第18話 王都が栄えすぎてる件

無事に到着しまいた、王都!!

うん、長かった。3日間は長いよね。

初日にあった子爵家のハルと一緒に王都へ到着したのはついさっき。ヒイラギがどうせ行く道は一緒だから護衛がてら一緒に行こうと言ったのが始まりでそのまま王都まで移動してきた。


そのせいと言ってはなんだが、気の修行ができなかったのが悔やまれる。けど、ハルも同じ魔法学校へ通うらしいから予め友達が作れたことには感謝しよう。


話は変わるが王都はすごい栄えてる。周りを見渡すと建物しかないし、人も祭りをやってるとしか思えないぐらい溢れかえっている。僕の住んでいた場所はよくいえばのどか、悪くいえば田舎だったためこんな栄えてるのは見たことない。


まず、入ってすぐ目に入るのは遠くに見えるお城。多分王族が暮らしているのだろう。近くには大きな教会があるし、周りは繁華街だ。早く探検したい。


「師匠は王都へ来たことあるらしいけど、これが普通なの?」

「ええ、これが普通ですね。常に人が溢れかえっていますし、それなりに強者も集まる素晴らしいところです。ご飯も美味しいですしね」


へぇー、強者か。やはり僕にもウィルソン家の血が混じっていらしく強者という単語にはそそられる。

一度ぐらい手合わせをしてみたいな。

それに、ご飯が美味しいのは朗報だね。やっぱ美味いものを食べたいし。


周りを見渡しすぎると田舎者だと思われるので抑えているが、絶対後で探検しよ。

ハルとは王都へ入る検問で別れたからもういないし、僕達は父が用意してくれた家へと向かう。


「これが私たちの暮らす家です。敷地はそれなりにあり、気の訓練をできるように特殊な魔具にては補強してあります。」


うん、わからん。魔具には魔力が使われており、使用すると少しだが魔力の乱れが起こるはずなのにそれを一切感じない。どんだけすごいものなのかこれだけでも十分だった。


「ナル様、引越しは私がやっておきますので街を見てきてはいかがでしょうか。銀貨10枚あればなんでも買えるでしょう」

「ありがと!でも僕のことはナルって呼ぶんじゃないの?」

「あー、そうでした。ではナル。いってらっしゃいませ」

「行ってきます」


と言い、僕は家を出た。

だってめちゃめちゃ興味があるんだもん、仕方がないよね。誰に言い訳しているのかは聞かないで欲しい。

まー、そういうわけで僕は街の散策を楽しもう!


まず第一に行きたい場所は魔道具屋さんだ。

僕って気を重点的に鍛えて、魔法に関してはまだ素人に近い。もっといえば、魔道具は本当につい最近使い始めたばかりで自分の魔道具すら持っていない。だから、いちばん興味があるのだ。もちろん、剣も見たいけど王都はロングソードが主流らしいので多分刀は置いていないだろう。


魔道具屋さんにはいると、魔力がよじれまくっていてとても気持ち悪い。同じスペースにこんなに混在しているとこうなるのだと逆に感心する。

魔法使いらしき格好をした人は皆顔色が優れていないため多分魔法を使える人は同じ感覚なのだろう。

逆に戦士系の人は平気そうでなんか羨ましい。


「ぼうや、あんた感じるタイプだね。どんな魔道具が欲しいんだい」


魔力のよじれに気を取られ、反応が遅れる。

顔を上げるといかにも魔女と言った見た目をしたおばあさんがこちらを見ていた。


「欲しいものはないけど、銀貨5枚ぐらいの魔道具はどんなものがあるの?」

「銀貨5枚ね。じゃー、これなんてどうだい。これはね、貯金の指輪って言ってお金を入れることで運をあげることの出来る魔道具さ。まー、これを銀貨4枚で売ってあげるから1枚貯金しときな」


そういい、おばあさんは僕に指輪を差し出す。

無骨な指輪は明らかに僕の指には大きすぎる。

でも、せっかく勧められたからと思い指輪をしてみる。

すると、指の大きさに合わせて小さくなったのだ。


「自動調整は魔道具の特権だからね。それでどうするんだい?」

「あー、じゃ!買おっかな」


そういい銀貨4枚を手渡す。


「毎度あり。また来な」


おばあさんは優しい口調でお金を受け取り、僕が店を出ていくのを見ていた。

店を出た僕は早速貯金の指輪に銀貨1枚を入れる。

すると、銀貨がどこかに消えた。

効果が出るのかは分からないが、とりあえず魔道具ではあったようだ。なぜなら、お金を入れた途端指輪の総魔力量が若干ながら高まったと感じるからだ。

どんな効果があるのか気になるが今は検証する機会がないのでここで終わりにしておこう。 


魔道具を買い満足したせいかおなかがすいてきた。

そう考えると王都はすごいいい匂いであふれかえっている。屋台が多いからなのだろうが、それでも異常なほどいい匂いがするな。ちょっと探してみるか。


クンクン


ん、見つけた。魔流により鼻を強化し匂いの根源を探す。うーん、この匂いは懐かしいと感じ匂いの先へと向かう。すると、一つの行列のできたお店を見つける。看板には「カレーの望み」と書かれている。やっぱりカレーだった。ナルは納得し、その列の最後尾に並ぶ。けど、気になることがある為とりあえず前の人に話しかけよう。


