因果応報
太陽の塔から戻ってきた「ルナティック」の前に「サンダーソード」のリーダーアレスが現れた。
「よぉ、ライラ、元気そうじゃねぇか」
剣を片手に持っているのを見て即座にコルヴォが前に立ち他のメンバーもライラをかばうように武器を手にした。
「いいよなぁ、お前は。こんな奴らにかばわれて満足なんだろ、あ?」
「……何のようですか」
「こっちはテメェの所為で依頼は来ない、ダンジョンでも散々なんだよ!」
「──それは貴方達の責任で、私には関係ありません」
「んだと、調子に乗りやがって!!」
「そこ、何をしていやがる!!」
ギルド長のグレアが怒鳴り声を上げた。
「『サンダーソード』のリーダーが、不調の原因はライラの所為だとライラに危害を加えようとしてきました」
コルヴォが淡々と語る。
「ああ、そうだな。俺にもそうみえた。おい、どうなんだアレス?!」
「ぜ、全部その女が悪いんだ!! その女の所為で俺達は──」
「聞いたぞ、『ダンジョンを案内するしか無いお荷物』と言ったそうだな?」
グレアの目がアレスを射貫くように睨み付ける。
アレスは胸を押さえ、ガチガチと歯を鳴らし始めた。
「お荷物は貴様らの方だ馬鹿者!! 金輪際ライラとルナティックに関わるな、これはギルド長命令だ!! また、お前等のランクをSランクからEランクに格下げだ!」
「な、そ、そんな!?」
「貴様等の実力はライラがいてこそのものだ、ライラ無しの今はCランク相当だが、此度の行動でEランクまで格下げだ! 出直してこい!!」
ショックを受けてふらふらとどこかへと去るアレスを見送ると、グレアは武器をしまったコルヴォ達に近づいた。
「よくライラを守ってくれた」
グレアはそう言ってライラの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「グレア叔父さん、頭ぐしゃぐしゃー」
「おお、悪いな」
グレアはにっと笑った。
「「おじさん!?!?」」
グレイとグランが呼び名に驚いた様子を見せた。
「確か、噂ではギルド長の姪が凄腕ダンジョン案内人だと聞いていたが……ライラの事だったか、やはり」
「予想してたけど、似てないわね」
ライラと、グレアは似ていなかった。
「そりゃ、ライラは俺の弟の嫁さん似だからな! まぁ、両方とも病気で死んじまって、ライラを俺が引き取ったんだ」
「うん、叔父さんがいるギルドの役に立ちたくて何かできないかなって思ったの」
「で、天職屋に見せたところ、ダンジョン案内人が規格外で相性抜群だから、友人の同じくらいやべぇ奴に弟子入りさせてダンジョン案内人になったんだよな」
「半年で、師匠から『俺が教えることは何も無い』と言われました」
「だろうな」
「でしょうね」
グレアとライラのやりとりにコルヴォとレイナは納得したように頷いた。
「で、どうだ。俺の秘蔵の姪っ子は」
「有能すぎて前いたパーティ連中を絞めたい気分だ」
「同感ね、こんな可愛い子をお荷物扱いして。と言うか有能すぎてこっちがお荷物だわ」
「そ、そんなことありません!!」
「くっくっく、だろうよ。つーわけだ、大事にしてくれよな俺の姪っ子を」
「おーじーさーんー……もー」
ライラはむくれる。
「もっと早く気づいてれば良かったぜ、そしたら酷い扱い受けさせずに済んだのにな」
グレアは悔しそうに言いながらライラの頭を撫でる。
「いいんですよ、叔父さん。今はとても幸せですから」
「幸せか、そうか!」
「あの、ギルド長。Eランクまで降格って……」
「ああ、俺の姪っ子を散々いじめ抜いた罰だ。あと、俺が動くとライラが不利益なるからな、だから姪っ子ってことは他には内緒にしてくれよな」
「わかりました」
「はい、そうします」
「お、おお、わかったぜ」
「う、うん、分かったよ」
「そうか、んじゃな」
ギルド長がギルドへ戻っていくのを見ると、ライラは四人に頭を下げた。
「あの、叔父がギルド長だけども、今後も同じように接してくれると嬉しいです」
