった。それはともかくライラ」

「はい」

「そのドラゴンスレイヤーならエンシェントドラゴンを倒せる」

「本当ですか?!」

「ああ、だがエンシェントドラゴンを倒せばお前等を呪ってくるだろう、アレは死骸だ」

「なら、秘策があります」

 ライラはそう言って魔法袋から羽を模したアクセサリーを取り出した。

「比翼女神の祝福!! そうか、それならいける!!」

「ここに居る全員分ありますので、行きましょう」

「俺もサポートするぜ」

「師匠のサポートかぁ、嬉しいです!!」

 ライラは純粋に嬉しそうにした。





 そして、最後のフロアにたどり着くと腐臭を漂わせる巨大なドラゴンがそこに居た。

「精霊よ、我らを守る盾となれ!!」

 レイナがそう言うと、精霊達が目の前に透明な盾を作る。

「これで炎も大丈夫なはずよ!」

「行けリーダー!」

「分かっている」


 コルヴォはドラゴンの炎の息を者ともせず進み、ドラゴンの核に向かって突撃した。


 それに剣を振り下ろし、真っ二つにする。


 ドラゴンはおぞましい声を上げて解けていった。


「よっしゃえーい!」

 ライラは聖水を周囲にばらまき、浄化していく。


「お宝はなさそうねぇ」

 レイナが残念そうに言う。

「安心しろ、あそこにある」

 ドラゴンの背後にあった祭壇に、ライラは近寄る。

「大丈夫です、罠も呪いもなさそうです!」

「しかし、どうしてエンシェントドラゴンがゾンビ化してたのだ?」

「それが分からないんだよ。五年間調査したけど分からず仕舞い」

「師匠、あのドラゴン人工的にやられたものです」

「は?!」

「ちょ、ちょっと待って、もしかして……」

「この迷宮を作った人が宝物を取られたくなくて置いたものだと思います」

「うっそだろ、この迷宮できたの百年以上前だぜ?! そんな器用な事──」

「魔術師と、案内人、二人が組めばできます」

 ライラはきっぱりと言い放った。

「……確かにそうだな、案を出すのは案内人、それを実現するのは魔術師……」

「ちょっとこっち来てー!!」

 宝物を漁っていたレイナが叫ぶ。

 ライラ達が駆けつけると、眠るように横たわる女性が居た。

「死んで居ますね。防腐魔術がかけられてるようです」

「……じゃあこの宝物は全部この人の為の者?」

「だろうな」

「……あれ? この人どこかで……」

 ライラが思い出そうとするので、レイナとコルヴォも思い出そうとする。

「あー!!」

 ライラが思い出したようだった。

「フレア王妃!! 二つ前の王様が愛したお妃様!! 病気で早死にしたって書いてました!」

「……そうだ、確かにフレア王妃だ」

「じゃあ、この迷宮は……」

「国王が作らせたってことになるだろうなぁ……」

「宝物は置いていきましょ、その上で全部話しておきましょう?」

「そうだな、只一つだけ持ち帰らせて貰うのは」

 リヴンは手紙を手に取った。

「これだな」

「じゃあ帰りましょう、師匠!」

「アンタラ、一つも持ち帰るんじゃないわよ」

「分かってるよ」

「勿論だよ」

 ルナティックのメンバーは手紙一通だけを持ち出して迷宮を後にした──






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