「ねー、おじさん。ここっていくらで食べれるの」

「なんだ、坊主。お前ここ初めてか。そうだな、ノーマルなら銅貨5枚、スペシャルなら銀貨1枚だな。」


銀貨一枚か。あらかじめ貴族は金銭感覚がおかしいのは自覚していたため、来る途中で勉強していたのだがそれによると一家庭が一日暮らすためには銅貨5枚らしい。となると、ここは高い部類に入るだろう。それでもこの行列ってすごくないか。


「ここは転移者と言われる異世界人が造った店なんだと。カレーもその世界で人気らしい。俺たちにとっては高価で贅沢品だが、向こうの世界だと家庭料理と仲間が言ってたな。うらやましい」


前にいるおじさんは僕に対して雑談をいっぱいしてくれる。多分いい人なんだろう。けど、異世界の料理だったのか。僕は父の家に行くとたまに食べていたけど、異世界人に教えてもらったのかな。


「そー言えば、ここであったのも何かの縁だ。自己紹介ぐらいしておこう。俺はAランクパーティー「白銀のオオカミ」のバリーだ。なんかあったら依頼してくれよ」


そういい、順番になった為中に入っていった。

カレーはめちゃめちゃおいしかった。それはもうおいしかった。父の家で食べたものより遙かにおいしかった。また食べに行こう。


家に帰ろうとすると人がいっぱいいるところを見つけた。


「本日は良い商品が集まっております。獣人から人間、そしてエルフまで多種多様の奴隷を是非ご覧ください」


奴隷か。僕は正直奴隷というものに興味が無い。なんでも言うことを聞いてくれる人らしいが、正直ヒイラギが十分やってくれるし、今欲しいのは意見を言い合える人間だ。

だから、ここにはいても意味ないなと思ったのだが獣人の子と目が合った。


「坊ちゃん、この獣人が気に行ったのかい。こいつ売れ残りでな、金貨10枚で売ってるんだが買うか?」


いつの間にか獣人に引かれ最前列へ来ていた僕に商人は話しかけてくる。なんというか、美しい。いや、かわいい。

正直こんな感情初めてでよくわからないが、僕はこの子が欲しい。直感でそう思ってしまったのだ。


「買いたいけど、今手持ちがないんだ。今日中に買いに行くから誰も買わないようにしてくれない?」

「いやー、坊ちゃん。それはできないなー。こっちも商売だから早い者勝ちなんだよ」

「じゃー、わかった。金貨2枚余分に値段払うから」

「うーん、いいぜ。じゃー、夕暮れ時までここにいてやるから早く来いよ」


約束をし、僕は慌てて家に帰った。


「ただいま」

「おかえりなさいませ、楽しかったですか」

「うん、これ買えたしカレーも食べてきたよ」

「ほう、ナル。この指輪少し見してください。ふむふむ。素晴らしい魔道具ですな。術式が見事すぎますね。こんな物めったに手に入りませんから大切にしてくださいね」


へー、そうなんだ。大切にしよう。

そんなことより、奴隷の相談が先なんだ。


「でね、ヒイラギ。今日奴隷見たんだけど、買いたい人がいるんだ。金貨12枚なんだけど、買っていい??」

「ほう、奴隷ですか。まー、旦那様も1人王都で買っておいた方がいいと言ってましたし。でも、金貨12枚は高いですね。あ、それでは少しこの屋敷を纏っている魔道具の耐久テストがてら奴隷をかけて勝負しましょうか」

「やろう」


結果、ヒイラギにボコられました。

最初は良かった。魔流により足を強化して蹴りを入れる。

斬撃をフェイクにしていたため完璧に決まってたし、それなりに手応えがあったのだがヒイラギはなんの表情も変えなかった。


そのあとはもう、剣術での勝負。

時よりフェイクを混ぜながら、魔法と剣を上手く使って戦っていたつもりだがヒイラギは素手で全て防ぐ。

そのまま終わるのも癪なので、ファイヤボール爆を使い至近距離で大ダメージを狙った。もちろん、自分もダメージを食らうがこれぐらいなんてことない。


そう、なんてことないのだ。よくよく考えたら僕がなんともないのならばヒイラギなんて無傷でしかないのだ。

思い浮かばなかった僕の負けである。

ヒイラギは爆発で巻き上がった砂埃のなか魔法を発動させる。


「ライトニング」


すると、魔力探知の中にいたヒイラギが一瞬にして消えた。いや、消えてはいない。魔力が負えなくなった。残滓は探知できるがヒイラギ本体が一切探知できないのだ。


「勇者の施し」


ヒイラギがそういうと、周りに多数の魔力反応。

それが全部僕に向かって飛んでくる。

その瞬間僕は負けを悟り、降参と言う。すると、あと数センチのところで魔力の塊が止まり、進行方向を真逆にして散っていく。そして今に至ります。


「ふむふむ。勇者の施しでは壊れませんか。なるほど、カレン様が作っただけある素晴らしい結界だ。外からもこの光景は見えてないと。完璧ですね」


そういえば、耐久テストも兼ねてたんだった。

戦闘に夢中で忘れてたな。けど、悔しい。これで彼女が買えなくなってしまった。


「戦闘の反省は後にして、ナル金貨12枚です。はやくその奴隷を買ってきてください」

「でも勝ってない…」

「条件は勝つこととは言ってませんよね?さぁ、早く行ってください。もうすぐ夕暮れ時ですよ」

「ありがとう、買ってくるよ!!」


ヒイラギに感謝を伝え、僕は奴隷商人の所へ急いで向かった。

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異世界転生なんて必要ない 空飛ぶブタ @sorawotobubuta1985

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