「勿論そのつもりだ、頼りにしているよ。ライラ」
「はい!」
拠点に戻り、ライラが寝入ったのを見計らってコルヴォの部屋で全員が話し合う。
「わかっているが、ライラはこのまま私達のパーティで案内人をやってもらう以上」
「ライラに怪我させたりしたらあのギルド長、激怒して俺等に不利にならないか」
「それはない」
「どうしてさ、コルヴォさん」
「あの子今まで一度も怪我をしたことないのよ」
「え?!」
「案内人は怪我をしないように常に守られている話だが、レイナがライラに事情を聞いたところ、守られなくても怪我はしたことはないと言ったそうだ」
「誇張表現かわからないけど、今の実力を見れば信じるしかないわね」
「それに、冒険者には怪我はつきものだ。ライラをひいきしない、いいな」
「わかったぜ」
「わかったけど……」
「何だ?」
「ライラ、僕らの世話も仕事にしてるからそこだけはどうにかしたいかなぁって……」
「……後で話して食事などは交代制にすると彼女に言おう」
「それでいいわね?」
「うん」
「では、話は終わりだ。あと、明日は予告したとおり休日だが、各自気を抜きすぎるな」
「「「了解!」」」
部屋から三人が出て行くと、コルヴォはふぅと息を吐いた。
「取りあえず、明日は休むか……」
棺桶に入り、蓋を閉じた。
「ふぁ……」
ライラは朝目を覚ます。
「休日だけど、朝ご飯の支度しないと……」
ライラはベッドから起き上がり、着替えて台所へと向かった。
台所で、ご飯の支度をしていると、後ろからぬっとコルヴォが姿を現した。
「手伝おうか?」
「わわ?!」
ライラは驚いて、腰を抜かした。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
「で、手伝おうか?」
「いいえ、皆さんのせっかくの休日ですし」
「それは君も同じだ。君と私達は仲間だ。頼り合うのは良いが、そうやって一人で何でもやろうとするのは良くない」
コルヴォの言葉にライラは戸惑う。
「君は前のパーティでも同じことをしていたんだろう、だがここではそれをする必要はないんだ」
「じゃ、じゃあ、手伝ってくれますか?」
「勿論だ」
その言葉に、ライラは嬉しそうに笑い包丁を手渡した。
ライラは豆をすりつぶし、汁を集めるとそれに、同じように擦ったジャガイモをいれて煮込んだ。
コルヴォは、野菜だけのサラダと、ベーコンとハムが混じったサラダの二種類を作っていた。
そうして二人は手分けして料理を作っていった。
「まさかリーダーの手作り……だと?」
目の前の料理に驚愕するグレイ。
「手伝っただけだ、次からはレイナも手伝ってくれ」
「うん、そうするわ。それにしても、まさかこんなスープが飲めるなんて思わなかったわ……」
「エルフは菜食だからねー、スープ作るのも大変だしね」
「そうね、有り難うライラちゃん」
「いいえ! 美味しそうに食べて頂けて何よりです!」
「ライラ、君も食べるといい」
「コルヴォさんは?」
「私はダンピールだからね」
コルヴォはそう言って食堂を後にした。
「ライラちゃん食べましょう」
「あ、はい!」
ライラも食事を取り始めた。
食事の最中、あーだこーだと話が始まり、ライラにも振られると、ライラは戸惑いながらも答えた。
和やかに、少々騒がしく話と食事は進んだ。
「──でね、叔父さん」
ギルド長のグレアの部屋でライラはルナティックのメンバーと一緒にダンジョンに行ったこと等を話した。
「楽しそうだな」
「うん!」
「それはよかった」
「ねぇ叔父さん」
「なんだライラ」
「私……ちゃんとやれてるかな?」
「やれてるから今のお前がいるんだろう」
グレアは呆れたように行ってわしゃわしゃとライラの髪を撫でた。
「きゃー」
ライラは嬉しそうに悲鳴を上げた。
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