第12話 魔法を使おう

「それではナル様。今日も始めましょうか」


「よろしく、ヒイラギ」


僕が成人してから変わったことは大きく三つある。


一つ目、勉強をする時間が増えた。

なんでも、魔法学校と騎士育成学校を両立させるためには騎士育成学校で習う座学の範囲をある程度やっておく必要があるらしく、かなりの時間勉強している気がする。


二つ目、気を使用しながらの模擬戦が始まった。

この前は使うなと言われた気だったが、なんでも王都へ行くのが遅くなったため修行を始まるそうだ。


とはいえこれまで禁止されていたがようやくスタート。

けどやっぱり難しい…

ハヤト兄とこれまで互角だったのに気を使用しながらやると完敗する。

体力も一瞬で減るし、目で追うことすら難しい時がある。

まだまだ訓練が必要だと感じた。


そして最後が魔法の訓練だ。

魔法学校に入学するにはある程度基礎ができてないとダメらしく、ヒイラギが教えてくれている。

そして今日は三日目。

ここに来てショックな事実が判明した。


「ナル様は魔力操作が苦手なのですね」


そう、魔力操作が上手くできない。

今魔闘気という身体強化を練習しているのだがそれが上手くできない。

なんでも魔力量が多いと魔力操作が苦手な人が多くなるらしく正に僕はその典型的な例と言うことらしい。


うん、辛い。

けど楽しい。これができるようになれば僕はまた強くなれると思うと楽しい。

それに魔力量は後天的には伸びにくいが魔力操作は努力で何とかなる。

そう考えれば魔力操作が苦手なことなど魔力が無いより全然いいと思える。


三日目の日が落ち始めたころ。


「お、おぉー。で、出来っ。うわっ」


「おめでとうございます。ナル様」


魔闘に成功した喜びで気が緩み少ししかできなかったがそれでも成功だ。ようやく成功した。


「ようやくスタートラインに立てましたね。でも本日はここまでということで明日から魔法の修行に入ります」


……。

え、さっきのまほうじゃなかったの??


「さっきの魔法じゃなかったの??」


「もちろん。基礎中の基礎です、誰でも出来るレベルですね。冒険者とかが好んで使う魔法でもあります。覚えておいて損はありませんよ」


「わかった。じゃー、明日も頼む」


切り替えて頑張るしかないので思考を切り替えよう。

うん、頑張る。頑張るぞー!!

えいっえいっおーー。


魔法の練習が始まり五日目。

ようやく魔闘を維持することができるようになってきた。


そして今日から遂に魔法の練習である。

もう楽しみで仕方がない。

だけどなかなかヒイラギが来ず僕は一人中庭で待っている。


「あれ?ナルの坊ちゃん。ここで何してるんですか」


「あー、ヒイラギ待ってるところ」


ウィルソン家騎士団副団長であるレックが話しかけてくる。

団長は父なので実質の騎士団トップらしい。


「あー、ヒイラギさんならさっき団長と話してましたよ。もうすぐ来るんじゃないでしょうかね。あっほら来ましたよ」


振り返るとヒイラギが歩いてくる。

だがあれは歩いているって言えるのだろうか。

歩いてはいる。

けど速度がおかしい。

って考えてる間にもう目の前にいるし。


「お待たせしました、ナル様。お、レックもお久しぶりです」

「いやー、ヒイラギさん。久しぶりっす。

じゃ、私は失礼します」


そう言って頭をぺこりと下げながらレックは去って行こうとする。けれどそれをヒイラギが呼び止めた。


「待ってくださいレック。騎士団の皆様は本日はまだ訓練があるのですか?」

「はぁ、ありますが…」

「では、ナル様もその訓練に参加しますのでよろしくお願いします」


??

あれ?ヒイラギがおかしなことを言っている。

今日は魔法の練習するんじゃなかったっけ?


「ヒイラギ。魔法は?」

「もちろん、魔法の練習ですよ」


「別にいいですけど。坊ちゃんが怪我しちまったら」

「大丈夫ですよ。ジョージ様からの許可は下りておりますので」

「なら、大丈夫です!」


そのあとはトントン拍子に時間などが決まっていきレックはまた後でと言いながら去っていった。


「よし、ではナル様。魔法の練習をしましょうか」

「え?騎士団との訓練二時間後って言ってなかった?」

「はい、言いましたよ?だから二時間で覚えれる魔法を使えるようにしましょう!」


あー、ヒイラギ。

それは無理難題だよ。

魔闘だけで五日かかったんだよ。

そんな奴にたった二時間で魔法ができるわけ…



ーーーー二時間後ーーーー




「おめでとうございます。それがファイヤーボールです」


あ、出来ました。

なんかあっさり出来ました。


「おぉー、でこれをどうすれば?」

「思いっきり投げます」

「投げる??」


言われたまま投げてみた。

するとふつーにボールを投げたみたいに飛んでいき、どっかで消える。


「はい、これがファイヤーボールです。ってことで騎士団の方々を待たせるのもあれですし早く行きましょうか。

あ、そういえば今回の訓練は気を禁止で魔力のみで頑張ってください」


………。

ヒイラギ、もっと早く言ってくれよ。

心の準備とかあるじゃんね。

って文句言っても仕方が無いので頑張るか。

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