第13話 ウィルソン騎士団
「おっ、坊ちゃん、ヒイラギさん」
僕たちが騎士団訓練場へ行くとたくさんの人が素振りをしていた。
手にはロングソードを持っておりそれを振り回している。
「全員止め。坊ちゃんたちが来た。整列!!」
するとさっきまで素振りしていた人達がほとんど同時に動きを止めてこちらへ走ってくる。
そして綺麗に整列し、
「「「お願いします!!」」」
と息を揃えて挨拶をしてきた。
「坊ちゃん、では早速訓練をしましょう。内容なんですが勝ち残り戦をやろうと思っています。どうでしょうかヒイラギさん」
「今回は私たちがお邪魔する側ですのでレックが決めたもので結構」
そう言うと安心したように頭を下げるレック。
そして一息ついてから言葉を続けた。
「それでー、ヒイラギさんにもそれに参加していただきたいのですが…」
オドオドとした様子でヒイラギの顔をみるレック。
それを見てヒイラギは少し笑いながら言葉を返す
「ですから私たちがおじゃまする身。指示には従いますよ」
「ありがとうございます!!」
今日一大きな声で感謝を述べるレック。
そして周りもザワザワしている。
あれ?もしかしてヒイラギってすごい人なの??
なんか周りの反応が凄いのでそう考えてしまう。
確かに強いし、隙ないし、何より男前だけど。
「ねぇ、ヒイラギ」
「なんでしょうか。ナル様」
「ヒイラギってすごい人なの??」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。
ただ昔少しだけ世直しの旅をしていたぐらいです」
へぇー、そうなんだ。
旅か、僕もしてみたいなー。
大きくなったら旅に出るのもいいかもしれない。
そんなことを考えているといつの間にかザワザワがなくなっている。
「では始めさせていただきます!!
我々騎士団には序列があり、この勝ち残り戦は序列下位のものから順に戦っていき新たな序列を作る訓練であります!!
下位のものが勝てばひとつ上に、上位のものが負ければ一つ下に。
戦闘は連続で行われ下位にいればいるほど上位に行きにくい仕組みです。
本日は坊ちゃんには最下位からのスタート。
ヒイラギさんには中位からのスタートとさせて頂きます。我々騎士団は86名、それにお二人を足して88名です!!それでは坊ちゃんとリビア戦闘用意をお願いします」
なるほど、要するにだ。
下位のものが上位に上がるためには上位と同レベルになるだけじゃなくて追い越さないと上位になれない仕組みらしい。
けど少しづつ上がってくことも出来るのか。
よく分からないや。
「レック。その間戦闘しない者は何を?」
「訓練するも良し。試合を見学するも良し。休憩するも良し。つまり自由です」
「なるほど」
何がなるほどなのかは分からないが納得した様子のヒイラギ。
っておっと。そんなこと考えている余裕は僕にはない。何せ今から僕の出番なんだから。
戦闘には木刀を使うらしい。
ここのやつを借りればいいのだろうか。
でも…
「ねぇ、レック。刀はないの?」
置いてある木刀は両刃である。
つまりロングソードだった。
僕も父に少し習って使えるけどやっぱ刀の方が好きだ。あるならそっちがいい。
「あー、少しお待ちください」
そう言って走ってどっかへ行く。
そして数秒すれば刀の形をした木刀をもって帰ってくる。
「どうぞ」
「ありがと」
よし、準備万端。
それでは始めようか!!
一試合目。
対リビア戦。なんでも今年入った新人騎士の女性らしい。
「ナル様。よろしくお願いします!!」
「よろしく」
「リビア!ナル様に負けるなよー」
「相手は子供だ。手加減してやれー」
周りに見ている騎士たちが野次をとばす。
うん、少しだけイラッて来る。
これでも十歳だ。確かに体は小さいし、騎士団にとっては子供って年齢かもしれない。
だが、剣術だけで言ったら流石に新人騎士に負ける訳にはいかない。
「よーいはじめ!!」
レックの声と共に僕は足に力を込める。
それと同時に一昨日習った魔闘を発動する。
ん。
タイミング完璧。
そのまま最短で敵へ向かう。
だがその目の前の敵は何もしてこない。
舐めてやがるのか。
風よ来い。
だがスピードを上げても相手はピクリとも動かない。
ちっ。もう剣先が触れるというのに躱そうともしてこないなんて屈辱的だ。
俺を舐めんじゃねぇ。
「そこまで」
あと数ミリでリビアの体に俺の刀先が当たるというところで木刀がピクリとも動かなくなる。
どんなに力を込めても動かない。
「すげぇな。この力。流石ジョージ様の息子ってことか」
そういいながら木刀から手を離すレック。
どうやらレックに止められたらしい。
となると勝敗はどうなるのか。
「坊ちゃんの勝ちだな。リビアそれでいいよな?」
「えっ?な、なんでですか??」
納得してないように見える。
勿論、俺も納得してない。
躱してすら貰えないなんて。
「いいかリビア。問題だ。何故坊ちゃんが今お前の目の前にいるのでしょーか」
「え?副団長が連れてきたからでしょうか?」
「ぶっぶー。正解は高速でここまで坊ちゃんが移動してきたからでした。お前はそれが見えてなかった。その意味がわかるか?」
「……。はい。分かります」
ん??
見えてなかった??
あのスピードが??
じゃー、止めてくれなければ僕はリビアを。
「ごめんリビア。まさか見えてないとは思わなくて!!」
まず、すべきことは謝ることだ。
何よりもそれが大切。
勘違いとはいえ無抵抗な相手に本気で倒しにいったのだから。
「あ、お顔をお上げくださいナル様。私が未熟だっただけなので…」
リビアはそう言って笑って許してくれる。
なんて優しい子なんだ。
こうして初戦突破したのだった。
「ナル様。ここから二十戦は本気を出してはいけません。それと常に魔闘を使用すること。いいですね?」
いつの間にか横にいたヒイラギが僕にそう忠告する。
いつの間にとも思ったがいつもの事なのでスルーしといてなんで本気を出してはいけないのだろうか。
「なんで?」
「ナル様。恐らく下位騎士と呼ばれるあそこのもの達は相手になりません。
それにナル様の強さを認識すらできていない様子。
そのもの達に本気を出せば先程みたいに殺しかけることでしょう」
なるほど。
自分の見立てより自分が強かったということか。
確かに対人戦は経験が少ない。
誰が強くて誰が弱いかもよく分からない。
ならヒイラギの言葉を信じるべきだと思う。
「わかった。で魔闘を常に使用するのは?」
「修行です。維持した状態を常に。それと出来れば闘いの中で剣にまで魔闘を纏わせて見てください」
「よくわかんないけどわかった。やってみるよ」
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